管理組合運営4 法人でない管理組合の理事の解任請求の可否(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、法人でない管理組合の理事の解任請求の可否(東京地判平成28年4月11日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、法人でない管理組合の理事に対する解任請求の可否が争点となった事案である。

【裁判所の判断】

訴え却下

【判例のポイント】

1 区分所有法は、管理組合法人による管理が円滑に行われるよう、理事の権限につき法律で明確化を図り、さらに、その法律で規定された理事の権限が大きく、区分所有者の利害に大きな影響を及ぼすものであることから、区分所有者の利益を保護するため、集会の決議により解任する場合以外にも理事を解任する方法として、解任請求の制度を特に設けたものと解される。また、管理組合法人の理事に対する解任請求の訴えの性質は、管理者の解任請求について定めた同法25条2項と同様に、形成の訴えであると解される。

2 他方、区分所有者により構成される区分所有法3条の団体のうち、管理組合法人ではないもの(以下「非法人管理団体」という。)において、その管理規約に役員として理事を置く旨の規約があったとしても、理事の選任及び解任といったその地位に関わる事項やその権限の内容については、区分所有法の定めるところではなく、その団体の自治に委ねられていると解される。
そして、非法人管理団体において管理者が選任されている場合には、その権限の内容は、管理組合法人の理事と同様、法律によって規律されており、理事と同様に、管理者に不正な行為その他職務を行うに適しない事情があるときに、区分所有者が裁判所に解任を請求することができる(法25条2項)こととされているが、上記の理事については、その権限の内容が団体自治に委ねられている以上、その解任等区分所有者の利害との調整方策についても、区分所有法は、団体の自治に委ねる趣旨であると解される(なお、このことは、理事の権限内容につきどのように定めても、それが団体の自治によって定めたものである以上、変わりはないというべきである。)。

3 そして、解任請求の訴えが形成の訴えであり、法の定めがある場合にのみ認められる性質のものであることも併せ考慮すると、非法人管理団体の役員である理事については、区分所有法は、区分所有者が裁判所にその解任を請求することを予定しておらず、管理組合法人の理事の解任請求についての区分所有法の規定を準用する余地はないと解するのが相当である。

法人でない管理組合の理事に対する解任請求の訴えは認められませんので注意しましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

管理組合運営3 理事に対する解任請求の訴えの被告適格(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、理事に対する解任請求の訴えの被告適格(東京地判平成26年2月27日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、区分所有者である原告が管理組合法人である被告の理事Cには建物の区分所有法25条2項の「不正な行為その他職務を行うに適しない事情がある」と主張して、法49条8項、25条2項に基づき、同理事の解任を請求した事案である。

【裁判所の判断】

訴え却下

【判例のポイント】

法49条8項、25条2項は、管理組合法人の理事に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができると規定している。この解任の訴えは、当該理事について、管理組合法人の理事の地位を剥奪する形成の訴えであると解されること及び当該理事の手続保障に鑑みると、当該理事に被告適格が認められるというべきである(管理組合法人にも被告適格が認められ、固有必要的共同訴訟となるかどうかはともかく、少なくとも当該理事には被告適格が認められるというべきである。)。
そうすると、原告の本件解任の訴えは、解任を求める理事であるCを被告としていない点で不適法な訴えというほかないから、その余の点について判断するまでもなく、却下を免れない。

理事の解任請求の訴えは、管理組合法人ではなく、当該理事を被告としますので間違えないようにしましょう。

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管理組合運営2 正当な理由なく役員を解任したことを理由とする損害賠償請求の可否(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、正当な理由なく役員を解任したことを理由とする損害賠償請求の可否(東京地判令和元年7月22日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、共同住宅の管理組合の組合員である控訴人が、同管理組合及び同管理組合の理事長等である被控訴人らに対し、控訴人を副理事長から解任する決議をした被控訴人組合の臨時総会について、〈ア〉役員の解任を総会の会議の目的である事項とするときは、あらかじめ理事会で議案を決定すべきであるにもかかわらず、これをしなかったこと、〈イ〉正当な理由なく控訴人を解任したこと等の理由から、損害賠償金合計830万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

