重要判例【東京地判平成26年12月1日】第1事故(14級9号)の4か月後の第2事故の後遺障害を否認し、第2事故の3か月後の第3事故の14級9号を認め逸失利益否認
1 逸失利益について
第3事故(平成22年3月5日)当時、原告は、第1事故による受傷を理由に通院を継続しており、A医師が同傷害の症状が固定したと診断した約1ヶ月後に第3事故による傷害の症状が固定している。
そこで、第3事故の後遺障害により労働能力を喪失したと認められるかを検討すると、証拠によれば、①原告は平成21年6月からH株式会社で、週4日、1日2時間のレジ打ち業務を行っていたこと、②1年間の給与収入は、平成21年が79万9273円、平成22年が56万3710円、平成23年が57万7128円であって、平成22年から平成23年にかけて減収はないこと、③原告は、D整形外科の治療中、A医師に対し、第3事故前の平成22年2月15日に、腰痛について、レジのバイト中、1時間半で痛くなってくると訴え、第3事故の後遺障害の症状固定後である平成23年1月17日には、仕事は、特に腰の痛みで減らしていると述べていることが認められる。
これらの事実によれば、第3事故による受傷のために原告に右前腕から手掌の疼痛や右手しびれが残っているとは窺えるものの、第1事故による労働能力喪失とは別に労働能力に影響を及ぼす程度のものであるとは認められない。
したがって、第3事故の後遺障害によって新たな逸失利益が生じたとは認められない。
2 通院慰謝料について
原告は、第3事故後、約9ヶ月通院しているところ、傷害の内容及び治療効果に照らし、110万円とするのが相当と認める。
なお、上記は第3事故によって右前腕挫傷、右正中神経障害を受傷したことによる精神的苦痛に対する慰謝料でもあるところ、傷害の内容が第1及び第2事故による受傷とは異なるから、第1及び第2事故の通院慰謝料によって評価されているということはできない。
しかし、原告は、傷病毎に異なる病院に通院しているところ、診療科は同じ整形外科であり、治療の必要上異なる病院への通院が必要であったとは認められず、同一の機会に診療できなかった医学的理由は見当たらない。
第3事故による通院期間は第2事故による傷害の治療頻度に照らせば、通院の必要性自体が第3事故によって生じたのではないことを考慮して算定した。