重要判例【大阪地判平成25年12月13日】キックボクシングトレーナーの休業損害、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料(併合12級)、素因減額

1 休業損害について

原告(男・事故時31歳、症状固定時32歳)は、本件事故当時、キックボクシングトレーナーとしてFジムに勤務して、月額平均45万円の給与を得ていた旨主張する。

しかし、証拠及び弁論の全趣旨によれば、Fジムの生徒数は10~20名程度で月謝は月5000円~1万円程度であったことが認められるのであり、Fジムが原告に月額平均45万円もの給与を支払っていたとは考え難いし、本件証拠上、これを裏付ける客観的な証拠資料もない(給料支払明細書は私文書にすぎず信用性に乏しい。)。したがって、月額平均45万円の給与を得ていた旨の原告の上記主張は、採用できない。

しかし、原告が本件事故以前にキックボクシングトレーナーとしての立場で稼働していたことや、本件事故当時には妻と子(平成21年3月20日生)がいたことが認められること、平成20年10月に靱帯再建術を受けたが、数か月後にはジョギングや軽作業は可とされていた(激しいスパーリング等は無理だとしても、トレーニングの指導や軽いジムワーク等を行うことはできたと考えられる。)こと、生活していくためには少なくとも月20万円程度の収入は必要と考えられることなどに照らせば、本件事故当時もキックボクシングトレーナーとして稼働して月20万円程度の収入を得ていたものと推認するのが相当である。

そして、原告は、本件事故により受傷し、左膝痛等も続いたため、キックボクシングトレーナーとして就労できないまま症状固定を迎えたものと認めるのが相当である。

したがって、原告の休業損害は、420万円(月20万円×症状固定まで21月)と認めるのが相当である。

2 慰謝料について

原告の受傷内容や入通院期間、後遺障害の内容程度、キックボクシングトレーナーに復帰することは困難であること、その他本件に表れた一切の諸事情を勘案すれば、入通院慰謝料は230万円、後遺障害慰謝料は300万円と認めるのが相当である。

3 素因減額について

原告が本件事故で左膝前十字靱帯完全断裂を受傷したことについては、原告の靱帯が未熟であったこと(平成20年10月に左膝前十字靱帯完全断裂に対する靱帯再建術を受けた後、約5か月半後の靱帯の成熟が未熟な時期であったこと)も影響していると認めるのが相当である。

ただし、本件事故がなければ後半年ほどで左膝の靱帯再建も完成して、さしたる後遺障害も残すことなく軽快していた可能性もあること、本件事故の衝撃は相当大きなものであったと推認でき、靱帯が未熟でなくとも相当程度の靱帯損傷を受けた可能性があること、本件事故による受傷内容や後遺障害内容は左膝だけではないことなども考え併せれば、原告の損害全体に対する素因減額の割合は1割に止めるのが相当である。