原審は、控訴人の原審における請求をいずれも棄却した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 本件規約において、役員の解任方法について定めた規定はない。そこで、被控訴人組合の役員の解任については、管理組合法人の理事を集会の決議によって解任することができるとする区分所有法49条8項、25条1項の準用により、被控訴人の総会の決議によるものと解される。
そして、同法には、役員解任を総会の議案とすることにつき、理事会で決定しなければならない旨の規定は存在しないから、本件臨時総会における本件解任について、あらかじめ控訴人解任の議案を理事会で決定しなかったことは、本件規約及び区分所有法に反せず、不法行為に当たらない。

2 本件規約において、役員の解任につき正当な理由を要する旨を定めた規定はない。
また、区分所有法49条8項、25条1項は、管理組合法人の理事を解任できる場合を限定していないことから、管理組合法人の理事の解任に当たっては、同法25条2項が規定するような不正な行為その他職務を行うに適しない事情といった特別の解任理由は不要であると解される。

理事の解任決議(25条1項)には、特別の解任理由は必要とされていません。

なお、理事解任請求の訴え(同条2項)は、要件が異なるので注意が必要です。

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管理組合運営1 管理組合法人である原告が、その理事であった被告に対し、原告所有に係る預金通帳等の書類の引渡しを求めた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合法人である原告が、その理事であった被告に対し、原告所有に係る預金通帳等の書類の引渡しを求めた事案(東京地判平成22年9月24日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、管理組合法人である原告が、その理事であった被告に対し、原告所有に係る預金通帳等の書類の引渡しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

被告が、原告代表者名義で、東日本銀行飯田橋支店に2口の普通預金口座を、三菱東京UFJ銀行神保町支店に普通預金口座をそれぞれ開設し、その各口座に係る預金通帳を受け取り、保管してきたものと認めるのが相当である。
被告は、原告が、その後、代表者名義を変更したり、紛失届を提出したことをもって、上記各預金通帳が存在しないかのような主張をするが、失当であり、他に、被告が上記各預金通帳の所持を喪失したことを認めるに足りる証拠はない。

管理組合法人と理事は、委任関係にあります。

したがって、かつて理事であった者が預金通帳や総会議事録等を保管する場合には、当然、管理組合法人に返還する義務を負います。

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義務違反者に対する措置9 共同利益背反行為を行っていた区分所有者が死亡し、競売による買受人に対する行為差止め請求が認められなかった事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、共同利益背反行為を行っていた区分所有者が死亡し、競売による買受人に対する行為差止め請求が認められなかった事案(東京地判平成24年2月29日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、共同利益背反行為を行っていた区分所有者が死亡し、競売による買受人に対する行為差止め請求(構築物の撤去等の請求)の可否が争点となった事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 原告が主張する請求原因は、本件建物の区分所有者である亡Cが改造工事を行ったことが法6条1項の共同の利益に反する行為に該当し、同人が法57条1項に基づきその行為の結果を除去すべき義務を負い、被告が本件建物の区分所有権を承継取得したことにより同義務を承継する、又は、被告が上記改造工事の行われた本件建物を所有することが法6条1項の共同の利益に反する行為に該当し、被告が法57条1項に基づきその行為の結果を除去すべき義務を負うというものである。

2 しかし、このうち前者については、以下に述べるとおり理由がない。すなわち、法6条1項は、区分所有権に内在する制約として共同の利益に反する行為をしてはならない義務を伴わせるものであり、法57条1項は、特定の区分所有者が法6条1項の共同の利益に反する行為をし、又はその行為をするおそれがあるという現在の状態を理由として、他の区分所有者の全員又は管理組合法人が同行為の停止等を請求する特別の団体的権利を有することを認めるものであるから、同請求権に対応する当該区分所有者の義務は、所定の要件を満たす現在(口頭弁論終結時)の区分所有者であることに基づくものであって、区分所有権の移転に伴って承継されることはないというべきである。

3 後者についても、実質的には本件建物をかつて所有していた亡Cの行為を問題とするものであって、現所有者である被告の行為を独自に問題とするものではない上、証拠上、本件建物の増改築部分の存在が本件マンションの基本構造を弱めている事実や他の区分所有者による共用部分の使用を妨げている事実は、認めるに足りないから、被告が上記増改築部分を含む本件建物を所有することが法6条1項の共同の利益に反する行為に該当するとは認められず、原告の主張は理由がない。

