「日頃から効果的な予防策の実施」+「不祥事発生時の迅速かつ適切な対応」がキモです。
「企業不祥事」にはさまざまな種類があり、当然、その原因もさまざまです。
これまでに世間を賑わせた企業不祥事には、例えば、製品事故、偽装・不当表示、データ改ざん、不公正な取引、個人情報流出、不正会計・不実開示、インサイダー取引、反社会的勢力との関与、贈賄、業務上横領・背任等があります。
その多くは、いわゆる有名企業での不祥事であり、上場企業における不祥事も数多く存在します。
一般に、中小企業よりはるかにコンプライアンス、ガバナンスが厳格に求められる大企業においてすら、上記のような不祥事が後を絶ちません。
この世は「原因と結果の法則」に支配されています。
企業不祥事はある日突然、何の前触れもなく発覚します。
しかしながら、水面下では長期間にわたりその原因が継続して存在してきたのです。
結果を変えるためには、その原因を把握し、改善するほかありません。
一朝一夕にはいきませんが、これ以外に方法はありません。
一般に、弁護士の仕事の主戦場は、実際に紛争やトラブルが発生した際の「事後処理」であることは否定できません。
しかし、企業法務の中核は、言うまでもなく「予防法務」です。
すなわち、いかに紛争やトラブルを予防するかこそが企業法務の中核なのです。
会社の規模にかかわらず、経営者は、常に「リスクの把握」及び「リスクの管理」を徹底し、その上で、全従業員に対して相互監視をベースとした、法令遵守に関する「周知・指導・教育」を行うことが求められます。
もっとも、これら多種多様な対応について、すべて自前で行うというのは、あまりにも非効率であると言わざるを得ません。
まずは顧問弁護士を置き、常時、速やかに相談できる体制を整えるとともに、定期的な社内セミナーの開催により、企業不祥事対策を徹底することが効率的かつ効果的です。
不祥事発生時の初動対応の重要性
これは企業不祥事対応に限ったことではありませんが、トラブル対応において初動対応は極めて重要です。
初動対応は、その後の問題解決の命運を握っているといっても過言ではありません。
初動対応を誤ったばかりに、被害を拡大させ、かえって解決を困難にしてしまうという例は枚挙に暇がありません。
また、原因究明、犯人や加害者の特定をする上で証拠の収集・保全は必要不可欠ですが、この点においても、初動対応のミスから証拠が滅失・毀損させてしまうという状況に陥りがちです。
このような状況に陥らないためにも、日頃から顧問弁護士と連絡を取りあい、事前予防・事後対応に隙がないように準備をしておくべきです。
実際に発生した企業不祥事事案から読み解く!企業不祥事 事前の予防策と事後の対応策
第1 業務上横領事案
●町産業振興課の主任技査として農業用水路やほ場などの整備を行う土地改良区の口座や現金の管理を担当する職員が、令和2年4月から6月にかけて農業団体の口座から20数回にわたり計523万円の払い戻しを受けて横領。
警察の調べに対して被疑者は被疑事実を認めた上で「ギャンブルに使った」と供述。警察では余罪を追及する方針。
町によると横領額は計2000万円以上に上るとしていて、令和3年9月に被疑者を懲戒免職処分とし刑事告訴していた。(公務員・令和5年福島県)
●当時店長として勤めていた居酒屋の売上金の一部にあたる計19万円を横領した疑い。
警察の調べに対し被疑者は被疑事実を認めた上で「ボートレースや競馬などギャンブルに使うためだった」と供述。
警察は2021年11月から22年7月までの間に、被疑者が800万円を超える金を横領していたとみて調べを進めている。(飲食店・令和5年愛知県)
●造園建設業協会の預金口座からおよそ1億円を着服したとして業務上横領の罪に問われている被告人の裁判で、神戸地裁は19日、懲役4年の判決を言い渡した。
