義務違反者に対する措置17 専有部分を教団施設として使用している宗教団体に対する賃貸借契約解除と退去請求(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、専有部分を教団施設として使用している宗教団体に対する賃貸借契約解除と退去請求(大阪高判平成10年12月17日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

原告は、本件マンションの区分所有者全員で結成された管理組合の理事長であるが、本件専有部分の区分所有者である被告甲野から本件専有部分を賃借使用する被告乙山らが、本件専有部分をオウム真理教の教団施設として使用し、本件マンション住民に不安や恐怖感を与えるなどして、区分所有者の共同利益に背反する行為をしているとして、管理組合集会の決議に基づき、被告甲野と同乙山の賃貸借契約の解除及び同乙山らの本件専有部分からの退去明渡を求める。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本件専有部分は本件マンションの住居部分のうちの一室であり、その居住者、占有者は、他の各室の居住者と同様に、区分所有法あるいは本件マンションの管理組合規約にしたがって、平穏で良好な居住環境を維持すべき義務を負うものであり、本件専有部分における占有が他の居住者の平穏を受忍限度を超えて侵害する場合には、その侵害は区分所有法の定める共同利益背反行為として排除されうるものとなることは、いうまでもない
本件マンションのような多数の居住者がいる共同住宅においては、居住者相互の利害を調整して居住者の円満な共同生活を維持しなければならないものであり、そのため区分所有法は個々の居住者の占有権原に特別の制約を加えることを認めていることは原判決の説示のとおりであり、その占有権原が本件専有部分におけるように賃借権であっても区分所有権の場合と何ら変わることはない

2 本件専有部分の賃借人である被告乙山は間接占有は残しているとはいえ、本件専有部分からすでに転出し、現在は実質的に教団が頻繁に出入りする(深夜から未明にかけての出入りも多い。)信者のための宗教施設として使用している状態が変わらずに継続しているのであり、本件マンションの居住者においては、かつて教団ないしその関係者が教団外部の一般社会においていわゆる地下鉄サリン事件等をひき起こして社会に重大な不安をもたらしたことなどから、本件専有部分の前記現状における態様の使用については耐え難い不安感を抱いているものであり(なお、教団関係者の前記事件等への関与ないしその刑事責任の有無は、刑事事件においてまだ確定していないものが多いが、それだからといって、右事件等からの連想による本件マンションの居住者の抱く不安感はそれなりに客観的な根拠に基づいていて社会的に広く承認されるものであることを否定することはできず、これを単なるうわさ等による根拠に乏しい不安感として無視することはできない。)、そして、本件マンションの居住者の右不安感は、被告乙山、同丙川らが占有移転禁止の仮処分を守らずに、教団の信者の出入りを従前同様に容認していることが示すように、同被告らないし教団によって解消も軽減もされていないのである。

区分所有法に基づく引渡し請求は、暴力団や暴力団員を対象として認められることが多いですが、決してそのようなケースに限定されるものではありません。

なお、本件は、上記判例のポイント2記載のとおり、オウム真理教に関連する裁判例ですので、あらゆる宗教団体について本裁判例をそのままあてはめることはできませんのでご注意を。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

管理費・修繕積立金16 マンションが転々譲渡された場合の中間取得者は、特定承継人としての責任を負うか(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、マンションが転々譲渡された場合の中間取得者は、特定承継人としての責任を負うか(大阪地判平成11年11月24日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

管理組合は、平成7年3月5日臨時総会において、共用部分の修理工事を組合員の個人負担分を6500万円以内と定めて行うことを決議した。工事請負契約が6180万円で締結されたので、各組合員の負担額は50万2819円となり、支払時期は平成7年4月28日と定められた。

