重要判例【東京地判平成25年12月25日】症状固定日、消滅時効の起算日
1 症状固定日について
原告の治療経過をみると、原告は、平成20年9月から平成21年2月までは、頚部や肩の張り、こわばり、圧痛等を訴え、その症状に特段の変化はなかったが、同年3月になると、「大変楽になった」と述べ、同月31日にはやや改善と判断されることとなっているのであり、同年5月18日には、「大分良くなった。」と述べ、ジャクソンテスト等でも一定の改善がみられている。そして、原告に対する投薬も、同年3月17日の処方の後、中断されることとなり、その後は、断続的に原告の個別の愁訴に対して薬が処方されるという程度にとどまっているというのである。
このような原告の治療経過と症状の推移に照らすと、原告の疼痛は、残存しているものの、同年5月31日の時点では、投薬を必要としないという期間が既に約2か月に及んでいるのであるから、C整形外科の担当医による回答の如何にかかわらず、就労をする上で特段の支障がない状況に至ったものと判断するのが相当であり、また、その後の治療内容に照らしても、同日の時点においては、治療により、時の経過に伴う症状の改善を越えるような改善効果を期待することができるという状況にあったとすることはできないものといわざるを得ないから、症状固定に至ったものと判断するのが相当である。
2 消滅時効の起算日について
C整形外科の担当医は、平成23年3月22日、原告の症状が症状固定に至っていると判断し、その旨を原告に説明したが、原告から納得が得られなかったため、同日後も診療を継続することとなった。
原告の受傷に対する治療の経過は、前記のとおりであり、原告は、C整形外科において通院治療を受け続けており、その間、平成23年3月22日に至るまで、担当医から症状固定の状況にあるとか、治療を続けても改善の見込みがないなどという説明を受けたとの事実を認めることもできない。
そうすると、原告の被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権(人身損害部分)の消滅時効は、症状固定時期に係る前記認定の如何にかかわらず、早くとも同日から進行を開始するとするのが相当である。
したがって、本件訴えの提起の日(平成24年11月22日)までに未だ消滅時効の期間は経過していないから、被告の消滅時効の主張は理由がない。