造園建設業協会の元事務員の被告人は、自身のクレジットカードの利用代金の支払いなどのために協会の預金口座から合わせて9797万円を着服したとして、業務上横領の罪に問われている。(造園建設業協会・令和5年兵庫県)
【One Point Check】 初期の調査段階で調査・検討すべき事項としては、①証拠の保全・収集、②被害規模、③共犯者の有無、④公表の要否等が挙げられます。
第2 特別背任・背任事案
●不動産会社の社長が、取引先3社が会社に返済金などとして本来支払うべき約2500万円について、コンサルタント料や土地購入代金の名目で関係会社に横流しさせ、自社に損害を与えた疑いがあり、会社法違反(特別背任)の疑いで書類送検する方針を固めた。
また、会社は、東京都内の山林を1億3千万円で購入したが、後に災害の危険性が高いことなどが発覚して価値が急落し、同社長は早急に土地を売ろうと考え、関係会社に転売益を保証して1億5千万円で購入させた。関係会社は転売したが売値は9700万円にとどまり、損失が出た。
警察は、この損失を補塡する目的で、社長が会社から融資を受けるなどしていた3社に指示し、関係会社に資金を流用させたとみている。(不動産会社・令和5年埼玉県)
●ソフトウェア開発会社社長が、取締役が代表を務める会社に、適正な取引だと本取引を決裁し、本来支払い義務のない請求に対して、総額約6000万円が支払われ(約1.4億円が未遂)、会社に損害を与えた。そのうち400~500万円の不当利得による特別背任の嫌疑が生じた。(ソフトウェア開発会社・令和5年東京都)
●ゲーム制作会社の新規事業開発責任者であった取締役が発注権限を悪用し、懇意にしていた外注先へのシステム開発とゲーム開発で割高な発注を繰り返し、その外注先から取締役が代表を務める個人会社にキックバックを行い、会社に損害を与えた。
社内調査で判明した限りでの不正行為による被害金額については約2900万円程度と見込まれている。(ゲーム制作会社・平成27年東京都)
【One Point Check】 初期の調査段階で調査・検討すべき事項としては、①証拠の保全・収集、②被害規模、③関係する企業の情報収集、④公表の要否等が挙げられます。
第3 独禁法・下請法違反事案
●介護管理システムの開発会社は、介護サービスの実施状況をスマートフォンを使って記録・管理できるソフトを開発し介護事業所などに販売しているが、別の会社が開発した介護保険料の計算ソフトと連携させることで、保険料の請求までできる仕組みになっている。
同社は、この計算ソフトの開発会社に対し、「自分たちの製品の販売に協力しなければ連携しない」などと持ちかけていた疑いがあり、公正取引委員会は、相手の事業活動を不当に制限する独占禁止法違反の「拘束条件付取引」にあたると判断した。(システム開発会社・令和5年石川県)
●中古車販売会社は下請け事業者に対し、作業単価の引き下げを強要したり、無償で店舗の清掃や店舗周辺の草むしりをさせたりしたとみられる。
また、下請け事業者が所有する車の車検を同社に依頼させることもあったといい、公取委は下請法違反の疑いで調査を始めた。(中古車販売会社・令和5年東京都)
●原子力や火力発電所向けの大手バルブ製造会社が、発電用バルブの部品製造を委託する下請け事業者9社に部品製造に使う木型など計330個を無償で保管させていたのは下請法違反に当たるとして、公正取引委員会は、同社に再発防止を勧告した。
公取委によると、同社は、部品を長期間発注しないのに、下請け事業者9社に無償で330個の木型などを保管させており、保管を巡る費用やスペースなどが不利益にあたると認定した。(バルブ製造会社・令和5年福岡県)
【One Point Check】 初期の調査段階で調査・検討すべき事項としては、①他社とのやりとりの有無・内容、②問題となる商品・サービスの売上規模・市場規模、③証拠保全・収集、④リニエンシー申請の是非等が挙げられます。