本件マンションの506号室は上記決議当時、Aが所有していたが、平成9年11月19日競売によりBがこれを取得した。Bは平成10年8月3日、506号室の区分所有権をCに売却した。その後、管理組合は、区分所有権の中間取得者であるBに対して、負担金の支払いを求め提訴した。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 Bは、区分所有法8条にいう特定承継人とは区分所有権を現に有する特定承継人に限られると主張するが、法8条につき上記主張のように縮小解釈すべき根拠はいまだ見出し難い
すなわち、管理組合法人が各区分所有者の拠出に係る財産をもって支出した共用部分の修繕費は、1棟の建物全体の資産価値を維持しあるいはその下落を防止する性質を有する支出であって、管理組合法人に対して修繕義務を履行すべき責任を負担しながらその責任を履行しない区分所有者に対しても、その有する区分所有権の価値を維持するために寄与しているものである。
したがって、区分所有権を現に有しない中間取得者といえども、その所有に係る期間、管理組合法人による修繕費の支出による利益を享受しているといえるし、また、換価処分の際には貨幣価値として上記利益が自らに還元されているとみることも可能である。
さらにいうならば、修繕費の支払いをしないうちに当該区分所有権を修繕費投下によって補正された価値をもって処分し得た区分所有者についてみると、その所有期間の長短にかかわらず特定承継人としての責めを何ら負わないという前提をとるとすると、不当な利益を得ることにもなり、その結果、共用部分等の適正な維持管理のために要した債権につき強固な保護を図ろうとした法8条の趣旨は没却されることにもなりかねない

2 なお、法7条によれば、上記債権については債務者の区分所有権および建物に備え付けられた動産の上に先取特権が付されているが、そのことと、上記債権につき責任を負うべき者の人的範囲に関する問題とは性質を異にするものであると考えるのが相当であるから、上記先取特権の制度の存在をもって上記人的範囲を画するのは妥当ではないというべきである。

この論点については、いまだ最高裁の判断が出されていないところですが、近時の下級審における裁判例では、中間取得者についても特定承継人の責任を認める傾向にありますので注意が必要です。

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管理組合運営21 管理組合が区分所有者において区分所有建物を賃貸するに際し、管理規約に基づき求めた承諾を拒絶したことが不法行為に当たるとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合が区分所有者において区分所有建物を賃貸するに際し、管理規約に基づき求めた承諾を拒絶したことが不法行為に当たるとされた事案(東京地判平成4年3月13日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

原告は、自己が所有するマンションの専有部分についてのコンピュータソフト開発会社との間で賃貸借契約を締結したところ、被告が正当な理由がないのに右契約を承認しなかつたために合意解約せざるを得なくなつたと主張して、被告に対し、不法行為を理由として損害賠償を請求した。

【裁判所の判断】

被告は、原告に対し、金513万3870円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 新規約12条1項は、区分所有者が住居部分を事務所に使用する場合には被告の承認を受けなければならない旨規定しているが、被告が右の承認を与えるか否かは、住居部分を事務所に使用しようとする区分所有者に重大な影響を及ぼすのであるから、その判断に当たつては、事務所としての使用を制限することにより全体の区分所有者が受ける利益と、事務所としての使用を制限される一部の区分所有者が受ける不利益とを比較考量して決定すべきである。

