重要判例【札幌高判平成26年8月22日】追突された38歳男子の海外ボランティア選考不合格との因果関係認定も、逸失利益否定、傷害慰謝料70万円認定
1 控訴人は、Aボランティア2次選考において、技術審査の結果及び語学試験の結果が合格水準に達していたと認められる。
さらに、控訴人は、他の応募者との競争の結果や要請内容との適合性を総合判断した結果においても、合格水準に達していたと認められる。
したがって、本件事故によって控訴人が頸椎捻挫となり、当時通院治療を継続していたことが、本件2次選考不合格の唯一の理由であるということができ、本件事故による控訴人の受傷と本件2次選考不合格との間に相当因果関係が認められる。(以上、原審判断)
本件事故による受傷がなければ、控訴人は2年間にわたりAボランティアとしてB国に派遣されたと推認される。
2 そして、この場合、控訴人は、それまで従事していたアルバイトを辞める予定であったことから、派遣前訓練期間及び派遣期間を通じて合計249万2800円(=5万円×2ヶ月+9万9700円×24ヶ月)の国内積立金が支給されたと推認される。
しかしながら、国内積立金は、無給休職又は無職の状態で、Aボランティアとして派遣される場合に、帰国後の生活基盤の再構築等に役立てるために支給される金員であるから、派遣期間中の給与ないしこれに準じる給付金とみることはできず、国内積立金相当額が休業損害に当たるということはできない。
そして、国内積立金が海外赴任に対応した手当ないし慰労金としての性質を包含するものであるとしても、控訴人は、予定されていた海外派遣期間中に日本国内で就労して給与収入を得ていたのであるから、控訴人が現に得た給与収入は国内積立金相当額から控除するのが相当であるところ、控訴人は、平成22年10月及び11月に14万5833円、同年12月から平成24年6月までに185万3920円、同年7月から11月までに65万2290円の給与収入を得ていたのであって、支給の見込まれた国内積立金を上回る給与収入を得ていたのであるから、休業損害は生じなかったというべきである。
・・・したがって、控訴人がAボランティアとして派遣された場合に得たであろう国内積立金相当額を、休業損害ないし逸失利益として被控訴人に請求できる旨の控訴人の主張は理由がない。