59条競売に関する最高裁判決と同様の判断ですね。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

義務違反者に対する措置8 理事会が機能不全に陥っている場合における各区分所有者の行為差止請求の可否(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、理事会が機能不全に陥っている場合における各区分所有者の行為差止請求の可否(大阪地判平成30年9月19日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、区分所有者個人の行為差止請求の可否が争点となった事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

原告らは、管理組合の理事会が機能不全に陥っている場合には、各区分所有者が、法6条1項、3項に基づき、差止請求をすることができると主張する。
しかし、法6条1項、3項により保護される利益は、区分所有者全員の共同利益であるから、これらによる区分所有者の権利は、当該共同利益背反行為をした者を除く区分所有者全員に個別に帰属するのではなく、団体的に帰属しているというべきである。
そして、法は、かかる観点から、法57条において、法6条1項、3項に規定する行為の停止等を請求することができる主体を、当該共同利益背反行為をした者を除く区分所有者全員又は管理組合法人と明示的に定めたのであるから、各区分所有者が個別に6条1項、3項の権利を行使することはできないと解すべきである。

上記判例のポイント記載のとおり、行為差止め(停止)請求権を行使できるのは、違反行為者を除く区分所有者全員または管理組合法人です(57条1項)。

管理者および集会で指定された区分所有者も、当該請求権を行使する訴訟追行が可能です(同3項)。

なお、同3項は、管理組合が法人化されていない場合に限られますのでご注意ください。

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ペット問題7 複数の区分所有者がペット禁止規定に違反してペットを飼育している場合における請求権行使の衡平性(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、複数の区分所有者がペット禁止規定に違反してペットを飼育している場合における請求権行使の衡平性(東京地判平成13年10月11日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、管理組合である原告が、当該マンション内で犬を飼育している区分所有者の被告に対し、規約に基づいて犬の飼育の禁止を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償を求めている事案であり、後者の請求に係る付帯請求は不法行為後である訴状送達の日の翌日からの民法所定の割合による遅延損害金の支払請求である。

【裁判所の判断】

請求認容

*弁護士費用損害金30万円認容

【判例のポイント】

1 原告は、区分所有法30条1項に規定する規約である本件規約に基づく本件協定(使用細則)中の動物飼育禁止規定に基づいて、被告に対し、本件マンション及びその敷地内で犬の飼育をしないよう求めることができるというべきである。

2 被告は、本件マンションでは被告以外にも犬や猫等を飼育している者が存在する旨主張するが、仮にそのような事実があったとしても、そのことから直ちに、被告において本件マンション内で犬を飼育していることが正当化されるものではなく、被告の主張内容や本件全証拠を仔細に検討してみても、本件マンションにおいて、本件協定中の動物飼育禁止規定が空文化するほどに犬や猫等の飼育が広汎に行われているとか、原告において、被告と同様に動物飼育禁止規定に違反している者が他にも存在するにもかかわらず、何らか不当な目的をもって、あえて被告に対してのみ訴訟を提起したというような事情があるとは認め難いから、上記判断は左右されない。
したがって、被告に対し本件マンション及びその敷地内での犬の飼育の禁止を求める原告の請求は理由があって、これを認容すべきである。

上記判例のポイント2記載のような事情が認められる場合には、請求権行使が権利濫用として無効になる可能性がありますので注意が必要です。

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義務違反者に対する措置7 区分所有法59条1項に規定する競売を請求する権利を被保全権利として民事保全法上の処分禁止の仮処分を申し立てることの可否(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有法59条1項に規定する競売を請求する権利を被保全権利として民事保全法上の処分禁止の仮処分を申し立てることの可否(最決平成28年3月18日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの管理組合の管理者である抗告人が、同じマンションの区分所有者である相手方が管理費や修繕積立金の滞納を続け、区分所有者の共同の利益に著しく反する行為をしていると主張して、区分所有法59条1項に基づく区分所有権の競売請求権を被保全権利として、係争物に関する仮処分としての本件不動産の処分禁止の仮処分命令を求める申立てをした事案である。

【裁判所の判断】

申立て不可

【判例のポイント】

1 区分所有法59条1項に規定する競売を請求する権利を被保全権利として、民事保全法53条又は55条に規定する方法により仮処分の執行を行う処分禁止の仮処分を申し立てることはできないものと解するのが相当である。