2 これを本件についてみると、たしかに、事務所としての使用を無制限に放任した場合は、床の荷重の問題のほか、消防設備あるいは電話設備等の改修工事の要否等、波及する影響は大きく、費用負担の軽減及び居住環境の悪化防止等の観点からも、その制限には一般論として合理性を是認できないわけではない。
しかし、本件においては、マンション分譲時に成立した旧規約の26条に専有部分のうち住居部分は住居又は事務所以外の用に供してはならない旨の定めがあり、本件専有部分の属する3階以上の建物部分についても事務所としての使用が許容されていたと認められるのであるから、区分所有者にとつてその同意なくして専有部分を事務所として使用することが禁止されることは所有権に対する重大な制約となることはいうまでもないところである。
特に、原告は、今回の規約改正の10年以上前から本件専有部分を賃借して事務所としての使用を開始し、2年余り前にはこれを購入し、右規約改正の1か月以上前から事務所用の物件として賃借人を募集し、新規約発効時には賃借人が本件専有部分を現実に事務所として使用していたのであるから、その既得権を奪われることによる原告の不利益は極めて大きいといわざるを得ない。
しかも、賃借人であるAは、コンピューターソフトの開発を業とする会社で、従業員が2、3名という小規模な会社にすぎず、その入居を認めることにより床の荷重の問題が生じたり、あるいは消防設備等を設置することが不可欠となるかは疑問の余地がないではなく、また、本件専有部分を事務所として使用することにより直ちに著しく居住環境が悪化するとも思えないのであつて、事務所としての使用を認めることによる被害が重大なものとはいいがたい
右の双方の利害状況を比較考量すれば、本件の承認拒絶により原告が受ける不利益は専有部分の所有権者である原告にとつて受忍限度を越えるものと認められるから、被告は、本件賃貸借契約を承認する義務を負つていたものと解するのが相当である。
したがつて、被告は、本件賃貸借契約の承認を拒絶することにより、原告の所有権を違法に侵害したものと認められる

上記判例のポイント1の規範はしっかりと理解しておきましょう。

管理組合の承諾が必要とされているからといって、合理的な理由なく承諾を拒絶すると本件のように損害賠償請求をされますので注意が必要です。

もっとも、比較衡量による判断が求められるため、判断は決して容易ではありません。

事前に必ず弁護士に相談することをおすすめいたします。

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管理会社等との紛争12 倒産した管理会社が管理費等の預金口座を管理会社名義で管理していた場合、管理組合は自らの資産であると主張できるか(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、倒産した管理会社が管理費等の預金口座を管理会社名義で管理していた場合、管理組合は自らの資産であると主張できるか(東京高判平成11年8月31日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、倒産した管理会社が管理費等の預金口座を管理会社名義で管理していた場合、管理組合は自らの資産であると主張できるかが争点となった事案である。

原審は、同口座は管理会社に帰属すると判断した。

【裁判所の判断】

同口座は管理組合に帰属する。

【判例のポイント】

1 預金者の認定については、自らの出捐によって、自己の預金とする意思で、銀行に対して、自ら又は使者・代理人を通じて預金契約をした者が、預入行為者が出捐者から交付を受けた金銭を横領し自己の預金とする意図で預金をしたなどの特段の事情がない限り、当該預金の預金者であると解するのが相当である。

 本件各定期預金の原資である管理費等は、管理会社が管理規約及び管理委託契約に基づいて区分所有者から徴収し、保管しているものであって、管理会社の資産ではなく、大部分は各マンションの保守管理、修繕等の費用に充てられるべき金銭である。

3 区分所有者から徴収した管理の費用は、管理を行うべき管理組合に帰属するものである。管理組合法人が設立される以前の管理組合は、権利能力なき社団又は組合の性質を有するから、正確には総有的又は合有的に区分所有者全員に帰属することになる。
したがって、本件各定期預金の出捐者は、それぞれのマンションの区分所有者全員であるというべきである。

4 管理会社は、本件定期預金を自己の預金、資産であるとは考えておらず、管理会社はこれを各マンションの区分所有者ないし管理組合に属するものとして取り扱っていたものである。

5 以上のとおり、本件各定期預金の預金者は、各マンションの区分所有者の団体である管理組合であり、区分所有者全員に総有的ないし合有的に帰属すると認めることができる。

今は昔の事件ですが、考え方の参考になる裁判例です。

この事件以降、マンション管理適正化法が制定され、管理業者に対する法規制がされることとなり、今となっては当たり前の「財産の分別管理義務」が規定されました。

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管理組合運営20 管理組合の店舗部会が専有部分における心療内科クリニックの営業開始を承認せず、区分所有者による専有部分の賃貸を妨げたことが不法行為に当たるとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、用途複合型区分所有建物における店舗部分の区分所有者で組織された店舗部会が専有部分における心療内科クリニックの営業開始を承認せず,区分所有者による専有部分の賃貸を妨げたことが同店舗部会の同区分所有者に対する不法行為に当たるとされた事案(東京地判平成21年9月15日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

