重要判例【大阪地判平成27年2月23日】約1年3ヶ月半の間に3回の交通事故被害を受けた48歳男子の損害は寄与度に応じて割合的に認定
1 共同不法行為の成否について
原告は、被告らについて、民法719条の共同不法行為が成立する旨主張する。
しかしながら、共同不法行為が成立するためには、複数の加害行為が時間的、場所的に近接する等、客観的に1個の加害行為であると認められることを要するというべきである。
本件各事故は、いずれも異なる場所で発生しており、また、第1事故から第2事故までは1年以上、第2事故から第3事故までは2ヶ月以上の時間的間隔があるのであって、本件各事故は、時間的、場所的に近接しているとはいえず、客観的に1個の加害行為であると評価することはできない。
したがって、原告の上記主張を採用することはできず、原告の損害のうち、複数の事故が寄与している部分については、寄与度に応じて割合的に各事故に振り分けて算定するのが相当である。
2 後遺障害逸失利益について
前記各事故と相当因果関係のある後遺障害の内容に加えて、第1事故と相当因果関係がある後遺障害は項部痛だけであるところ、第2事故と相当因果関係があるのは項部痛、腰痛及び右肩痛であり、第3事故と相当因果関係があるのは全ての後遺障害であること、第1事故及び第2事故では自動車同士の事故によって車内にいた原告が受傷したものであるところ、第3事故では、車両と原告が衝突した事故によって原告が受傷したものであること、原告が第3事故によって全身の様々な箇所に傷害を負ったこと、その他原告の症状の経過等を考慮すると、後遺障害全体に対する第3事故の寄与は大きく、第1事故の寄与は比較的小さいというべきであるから、第1事故、第2事故及び第3事故の寄与度は、1:3:6の割合とみるのが相当である。
3 消滅時効の成否について
民法723条にいう「損害及び加害者を知ったとき」とは、被害者において、加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状態の下に、それが可能な程度に損害及び加害者を知った時を意味し(最高裁昭和48年11月16日判決)、同条にいう被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解するのが相当である(最高裁平成14年1月29日判決)。
本件では、原告が本件各事故と相当因果関係のある全ての後遺障害について症状固定の診断を受けたのは平成21年7月3日であるから、原告が加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に、それが可能な程度に損害及び加害者を知った時期は、同日であるというべきである(最高裁平成16年12月24日判決)。
そして、原告が本件訴えを提起したのは平成24年5月24日であり、本件訴え提起時において、原告が損害及び加害者を知ったときから3年経過していないので、消滅時効が完成したと認めることはできない。