重要判例【東京地判平成26年11月26日】居眠り、速度超過の被告車に衝突され死亡した50歳女子の慰謝料を遺族分含み3240万円認定

1 逸失利益について

(1)本件事故から67歳まで

Xは小学校教員であり、本件事故前年の年収が751万9147円であることは当事者間に争いがない。

そして、Xの定年が60歳であることは当事者間に争いがないところ、被告らは、Xの基礎収入について、定年後から65歳までは平成22年賃金センサス男女計学歴計61歳~64歳の平均賃金である383万3600円、65歳から平均余命までは共済年金及び老齢基礎年金の合計額である244万0400円と主張するが、Xは、大学を卒業してから本件事故に至るまで27年間にわたって小学校の教員として教職に携わり、職場の同僚の間でも高い信頼を得ていたことが認められるのであり、Xの職業の性質やこれまでの勤務実績等を考慮すれば、就労可能年齢である67歳までは、上記基礎収入と同程度の収入を得られた蓋然性を認めるのが相当である。

また、被告らは、就労分の逸失利益を算定するに当たっての生活費控除率を40%と主張するが、Xは、小学校教員として稼働するとともに、本件事故当時、夫であり小学校教員の原告B、両親であり家業の農業に従事している原告C、Dであり予備校生の原告Eの6人で生活し、主婦として家庭生活を支えていたことが認められるから、生活費控除率を30%とするのが相当である。

(2)68歳から86歳まで

Xが共済年金及び老齢基礎年金として年額合計244万0400円を受給することができたこと、Xの平均余命が36年(86歳まで)であることは、当事者間に争いがない。

そして、共済年金及び老齢基礎年金の性質上、生活費控除率は50%とするのが相当であるから、Xの67歳から86歳までの19年間の逸失利益は、643万3870円となる。

2 慰謝料について

被告Aは、本件事故に至るまで、眠気を自覚し、休憩する機会があったにもかかわらず、眠気に対して適切に対処することなく居眠り運転に陥り、路側帯の内側を歩行中のXに加害車両を衝突させて本件事故を発生させたのであるから、本件事故における被告Aの過失は重大であり、事故態様は悪質というべきである。

さらに、本件事故の態様、Xの受傷の部位・程度からすれば、Xの被った苦痛は計り知れないものがあるし、幸せで充実した日常生活を本件事故によって奪われたXの無念は察するに余りあるものがある。

また、原告らが、本件事故後の経緯によって、峻烈な被害感情を更に深めて現在に至ったことは、不幸なことというほかないが、原告らは、被告Aの一方的な過失によって、Xとのかけがえのない日常を突然奪われたのであるから、原告らが峻烈な被害感情を抱くこと自体は当然のことといえる。

以上の本件事故に至る経緯や本件事故の態様、原告らの被害感情に加え、Xの生活状況、家族構成等、本件に顕れた一切の事情を考慮すれば、Xの死亡慰謝料を2400万円、原告B固有の慰謝料を240万円、その余の原告ら固有の慰謝料を各120万円(Xの死亡慰謝料と遺族ら固有の慰謝料の合計額は3240万円)と認めるのが相当である。