原告は、区分所有法2条2項所定の区分所有者である。
被告管理組合は、原告が区分所有権を有する区分所有建物の管理組合であり、被告店舗部会は、被告管理組合の下に、当該区分所有建物のうち店舗等に使用される専有部分(店舗部分)の区分所有者全員で構成される団体である。
原告は、自らが区分所有する専有部分(店舗部分)を心療内科クリニックとして使用させる目的で賃貸することを予定していた。そして、管理組合規約と店舗使用規則(店舗部分の使用及び管理等に関する事項を定める規則)において、店舗部分で営業を開始する場合には、被告店舗部会の部会長による承認を得なければならないと定められていたため、原告から当該専有部分を賃借する予定であった者が被告店舗部会に対し営業開始の承認を求めたところ、被告店舗部会がこれを不承認とした。
そこで、原告は、被告らとの間で、その不承認処分が無効であることの確認を求めるとともに、被告らに対し、不法行為に基づき、営業開始が不承認とされなければ得られたであろう賃料等に相当する確定損害金165万円+平成19年12月2日から本判決確定の日まで1か月33万2000円の割合による損害金の連帯支払を求め、さらに、区分所有権に基づき、原告が上記専有部分を心療内科等のクリニックとして賃貸することを妨害することの禁止を求めている。

【裁判所の判断】

被告店舗部会が平成19年8月3日付けでCに対してした営業開始承認願を承認できない旨の処分の無効確認を求める訴えを却下する。

被告店舗部会は,原告に対し,398万4000円を支払え。

原告のその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 裁判所が被告店舗部会が営業者による営業開始を承認するかどうかの判断は、被告店舗部会の合理的裁量にゆだねられるべきものである。
もっとも、被告店舗部会が営業開始を承認せず、その営業のために店舗部分を使用することを禁止すると、区分所有者等の権利が制約されることになるので、その適否について司法審査が一切及ばないと解するのは妥当でなく、例外的に被告店舗部会の上記判断が違法となる場合があると解すべきである。
そして、裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては、被告店舗部会と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきものではなく、被告店舗部会の裁量権の行使としての処分が、全く事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り、違法であると判断すべきものである(最判昭和29年7月30日、同昭和49年7月19日、同昭和52年12月20日、同平成8年3月8日各参照)。

2 被告店舗部会が本件理由に基づいて本件承認願を承認しなかったことが不法行為として違法かどうかを見ると、心療内科、精神科や神経科に通院する患者が周囲の者に対し不安感を与えたり又は迷惑を掛けたりするような行動を取るとの事実を認めるに足りる証拠はないし、被告店舗部会がこのような事実の裏付けとなり得る資料に基づいて承認しないとの判断をしたことを認めるに足りる的確な証拠もない
被告らは、被告店舗部会の理事の親戚が精神病に罹患し、ショッピングモールで事件を起こしたことがある旨を主張し、これに沿うD証人の証言がある。
しかし、仮に、この事実が認められるとしても、飽くまでも個別具体的な事例にとどまるのであって、これだけでは、一般的に、心療内科、精神科や神経科に通院する患者がこのような行動を取る危険があることを裏付けるには足りないといわなければならない。
そうすると、被告店舗部会は資料又は事実による裏付けを欠く本件理由に依拠して、本件承認願を承認しなかったと認められるので、被告店舗部会は、その裁量権を逸脱し、又は濫用して、本件承認願を承認せず、原告の区分所有権を制約したものといわざるを得ず、このような行為には不法行為としての違法性が認められるというべきである。

