重要判例【名古屋地判平成26年11月27日】事故後数か月経過後の不定愁訴と症状固定時期、事故後約5か月で14級後遺障害を認定

1 症状固定時期について 

原告については、主としてその治療に当たってきたA医師が、平成22年7月31日をもって症状固定と診断しており、客観的にこれを覆すに足りる事情がない限り、その診断は尊重されるべきと解される。

確かに、原告については本件事故後の平成22年2月及び3月に比較して、それ以降に通院回数が増えたり、症状固定時期に近づくにつれ、他覚所見の認められない不定愁訴が増加したりしている様子があり、外傷性頭痛の診断も同年5月11日になされているが、頭痛の点も含めて、頸部挫傷後にみられる多彩な症状としてあり得るものといえ、本件事故と因果関係がない症状に対する治療とはいえない

また、A医師は、原告の不定愁訴を踏まえてもいたずらに治療を継続するようなことはせず、症状固定診断を行っており、通院時期が頻回になっていることを踏まえても、症状固定の判断としては医学的に相当な判断がなされたものと考えられる。

実際に行われた治療の効果についても、診療録の記録を踏まえると、頸部痛については途中、軽減された様子もみられており、リハビリについて一定程度の効果があったものというべきである。

本件事故態様からも、原告車両の後部バンパーに押し込みが生じる程度の衝撃が加わったものであり、ある程度の治療を要するむち打ち症になること自体は不自然なところではないし、その治療期間も全体としてみると約5ヶ月であって、いわゆるむち打ち症である頸部挫傷等の治療期間として長期化したものとはいえない

したがって、原告の症状固定時期は平成22年7月31日であり、同日までの治療の必要性は認められる。

2 後遺障害について

上記治療経過に照らせば、原告については本件事故後、一貫して頸部痛、肩から背部にかけての痛み等が残存していたと認められ、他覚的所見はないものの、その症状経過にかんがみると後遺障害等級14級9号に該当するとした自賠責保険の事前認定は相当というべきである。