第4 品質データ偽装事案
●産業機械製造会社は、火力発電所で使われるタービンなどの部品を製造する過程の品質検査で、顧客と約束した仕様から逸脱した検査データを書き換えていた。
書き換えは納期から遅れることを防ぐために過去の実績や経験に基づいて遅くとも1998年から継続的に行われていた。(産業機械製造会社・令和4年北海道)
●トラック・バス製造会社は、排出ガス規制の対象である中型エンジンの劣化耐久性を測る試験の途中で排ガス性能が劣化し規制値に満たない可能性を認識した上で、排出ガス後処理装置の第2マフラーを交換して試験を続けた。そのため経年劣化によって規制値を超える可能性が考えられる。
また、大型エンジンでは燃費をよく見せるため、開発エンジンの燃費が目標に到達しないと認識した上で、燃費を測定している装置の校正値設定を変更し、実際よりも燃費値が良く表示されるようにして試験をしていた。(トラック・バス製造会社・令和4年東京都)
●大手菓子製造会社の生産子会社は、2019年5月~2022年12月にわたり、水質規制値の基準値を上回る排水をのべ50件行い、その行政報告において、水質分析データを、のべ97件書き換えていた。(菓子製造会社・令和5年千葉県)
【One Point Check】初期の調査段階で調査・検討すべき事項としては、①即時出荷停止の要否、②証拠の収集・検討、③顧客対応、④監督当局対応、⑤公表の要否及び公表内容等が挙げられます。
第5 不当表示事案
●ピザの大手宅配会社は、チラシ上の一部の商品で、持ち帰り価格とその2倍ほどの値段となるデリバリー価格の両方を表示。実際にはいずれにも別途、299円を上限に最大7%のサービス料が加算されていた。
消費者庁は、チラシにはサービス料がかかることが小さく書かれていたものの、デリバリー価格は配達料などが含まれるため高くなっていると認識することで、サービス料がかからないかのように消費者が誤認する不当な表示だと判断した。(ピザ宅配会社・令和5年東京都)
●製薬会社は、室内に置いたり、噴霧したりするなどして使う「クレベリン」シリーズの6商品について、商品パッケージなどで、「空間に浮遊するウイルス・菌を除去」などと表示していた。
消費者庁が表示の根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社からは密閉空間での実験結果が提出された。しかし、消費者庁は空気の流れなどがある通常の生活空間での効果の裏付けとは認められないと判断し、同社に対し6億744万円の課徴金納付を命じた(製薬会社・令和5年大阪府)
●オンラインの個別学習指導会社は、客観的な裏付けがないにもかかわらず、ウェブサイト上の広告で「利用者満足度No.1」、「第1位 オンライン家庭教師利用者満足度」などと自社のウェブサイトや動画共有サイトなどで表示していたのは景品表示法に違反するとして、消費者庁は同社に対して、6346万円の課徴金を支払うよう命じた。
消費者庁が、「満足度No.1」の表示の根拠として示されたアンケート調査の内容を確認したところ、回答者についてはサービスの利用の有無を確認していなかったほか、ホームページの見た目から満足度を判断させるなど、客観的な方法で調査したものではなかった。(個別学習指導会社・令和5年東京都)
【One Point Check】 初期の調査段階で調査・検討すべき事項としては、①(表示との関係で問題となる)商品の内容、②表示媒体及び記載内容、③表示の根拠となった試験結果・証明書等、④表示期間、当該期間における商品の販売個数・売上額、⑤商品の内容と表示に不一致が生じた経緯・理由等が挙げられます。
内部通報制度の活用により企業不祥事の発見と抑止を!