3 Cは、平成19年12月ころには、本件専有部分を賃借することを断念する旨を原告に告げていたことが認められる。
当該事実からすると、同月ころには、原告がCに本件専有部分を賃貸する可能性はなくなったといわざるを得ない。このような場合、原告が、ほかの賃借人を探すなどして、損害を回避又は減少させる措置を執ることなく、上記の損害すべての賠償を被告店舗部会に請求することは、条理上認められないといわなければならない(最判平成21年1月19日参照)。
そして、借地借家法26条1項と27条1項が更新拒絶の意思表示又は解約の意思表示がされた時から建物の賃貸借契約の終了まで少なくとも6か月間を要する旨を定めていることを勘案すると、原告は、通常,6か月の間に、本件専有部分について新たな賃借人を見つけることによって、上記措置を執ることができたというべきである。そうすると、Cが本件専有部分を賃借することを断念した時から6か月が経過した後の平成20年7月以降の期間の賃料に相当する損害については、その賠償を請求することはできないといわなければならない。

店舗部会の判断が違法であることについてはほぼ争いのないところだと思います。

むしろ、このような事案における損害額の算定方法(上記判例のポイント3)が参考になりますのでしっかり理解しておきましょう。

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義務違反者に対する措置16 住居部分を無認可託児所として使用することが共同利益背反行為にあたるとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、住居部分を無認可託児所として使用することが共同利益背反行為にあたるとされた事案(東京地判平成18年3月30日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの管理組合である原告が、マンションの1室で託児所を経営する被告Y3及び被告Y4、並びに所有者である被告(引受承継人)Y2に対して、託児所としての使用は専有部分を住居の目的以外に使用することはできないとする管理組合規約に違反し、さらに区分所有者の共同の利益にも反するとして、区分所有法57条1項に基づき、託児所としての使用の差止めを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本来住居目的とされている502号室において本件託児所を営業することは、他の区分所有者に対して一方的に深刻な騒音等の被害を及ぼしながら、被告Y3らは原告からの働きかけに対して真摯に具体的な改善策を提示することもせず、あまつさえサミット乱入事件をはじめ警察官の臨場を招くような事態を引き起こして居住者の不安を招き、近時にはある程度の改善はみられるものの、いまだ十分とはいえないものであり、何よりも被告らの利益のために本件マンションの居住者が一方的な犠牲を強いられて居住用マンションとしての居住環境を損なわれることは相当でないことは明らかであり、さらに、火災等の災害時には生命身体への危険も考えられなくもないのであって、こうした状態をもたらした本件託児所の経営は、区分所有法6条1項に規定する「区分所有者の共同の利益に反する行為」であるというべきである。

2 この点、被告らは、住居目的外使用の事務所の使用状態を把握せず被告らのみに使用差止めを求めることは権利濫用であると主張する。
確かに、本件マンション内では、住居部分において、ギター教室が開設されていたり、郵便受けに会社名や事務所名等を掲げているものもあるところ、ギター教室については不特定多数の人が参集する可能性もあるが、本件託児所のように居住者から苦情が寄せられているわけではなく、また、他の事業所と思われる表示をしている居住者について、原告代表者は把握された限りにおいて事業所として使用しないよう求めたり、これらの中には、すでに廃業していたり、わずかな来訪者しかないものもあるなど、区分所有者の共同の利益に反する行為という観点からすれば、多数の苦情が寄せられて問題視されてきた本件託児所とは比較にならないものであるから、これら事業所として使用していると思われる居住者との比較において、被告らに対する本件請求が権利の濫用であるとは評価できない。

本件においても、一般的な共同利益背反行為の判断基準である被告区分所有者の利益と他の区分所有者の不利益の程度の比較衡量をしています。

上記判例のポイント2記載の権利濫用の抗弁についてもよく問題となりますので注意しましょう。

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管理費・修繕積立金15 管理費の滞納のある区分所有建物を競売により買い受けた者が支払った滞納管理費を元の所有者に求償することの可否(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理費の滞納のある区分所有建物を競売により買い受けた者が支払った滞納管理費を元の所有者に求償することの可否(東京高判平成17年3月30日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