2 民事保全法53条は同条1項に規定する登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行方法について、同法55条は建物の収去及びその敷地の明渡しの請求権を保全するためのその建物の処分禁止の仮処分の執行方法についてそれぞれ規定しているところ、建物の区分所有等に関する法律59条1項の規定に基づき区分所有権及び敷地利用権の競売を請求する権利は、民事保全法53条又は55条に規定する上記の各請求権であるとはいえない。
上記の競売を請求する権利は、特定の区分所有者が、区分所有者の共同の利益に反する行為をし、又はその行為をするおそれがあることを原因として、区分所有者の共同生活の維持を図るため、他の区分所有者等において、当該行為に係る区分所有者の区分所有権等を競売により強制的に処分させ、もって当該区分所有者を区分所有関係から排除しようとする趣旨のものである。このことからしても、当該区分所有者が任意にその区分所有権等を処分することは、上記趣旨に反するものとはいえず、これを禁止することは相当でない。

競売請求権を被保全権利とする処分禁止の仮処分は認められませんので注意しましょう。

上記判例のポイント2の1段落目が形式的理由、2段落目が実質的理由です。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

義務違反者に対する措置6 区分所有法59条1項に基づく訴訟の口頭弁論終結後の区分所有権及び敷地利用権の譲受人に対し同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることの可否(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有法59条1項に基づく訴訟の口頭弁論終結後の区分所有権及び敷地利用権の譲受人に対し同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることの可否(最決平成23年10月11日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、区分所有法59条1項に基づく訴訟の口頭弁論終結後の区分所有権及び敷地利用権の譲受人に対し同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることの可否が争点となった事案である。

【裁判所の判断】

競売請求不可

【判例のポイント】

区分所有法59条1項の競売の請求は、特定の区分所有者が、区分所有者の共同の利益に反する行為をし、又はその行為をするおそれがあることを原因として認められるものであるから、同項に基づく訴訟の口頭弁論終結後に被告であった区分所有者がその区分所有権及び敷地利用権を譲渡した場合に、その譲受人に対し同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできないと解すべきである。

ちなみに、口頭弁論終結前に区分所有権が譲渡されていた場合には、当事者適格を欠くため、訴えは却下となります。

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義務違反者に対する措置5 7条先取特権の行使が可能にもかかわらず59条競売が認容された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、7条先取特権の行使が可能にもかかわらず59条競売が認容された事案(東京地判平成26年3月27日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、区分所有法25条により本件マンションの管理者として選任された原告が、本件建物の区分所有者である被告に対し、主位的に区分所有法59条1項に基づき本件建物及び本件土地の競売を求め、予備的に同法58条1項に基づき本件建物の使用禁止を求め、一方、被告が、原告に対し、本件建物について本件修復工事の施工を求めた(反訴)事案である。

【裁判所の判断】

本訴主位的請求認容(予備的請求棄却)

反訴請求棄却

【判例のポイント】

1 被告は一方的に管理費等の不払を続けているものであり、上記は共同利益背反行為に該当するものである。管理費等の確保自体は、管理費等債権の先取特権(区分所有法7条)に基づく競売請求等により可能ではあるが、上記のような被告の非協力的態度は、競売請求における他の方法に関する考慮要素となるというべきである。

2 本件工作物の設置は共同利益背反行為というべきであるが、本件組合が本訴提起直前の平成21年8月に初めて撤去を求めたものであることに照らせば、これのみを理由に競売請求が認められるとは言い難い。しかしながら、上記は、他の共同利益背反行為と併せて競売請求における他の方法に関する考慮要素となるというべきである。

3 被告には上記の各共同利益背反行為が認められるところ、特に本件マンションの保存に大きく影響する本件建物内壁の修理をしないことに関しては区分所有者の協力がなければその解消が困難なものである。そして、これらの共同利益背反行為に見られる被告の非協力的態度に鑑みれば、競売の方法によらなければその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であると認められる。したがって原告の競売請求は理由がある。

7条先取特権行使の可能性を認めつつも、被告の非協力的態度を考慮し、59条競売請求を認容した事案です。

非常に参考になる裁判例ですので、しっかりと押さえておきましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。