これまでに耳目を集めた企業不祥事の多くが従業員の内部通報により発覚したことは多言を要しません。
このように内部通報制度を活用することは、企業不祥事の発見に資することは言うまでもありませんが、これに加えて、不正行為者に対する牽制となり、ひいては不正行為の抑止につながるものと言えます。
しかしながら、内部通報制度のこのような効果は、あくまでも同制度が十分に機能していることが大前提です。
逆に言えば、いくら内部通報に関する規程をつくり、内部窓口及び外部窓口を設置したとしても、従業員が同制度を利用する意思・意欲がなければ絵に描いた餅です。
過去の企業不祥事案件を見ても、継続的・組織的に行われてきた不正行為について、複数の従業員がその不正を認識していたにもかかわらず、誰も通報に至らなかったというのが内部通報制度の機能不全の典型例です。
実際、法令違反や基準違反等の不正発覚後に行われた外部調査委員会の調査報告書には、複数の従業員が不正を認識しながら通報に至らなかった理由について、以下のとおり記載されています。
・内部通報しても是正されないと思った。
・内部通報をすると、報復される可能性があると思った。
・匿名で通報したとしても、通報内容から通報者が特定されてしまうので、働き続けるつもりであれば内部通報はできない。
・通報窓口は原則として実名を記載する必要があるため使いにくい。
いかがでしょうか。
これらの従業員の意見を見ると、いかに内部通報制度の機能不全が企業不祥事発見・抑止に対して無力か、おわかりいただけるかと思います。
内部通報制度の機能不全を解消するためには、内部通報に対する正しい理解・認識を全従業員に周知させるとともに、報復(不利益取扱い)への不安感の徹底的に払拭すること、通報後のフローを明確化することが必要不可欠です。
これらは、いずれも言うは易しですが、実際に行うことは想像以上に大変なことです。
しかしながら、動き出さなければ状況は何も変わりません。
効果的な内部通報制度の導入・運用をお考えでしたら、一度、弁護士法人栗田勇法律事務所にご相談ください。
内部通報制度における社外窓口の意義及び必要性
弁護士法人栗田勇法律事務所では、内部通報制度における社外窓口を受託しております。
内部通報制度の社外窓口は、企業内で発生している各種問題(例えば、従業員や顧客の健康、財産、安全、信頼を損なう行為、調達先、納入先、委託先などの取引先に対する信義に反する行為、法令や社内規程への違反、人権侵害行為、重大な倫理違反、不正な会計処理、これらの事象が生じるおそれや疑いがある場合)について、従業員が弁護士法人栗田勇法律事務所に対して通報できるシステムをいいます。
当該制度を導入することにより、企業は、従業員が日頃感じていても上司や社長に面と向かって言えない問題点・改善点を知ることができ、当該問題について調査・検討・対策を講じることができるようになります。
それより、問題点・改善点を放置することにより発生し得た従業員の退職や休職、従業員からの損害賠償請求訴訟等のリスクを減らすことができるわけです。
企業が、公益通報者保護法を踏まえ、実効性のある内部通報制度を整備・運用することは、組織の自浄作用の向上やコンプライアンス経営の推進に寄与し、消費者、取引先、株主・投資家、地域社会等を始めとするステークホルダーからの信頼獲得に資する等、企業価値の向上や事業者の持続的発展にもつながることは言うまでもありません。
実際、多くの消費者・事業者・労働者が、下記のとおり、自らと関係を有する事業者の内部通報制度の実効性に高い関心を有しています。
すなわち、「平成28年度 民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」(消費者庁)によれば、「実効性の高い内部通報制度を整備している企業の商品・役務を購入したい」と回答した者は86%を占め、「実効性の高い内部通報制度を整備している企業と取引したい」と回答した事業者の割合は89%を占め、「実効性の高い内部通報制度を整備している企業に就職・転職したい」と回答した者の割合は82%とそれぞれ極めて高い割合を占めています。