被控訴人は、平成16年1月21日、控訴人所有の本件建物及びその敷地権を競売により買い受け、その所有権を取得したところ、控訴人は、管理祖合に対し、管理費、修繕積立金及び組合費(本件管理費等)を滞納していた。
本件は、被控訴人が、控訴人が滞納していた本件管理費等219万5500円を平成16年5月21日、管理組合に対し代位弁済したと主張して、控訴人に対し、求償金219万5500円+遅延損害金の支払を求めた事案である。
控訴人は、本件管理費等の滞納分については、本件競売事件の物件明細書等にそれが明示されており、競売の最低売却価額からも既に控除されているから、滞納分は被控訴人が負担すべきであると主張して争った。

原審は、被控訴人の請求を全部認容したので、控訴人が控訴した。

【裁判所の判断】

原判決を次のとおり変更する。

控訴人は、被控訴人に対し、219万5500円+遅延損害金を支払え。
*控訴審は、原判決を一部変更しているが、これは遅延損害金の始期を、代位弁済の翌日ではなく、訴状の送達日の翌日としたもの。

【判例のポイント】

1 控訴人は、本件建物等の所有権が被控訴人に移転するまでの間の本件管理費等について支払義務を負っている。ところで、区分所有法8条は、同法7条1項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる旨規定しており、これによれば、被控訴人は、本件管理費等の滞納分について、控訴人の特定承継人として支払義務を負っていることは明らかである。
これは、集合建物を円滑に継持管理するため、他の区分所有者又は管理者が当該区分所有者に対して有する債権の効力を強化する趣旨から、本来の債務者たる当該区分所有者に加えて、特定承継人に対して重畳的な債務引受人としての義務を法定したものであり、債務者たる当該区分所有者の債務とその特定承継人の債務とは不真正連帯債務の関係にあるものと解されるから、真正連帯債務についての民法442条は適用されないが、区分所有法8条の趣旨に照らせば、当該区分所有者と競売による特定承継人相互間の負担関係については、特定承継人の責任は当該区分所有者に比して二次的、補完的なものに過ぎないから、当該区分所有者がこれを全部負担すべきものであり、特定承継人には負担部分はないものと解するのが相当である。したがって、被控訴人は、本件管理費等の滞納分につき、弁済に係る全額を控訴人に対して求償することができることとなる。

2 控訴人は、物件明細書等に本件管理費等の滞納分が明示されていることや最低売却価額における控除の措置がされていること等から滞納分は被控訴人が負担すべきであると主張する。
しかしながら、物件明細書等の競売事件記録の記載は、競売物件の概要等を入札希望者に知らせて、買受人に不測の損害を被らせないように配慮したものに過ぎないから、上記記載を根拠として本件管理費等の滞納分については当然買受人たる被控訴人に支払義務があるものとすることはできない

本件では、滞納分に見合った最低売却価額の減額がなされているという事情があるため、上記判例のポイント2記載の控訴人の主張は理解できなくもないところですが、裁判所の判断は判例のポイント1のとおりです。

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管理費・修繕積立金14 不在区分所有者に住民活動協力金の負担を課す規約変更の有効性(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、不在区分所有者に住民活動協力金の負担を課す規約変更の有効性(最判平成22年1月26日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの管理組合である上告人が、その組合員である亡A(原審口頭弁論終結後に死亡)の相続人である被上告人らに対し、集会決議により変更された規約に基づき、同規約上、自らその専有部分に居住しない組合員が負担すべきものとされた月額2500円の「住民活動協力金」及び遅延損害金の支払を求める事案である。

被上告人らは、上記の規約の変更は、区分所有法31条1項後段にいう「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」に該当し、亡Aの承諾がないから無効であるなどと主張して、上告人の請求を争っている。

