おはようございます。
今日は、協議会で決定した水道光熱費の変更が無効とされた事案(東京地判平成29年3月9日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、本件マンションの管理者である原告が、本件マンションの一室の区分所有法の区分所有者である被告に対し、管理費や修繕積立金、水道光熱費などにつき未払分があるとして、被告に対し、平成24年8月分から平成28年5月分までとして、65万4912円+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
被告は、原告に対し、63万6912円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 本件管理費等に関する定めは、本件マンションが、一般のマンションとは異なり、ホテルの居室として利用される部分が混在しており、各居室には電気、ガス、水道等のメーターが設置されておらず、共用部分と一体となって使用され、各料金の支払は、特別管理費として、共用部分の算定と同様に、各居室の面積に応じて支払うこととされていたという特殊性があり、さらに、通常一般管理費において負担される共用部分の水道光熱費が、一般管理費で計上されていないことから、本件マンションにおいては、共益費と同様の考え方に基づき、特別管理費である水道光熱費について、普通決議によって、変更ができるものと認められる。
ところで、本件決定をした本件協議会が、本件管理組合において法的にどのような機関であり、どのような権限があるのかは明らかでなく、本件決定に関し、その後の本件管理組合の集会で承認されたり、本件協議会が集会の一任を受けたりしている等の事情もうかがえないから、本件管理費等に関する決議は、本件決議2がされるまでは証拠上認められないことになる。
そして、水道光熱費の変更は、本件管理組合の集会で普通決議を必要とする事項であるが、従前、空室について、水道光熱費を徴収しないことが適法に決定された形跡もない。
よって、本件書面が被告に送付されたか否かにかかわらず、本件決定の効力は被告には及ばないというべきである。
2 被告は、本件居室は平成24年7月末日でホテル用の賃貸借契約が解除されたことにより、その後、ライフラインは解約状態にあり、空室(閉鎖中)になっているから、区分所有法により水道光熱費の支払義務はない旨主張する。
確かに、本件居室の賃貸借契約は同日限りで解約されたとの裁判がなされていることが認められるが、本件居室において、本件マンションの状況からすると本件マンションにおいては、水道、電気、ガス等については、各居室で個別の契約をしていないために特別管理費としての水道光熱費が徴収されており、本件居室において個別の契約がなされていたとは認められず、また、区分所有法上、空室の場合に水道光熱費の支払義務がないことを定めた規定は見当たらないから、被告の主張は理由がない。
また、被告は、不在届について、提出を求められていないし、不在届の提出を求めるには特別決議が必要である旨主張するが、空室になっている居室の水道光熱費を1室あたり2000円とする本件決定は無効であるから、被告に適用の余地はない上、その後、本件決議2や本件決議3により、空室に対する特別な措置は決められていないから、不在届の提出の有無にかかわらず、被告において、水道光熱費を負担しないとする根拠がない。
上記判例のポイント1は注意する必要があります。
本件では、協議会の法的にどのような機関なのかが明らかでないため、上記の結論となりました。
区分所有法や管理規約で定められている手続きを正確に理解することがとても重要です。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。