社外窓口の設置場所(顧問弁護士に社外窓口を依頼することの適否)
一般に、内部通報制度の社外窓口を設ける場合の選択肢としては、法律事務所や民間の専門会社等が考えられます。
「平成28年度 民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」(消費者庁)によれば、社外窓口の委託先として最も多いのは法律事務所(顧問弁護士)の49.2%、次いで法律事務所(顧問でない弁護士)の21.6%、そして通報受付の専門会社14.9%となっています。
このように社外窓口を採用する企業の約半数が社外窓口を顧問弁護士に委託しているわけですが、一般的に、内部通報の社外窓口を顧問弁護士にすることは以下の理由から推奨されていません。
すなわち、顧問弁護士は、契約上、当該企業の利益を擁護する立場にあるため、通報者(従業員)からすると中立性・公正性に疑義(通報したって結局、会社の味方をして有耶無耶にされてしまうのではないかという不信感)が生じうること、仮に内部通報を契機として通報者と会社との間で紛争が生じた場合、通報者から当該紛争に関して詳細に話を聞いているため、その後、当該紛争について会社の代理人として活動することは利益相反に該当しうることなどがその理由です(「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」(消費者庁))。
例えば、同報告書によると、通報窓口に寄せられた通報の内容としては「職場環境を害する行為(パワハラ・セクハラなど)」が55.0%と最も多いとされていますが、このような通報を顧問弁護士が受けた場合、その後、仮に通報者(従業員)が加害者及び会社を相手に損害賠償請求訴訟を提起した場合、顧問弁護士は会社の訴訟代理人として対応すると利益相反に該当するおそれがあります。
以上の理由から、もし御社が内部通報制度を「絵に描いた餅」にせず、実効性のある制度にするお気持ちがありましたら、顧問弁護士とは別に社外窓口を設けることをお勧めいたします。
なお、前記のとおり、当該制度は、中立性・公正性が極めて重要ですので、弁護士法人栗田勇法律事務所と顧問契約を締結されている企業様はご利用いただけません。
費用及びサービス内容
(1)費用
①導入費用 33万円(税込)
②運用費用 月額3万3000円(税込)
(会社の規模、従業員数等にかかわらず一律の費用体系です。)
(2)サービス内容
①対応回数 無制限
②通報者からの聴取は全て弁護士が行います(*1)。
③聴取内容につき報告書を作成するとともに口頭でも説明いたします。
④内部通報制度の設計・導入(社内規程の整備、従業員への周知方法及び内容等)について助言いたします。
⑤役員及び管理職に対して内部通報制度の運用上の留意点についてセミナー(研修会)を実施いたします。
*内部通報制度の運用上の留意点を一言で言うならば、「内部通報制度の機能不全要因を徹底的に除去すること」に尽きます。そのための第一歩として、まずは内部通報制度の機能不全要因を理解することが肝要です。
*特に、特定リスク(通報者が誰であるかを把握されてしまうリスク)の高い通報内容の場合(例えば、不正行為が密室で行われた場合、業務上知り得る者が限定されている場合、通報者がすでに会社に対して問題提起をしている場合等がこれにあたります。)、いかなる方法で社内調査を実施するかを理解することは極めて重要です。
