重要判例【名古屋地判平成26年2月5日】不動産仲介業の休業損害
1 原告は不動産仲介業であり、製造業者のように1日の稼働能力や予定生産量が比較的明確に定まっているのとは異なり、営業活動が売上げに直結しているわけではないし、営業活動の成果が入金となって得られるまでには一定の時間を要するという業務の特性がある。
また、原告は、本件事故の数か月前に営業員を増員したばかりであり、その売上げに対する効果が未だ数値化されていない状況にあった。
そうすると、本件事故による原告の休業損害を算定するには、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるというべきであるから、民事訴訟法248条を適用し、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定せざるを得ないものである。
2 原告は、平成22年6月11日ころには業務を再開しているが、使用できる本件店舗の建物、機器及び設備に相当の制約を受けていたのであるから、本件店舗の修復工事が完了し、ほとんどの機器及び設備が回復された同年8月上旬までは正常な業務が行えたと評価することはできない。
また、不動産仲介業の営業活動の時期と成果が得られる時期には時間差があり、実際にも同年6月分及び7月分の原告の売上げは従前に比べ明らかに減少しているとは言いがたい状況にある。
したがって、休業損害を算定するに際し、休業期間を同年6月8日から同年9月30日までとすることには相応の合理性が認められる。
3 原告の売上総利益は、第10期が2842万9043円、第11期が2126万8163円であり、延べ営業員数(新規採用者のうち当初の3か月内の者を除く。)は、第10期が730名、第11期前期が516名であるから、第10期及び第11期前期の営業員1名当たりの一日の平均売上総利益は3万9885円となる。
平成22年6月1日から同年9月30日までの延べ営業員数は488名であるから、上記1日の平均売上総利益3万9885円を前提とすると上記期間の売上総利益は1946万3880円となる。
そして、不動産仲介業の特性からすると、得べかりし売上総利益は、上記売上総利益1946万3880円の70%に相当する1362万4716円とみとめる。
実際の売上総利益は721万8939円であるから、その差額は640万5777円となる。
そして、実際の休業期間は平成22年6月9日から開始しているので、これを差し引くと598万5726円となる。