重要判例【横浜地判平成26年8月28日】約8年前及び4年前の別件事故による後遺障害残存を否認、横転・1回転等から自賠責非該当も神経症状の14級後遺障害認定

1 別件事故1ないし2による後遺障害の残存の有無

原告は、別件事故1によって腰痛等の後遺障害が、別件事故2によって頸椎捻挫後の右上肢しびれの後遺障害が残存したことが認められるものの、いずれの後遺障害も「局部に神経症状を残すもの」として、後遺障害等級表の第14級第9号に該当する程度にとどまること、本件事故は、別件事故1による後遺障害の症状固定日から約7年、別件事故2による後遺障害の症状固定日から約2年10ヶ月経過した後に発生したものであることを認めることができる。

このような別件事故1ないし別件事故2による後遺障害の程度や本件事故までの間に相当期間が経過していることに加えて、原告は、平成24年7月に富士山に登頂した他、同年11月に野球の試合に4番1塁手として出場するなどしており、本件事故当時、積極的にスポーツをしていたこと、原告は、本件事故当時、腰痛や右上肢しびれの症状等のための通院等しておらず、別件事故1ないし別件事故2による後遺障害が残存していたことをうかがわせる証拠も見当たらないことを併せて考えれば、原告の別件事故1ないし別件事故2による後遺障害は、本件事故当時、残存していたと認めることはできない(なお、このように解することは、一般に、後遺障害等級表の第14級第9号の神経症状についての後遺障害に係る労働能力喪失期間が3から5年程度に制限されていることとも整合的である。)。

2 本件事故による原告の後遺障害の有無と程度について

➀本件事故は、被告車の原告車への衝突によって、原告車が横転し、1回転し大破、全損となった態様であること、

➁原告は、本件事故によって、頸椎捻挫、頸部神経根症、腰椎捻挫、右坐骨神経痛及び右第8、9肋骨骨折の傷害を負ったと診断され、右上肢痛・しびれ及び腰部痛等の後遺障害が残存したと診断されていること、

➂自賠責保険の後遺障害等級認定手続において、本件事故による頸部受傷後の右上肢痛・しびれ及び腰部痛の症状については、後遺障害等級表の第14級第9号に該当する後遺障害が残存していることを否定されていないことを認めることができる。

これらの事実に加えて、原告の治療状況や症状の経過を併せて考えれば、原告には、頸部受傷後の右上肢痛・しびれ及び腰部痛の症状について後遺障害が残存しており、これは「局部に神経症状を残すもの」として後遺障害等級表の第14級第9号に相当するというべきである。