*内部通報者に対する不利益な取扱い(例えば、退職願の提出の強要、労働契約の更新拒否、本採用・再採用の拒否、降格、不利益な配転・出向・転籍、長期出張等の命令、昇進・昇格における不利益な取扱い、懲戒処分、減給その他の給与・一時金・退職金等における不利益な取扱い、損害賠償請求、事実上の嫌がらせ等)が禁止されていることは言うまでもありませんが、その前提として、社内において通報者の探索を禁止することもまた同様に重要となります。これらの留意点について、過去の重要判例に基づき、内部通報への対処の成功例・失敗例をご説明いたします。
⑥社内窓口担当者に対し、「通報対応フォーマット」の提供、対応する際の留意点、聴取ポイント等についてセミナー(研修会)を実施いたします。(希望制)
*ガイドラインにおいても、以下のとおり、社内窓口担当者に高度の能力を期待し、十分な教育・研修の必要性を説いています。
「実効性の高い内部通報制度を運用するためには、通報者対応、調査、事実認定、是正措置、再発防止、適正手続の確保、情報管理、周知啓発等に係る担当者の誠実・公正な取組と知識・スキルの向上が重要であるため、必要な能力・適性を有する担当者を配置するとともに、十分な教育・研修を行うことが必要である。」
*また、公益通報者保護法令和2年改正を正確にフォローすることも重要です。本改正事項は多岐にわたりますが、その中でも特に①内部通報対応体制の整備義務、②外部通報の保護要件の緩和、③通報対象事実の拡大、④通報主体・保護内容の改正を理解することが求められています。
(*1)聴取方法・利用ルール
①通報者はメールで弁護士法人栗田勇法律事務所に当該制度の利用を希望する旨のご連絡をいただきます。
その際、通報者は弁護士に対してのみ会社名及び氏名をお伝えいただきます。
弁護士は法律上守秘義務を負っております。氏名を通報者の明示の同意なく会社に伝えることは絶対にいたしません。
*「公益通報者保護法に基づくヘルプライン担当弁護士が通報者の実名を本人の承諾なく、もしくは適正な承諾手続を経ずに雇用者に通知し、通報者が不利益な扱いを受けたとして、秘密保持義務違反が問われた事例において、「ヘルプライン担当弁護士は、ヘルプラインの相談業務を弁護士の業務として行うものであるから、ヘルプラインの相談によって知り得た通報者に関する個人情報や通報に関する事実は、『その職務上知り得た秘密』であり、『保持する・・・義務を負う』(弁護士職務基本規程23条)。・・・殊にヘルプラインは、相談者である弁護士の職業によって通報者の匿名性が保持されることを前提とするものであり、公益通報者保護法の根幹となるものである」として、守秘義務違反を理由として懲戒処分をした原弁護士会の決定を相当とした例がある(日弁連懲戒委平成21年10月26日)。ヘルプライン制度は企業からの依頼により弁護士がその任に就くものであるが、通報者の意思に反してその氏名を企業に伝えてはならない。ヘルプライン担当となった弁護士は、通報者に当該制度の趣旨を十分に説明して通報を受ける必要がある。」(解説弁護士職務基本規程第3版58頁)
②その後、実際にお話を伺う日時を決め、弁護士が通報者からお話を伺います。
お話を伺う方法は、通報者のご希望により、法律事務所における対面、電話又はZoomのいずれかをお選びいただきます。
(*2)聴取内容の報告後の個別具体的な対応方法(調査方針・事実認定・再発防止措置等)に関するご相談・ご依頼は中立性・公正性確保の観点から応じかねます。貴社の顧問弁護士等に別途ご相談ください。
通報受付専門会社との顧問契約もお受けいたします
弁護士法人栗田勇法律事務所では、内部通報の社外窓口をお受けされている企業との顧問契約もお受けしております。
日々の対応業務を適切に進める上で、貴社に責任が及ばないように必要な法的アドバイスをいたします。
顧問契約の内容や費用につきましては、こちらのページをご覧ください。
内部通報に関する裁判例を通じて注意点を確認しよう!
過去に内部通報者に対する対応をめぐり争われた裁判例をご紹介いたします。是非、参考にしてください!
