重要判例【岡山地判平成23年9月12日】通院付添費、後遺障害逸失利益(併合12級)
1 通院付添費について
原告(男・症状固定時59歳・学校法人の副校長)は、光生病院退院後平成19年2月までの間は、松葉杖を使用して歩行することは可能であるが自動車の運転は困難であったことが認められ、このような原告の症状の内容・程度に照らせば、同月までの通院につき、通院付添の必要性を認めるのが相当である。
2 後遺障害逸失利益について
原告の後遺障害は、後遺障害等級表併合第12級に該当するものにとどまるところ、本件口頭弁論終結時において定年までの期間は約9か月にすぎないことを総合すると、原告については現在はもとより定年に達する63歳までの将来についても収入の減少が生ずることはないものと認められるが、他方で、原告は後遺障害による両眼、鼻部、両頬部及び上口唇を含む領域の疼痛及びしびれ等及び両手(尺側)のしびれ等に耐えながらパソコンを使用した資料の作成や長時間の会議への参加のほか自動車の運転等を行っているのであって、これによれば、事故の前後を通じて収入に変更がないことが原告において労働能力低下による収入の減少を回復すべく特別の努力をしていることに基づくものであってかかる努力がなければ収入の減少を来しているものと認めるのが相当であるから、後遺障害逸失利益の発生を完全に否定するのも相当ではなく、原告が定年に達する63歳までの間については、本件事故年である平成18年の給与収入額1082万515円を基礎収入として、5%の労働能力喪失割合に相当する後遺障害逸失利益の発生を認めるのが相当である。
他方で、定年に達する63歳以降については、原告はその後遺障害により学校法人Aにおける再任用や再就職に際して不利益な取扱いをうけるおそれがあるものと認められるから、基礎収入を賃金センサス平成20年・産業計・企業規模計・学歴計・男子労働者・60歳から64歳までの平均年収額435万3400円とした上で、後遺障害等級表併合第12号に該当する後遺障害があることに照らし14%の労働能力喪失割合に相当する後遺障害逸失利益の発生を認めるのが相当である。