おはようございます。
今日は、原告が、被告からなされた本件敷地及びその上にある本件マンションに係る建物退去土地明渡等請求事件による強制執行につき、被告の管理費償還請求権と原告の各不当利得返還請求権との相殺を主張して強制執行の不許を求めた事案(東京地判平成29年2月24日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、原告が、被告から原告に対する東京地方裁判所平成20年(ワ)第14972号建物退去土地明渡等請求事件及び同第33354号建物退去土地明渡等請求事件の判決主文第1項に基づく強制執行について、同項に基づく被告の原告に対する区分所有法19条に基づく管理費償還請求債権と原告の被告に対する不当利得返還請求債権との相殺を主張して、その不許を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求認容
【判例のポイント】
1 区分所有建物の一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た使用料のうち、各区分所有者の持分割合に相当する部分につき生ずる不当利得返還請求権は各区分所有者に帰属するから、区分所有者の団体のみが上記請求権を行使することができる旨の集会の決議や規約の定めがあるといった場合を除き、各区分所有者は、上記請求権を行使することができるものと解される(最判平成27年9月18日)。
本件マンションについては、上記のような集会の決議や規約の定めがあるとは認められないから、原告は、被告に対し、本件マンションの区分所有者の一人として、被告が本件マンションの共用部分を第三者に賃貸して得た賃料のうち、各区分所有者の持分権割合に相当する部分につき生ずる不当利得返還請求権を行使することができる。
2 本件駐車場は、本件マンションが所在する法定敷地であり、「建物の敷地」に当たるから、原告は、自己の専有部分を所有するための「専有部分に係る敷地利用権」として本件敷地の賃借権を準共有している。
建物の敷地が区分所有者の共有又は準共有に属する場合、区分所有法21条により同法19条が準用され、各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、建物の敷地の負担に任じ、建物の敷地から生ずる利益を収取する。
したがって、原告は、本件駐車場を第三者に賃貸することによって得られる利益をその持分割合に応じて収取することができる。
3 原告が本件駐車場の使用収益権を有しないとの認識を昭和53年の本件賃貸借契約締結当時から持っていた認められる証拠はなく、原告の主張するように、原告は、法的な知識を十分に有していなかったため、本件駐車場の使用収益権を有するとの認識を持つことができなかったものと認められる。
そうすると、本件相殺の意思表示が信義則上許されない又は権利濫用に当たり許されないということはできず、この点に関する被告の主張は採用することができない。
4 以上の検討によれば、被告から原告に対する東京地方裁判所平成20(ワ)第14972号建物退去土地明渡等請求事件及び同第33354号建物退去土地明渡等請求事件の判決主文第1項に係る区分所有法19条に基づく管理費償還請求権は、平成16年7月20日から平成23年6月19日までに発生した不当利得返還請求権と対当額で相殺されて消滅した。
上記判例のポイント1の最高裁判例や区分所有法の十分な理解がないと反応できないと思います。
ややレベルが高いところですが、知っているのと知らないのでは大きな差が出る分野です。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。