【BAD】学校法人國士舘ほか(戒告処分等)事件(東京地裁令和2年11月12日・労判1238号30頁)
Y法人は、公益通報者が公益通報を行ったことを理由として、懲戒処分などの不利益処分をしてはならないと定める(本件公益通報規程11条1項)。同規程の公益通報は、Y法人の諸規定に違反する行為又はそのおそれのある行為を対象とするものであり(1条)、二重投稿は、Y法人が定める本件行動規範において研究者がしてはならない行為としたものであるから、Y法人の諸規定に違反する行為又はそのおそれのある行為といえ、本件公益通報は、本件公益通報規程に基づく公益通報に当たる。
Y法人は、本件行動規範が平成26年に制定されたことから、それ以前の二重投稿は本件公益通報規程の対象ではない旨主張するが、本件行動規範は、その内容からして平成26年文科省ガイドライン及び日本学術会議報告を基づき制定されたものと認められるところ、これらの制定の前から、二重投稿が不正行為であると指摘されていたこと(1(1)ア)に照らせば、本件公益通報が通報対象とする平成22年より前の二重投稿も、「被告法人の諸規定に違反するおそれのある行為」に当たるから、本件公益通報規程の保護の対象外とはいえないものである。
Y法人は、本件出来事(1)~(3)が虚偽であると判断した上,本件出来事(1)~(3)が虚偽であるから本件公益通報は不正目的のものであり、保護の埒外にあると解釈して、本件公益通報書の記載を理由とする懲戒処分を行ったものである。本件公益通報の対象となったB教員の二重投稿問題に根拠がなく、これが真実ではないがゆえに本件公益通報が不正目的であるというなら格別、二重投稿の存否を検討することなく、本件公益通報に至った事情として記載された本件出来事(1)~(3)が虚偽であるから本件公益通報も不正目的であるとの判断は、根拠があるとはいい難い。
したがって、本件各処分は、本件公益通報書の記載を理由としてXらに懲戒処分を行ったものであるから、本件公益通報規程11条1項に反しており、この点でも違法といえる。
【GOOD】甲社事件(東京地裁平成27年11月11日・労経速2275号3頁)
・・・以上のとおり、懲戒事由①から③までの事実を認めることができ、これらの事由は、就業規則63条2号、4号及び5号に該当するところ、情状の程度に応じて懲戒解雇の処分を行うことができることになる。
そこで情状の程度について検討するに、懲戒事由③について、本件告発の主たる目的がXの私的な利益を図るものであったというべきことや本件告発の態様等に照らせば、労働者が負っている誠実義務に著しく違反するものと評価するべきであり、本件告発が契機となって、本件過剰請求が明らかになり、Y社による不適切なガソリン代金請求が是正されたことを十分斟酌しても、その情状は悪いというべきである。
・・・また、Y社は、本件懲戒解雇時、Xに弁明の機会を与えていたことなどを踏まえれば、本件懲戒解雇の手続は相当なものといえる。
以上の事情を総合考慮すれば、本件懲戒解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められるから、労働契約法15条に違反せず有効である。
実績
- 【講演】「内部通報制度の設計・導入と運用上の留意点①-匿名性確保・秘密保持と実効的な調査の調整方法-」をテーマに講演を行いました。
- 【講演】「重要判例から読み解く!契約の不当破棄と契約締結上の過失の理論」をテーマに講演を行いました。
- 【講演】「令和6年11月1日施行!!フリーランス法の実務対応ポイントチェック」をテーマに講演を行いました。
- 【講演】「近時の景表法による措置命令から読み解く!景表法違反の傾向と効果的な対策法」をテーマに講演を行いました。
- 【講演】「内部者による企業情報持出しに対する法的対策『3種の神器』」をテーマに講演を行いました。
- 【講演】「『下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準』の改正(公正取引委員会2024年5月公表)の概要と実務上の留意点」をテーマに講演を行いました。
- 【講演】「コスト上昇で価格据え置きは『買いたたき』!!下請法に関する運用基準の改正のポイントチェック」をテーマに講演を行いました。
- 【講演】「逮捕事案続出!!実際の逮捕事案から読み解く!『不同意性交罪』、『不同意わいせつ罪』の構成要件と実生活上の留意点」をテーマに講演を行いました。
- 【講演】「『実効的な独占禁止法コンプライアンスプログラムの整備・運用のためのガイド』(公正取引員会2023年12月公表)の概要と実務上の留意点」をテーマに講演を行いました。
- 【講演】「『労務費ガイドライン』(公正取引委員会2023年11月発表)を踏まえた価格交渉の法的留意点」をテーマに講演を行いました。