重要判例【仙台地判平成27年1月29日】35歳男子運転手の自賠責非該当の腰痛等を12級認定、腰椎分離すべり症の素因減額30%適用

1 逸失利益について

損害保険料率算出機構D自賠責損害調査事務所は、平成24年8月10日、本件後遺障害につき、自動車損害賠償責任保険の後遺障害認定手続において、客観的な医学的所見に乏しいことなどを理由として、自動車損害賠償保障法施行令別表第二の14級10号を超える等級には該当せず、昭和56年の交通事故により別表第二の14級10号の認定がされていることからすれば、本件事故による受傷が加わったことについて自賠責保険における後遺障害には該当しないと判断した。

また、M労働基準監督署長は、平成23年12月7日、本件後遺障害につき、労働者災害補償保険法施行規則別表第一の12級12号の「局部にがん固な神経症状を残すもの」に該当するものと決定した。

本件後遺障害のうち、右腰痛、右下肢の痛み、右下肢のしびれ、跛行及びこむらがえりについては、原告が、これらの症状により、平成23年頃まで階段を上ることもできない状態であり、平成25年になって事務職の仕事に就いたが、それまでの間は就労できなかったこと、なども併せ考慮すると、それらの程度は相応に強いものであったということができる。

そして、この神経症状を生じさせるものとして、第5腰椎分離すべり症があることが認められる。

これらのことを踏まえると、本件後遺障害による原告の労働能力喪失率は14%、労働能力喪失期間は、症状固定時からの原告の就労可能年数27年の約2分の1に相当する14年間とすることが相当である。

なお、原告は、昭和56年に交通事故により別表第二の14級に該当する後遺障害を負ったことが認められるが、その際の後遺障害の程度が別表第二の14級に該当するものにとどまるものであったこと、本件事故の21年前の事故であること、その後の部活動、自衛隊における活動やトラックドライバーとしての業務において特段の支障は生じていなかったことからすれば、本件事故による逸失利益の算定において昭和56年の交通事故の後遺障害による影響を考慮することは相当ではないと解される。

2 素因減額について

鑑定の結果によれば、原告の症状及び後遺障害に影響した疾患として、第5腰椎分離すべり症及び右股関節骨軟骨腫症があることが認められるところ、症状固定までに最も時間を要し、また、後遺障害として認められる右腰痛、右下肢の痛み、右下肢のしびれ、こむらがえり及び跛行に影響した第5腰椎分離すべり症について、その影響を考慮して損害額を減額することが相当である。

原告は、本件事故前に、第5腰椎分離すべり症に起因する症状を感じたことはなかったものと認められるが、このことほあ、交通事故を契機に症状が出ることが考えられること(鑑定の結果)、上記疾患の存在により原告の症状が強く出現していることが認められることからすれば、素因減額すべきであるとする前記の結論を左右するものではない。

素因減額の割合は、鑑定の結果及び本件後遺障害の状況を踏まえ、30%とすることが相当である。