重要判例【東京地裁平成26年11月20日】事故後約2週間経過時の歯部の亜脱臼等の訴えにつき後遺障害との因果関係否定
1 原告(男・44歳・カメラマン)は、第2事故の際、口にしていたペットボトルの飲み口が歯に当たり、下の前歯の一部が折れ、前歯が大きく動揺するようになるなど、前歯部に亜脱臼、歯冠破折の傷害を負ったと主張し、これに沿う供述をする。
しかし、原告は、歯の負傷についてA病院では申告せず、約2週間経過後の平成22年8月12日に至り、B歯科で初めて申告していること、同日、原告には歯周病及びう蝕が認められ、歯周病のために亜脱臼しやすい状態にあったことに照らすと、第2事故により、前歯部に亜脱臼、歯冠破折の傷害を負ったと認定するのは困難である。
なお、同医院の医師の診断書には、外傷を受けなければ、原告の来院時のような亜脱臼状態の動揺を示すことはないと考えられると記載されているが、同記載は、同医院の診療録の記載内容及び治療経過と必ずしも合致していないから容易に採用できない上、原告がB歯科を訪問したのは、第2事故の約2週間後であることに照らすと、上記診断書を採用したとしても第2事故により亜脱臼が生じたと認定するに足りない。
2 原告は、B歯科での治療により合計8歯の歯科補綴を受け、これは自賠責保険の後遺障害等級12級第3号に該当すると主張する。
しかし、前記の認定・判断のとおり、原告が、第2事故によって前歯部に亜脱臼、歯冠被折の傷害を負ったとは認められない以上、原告の主張は採用できない。
以上によれば、原告には後遺症による逸失利益が生じたとはいえないし、また後遺症に関して慰謝されるべき精神的苦痛も認められない。