原審は、本件規約変更は、法31条1項後段にいう「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすとき」に該当し、亡Aの承諾がないから無効であると判断した。

【裁判所の判断】

原判決を破棄する。
→管理規約変更は有効

【判例のポイント】

1 本件マンションは、規模が大きく、その保守管理や良好な住環境の維持には上告人及びその業務を分掌する各種団体の活動やそれに対する組合員の協力が必要不可欠であるにもかかわらず、本件マンションでは、不在組合員が増加し、総戸数868戸中約170戸ないし180戸が不在組合員の所有する専有部分となり、それらの不在組合員は、上告人の選挙規程上、その役員になることができず、役員になる義務を免れているだけでなく、実際にも、上告人の活動について日常的な労務の提供をするなどの貢献をしない一方で、居住組合員だけが、上告人の役員に就任し、上記の各種団体の活動に参加するなどの貢献をして、不在組合員を含む組合員全員のために本件マンションの保守管理に努め、良好な住環境の維持を図っており、不在組合員は、その利益のみを享受している状況にあったということができる。

2 いわゆるマンションの管理組合を運営するに当たって必要となる業務及びその費用は、本来、その構成員である組合員全員が平等にこれを負担すべきものであって、上記のような状況の下で、上告人が、その業務を分担することが一般的に困難な不在組合員に対し、本件規約変更により一定の金銭的負担を求め、本件マンションにおいて生じている不在組合員と居住組合員との間の上記の不公平を是正しようとしたことには、その必要性と合理性が認められないものではないというべきである。
居住組合員の中にも、上記のような活動に消極的な者や高齢のためにこれに参加することが事実上困難な者もいることはうかがえるのであって、これらの者に対しても何らかの金銭的な負担を求めることについては検討の余地があり得るとしても、不在組合員の所有する専有部分が本件マンションの全体に占める割合が上記のように大きなものになっていること、不在組合員は個別の事情にかかわらず類型的に上告人や上記の各種団体の活動に参加することを期待し得ないことを考慮すると、不在組合員のみを対象として金銭的負担を求めることが合理性を欠くとみるのは相当ではない。
また、平成19年総会における決議により、役員に対する報酬及び必要経費の支払が規約上可能になったものの、上告人の活動は役員のみによって担われているものではなく、不在組合員と居住組合員との間の上記の不公平が、役員に対する報酬の支払によってすべて補てんされるものではないから、そのことを理由として本件規約変更の必要性及び合理性を否定することはできない。
そして、本件規約変更により不在組合員が受ける不利益は、月額2500円の住民活動協力金の支払義務の負担であるところ、住民活動協力金は、全組合員から一律に徴収されている組合費と共に上告人の一般会計に組み入れられており、組合費と住民活動協力金とを合計した不在組合員の金銭的負担は、居住組合員が負担する組合費が月額1万7500円であるのに対し、その約15%増しの月額2万円にすぎない

3 上記のような本件規約変更の必要性及び合理性と不在組合員が受ける不利益の程度を比較衡量し、加えて、上記不利益を受ける多数の不在組合員のうち、現在、住民活動協力金の趣旨に反対してその支払を拒んでいるのは、不在組合員が所有する専有部分約180戸のうち12戸を所有する5名の不在組合員にすぎないことも考慮すれば、本件規約変更は、住民活動協力金の額も含め、不在組合員において受忍すべき限度を超えるとまではいうことができず、本件規約変更は、法66条、31条1項後段にいう「一部の団地建物所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」に該当しないというべきである。

重要な最高裁判決です。

比較衡量による判断ですので、必要性、合理性、金額の妥当性、合意形成の経緯等の事情により結論は変わります。

したがって、同判決の結論部分のみを都合よく理解するのは危険です。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

騒音問題9 上階の居住者によるフローリング騒音につき、慰謝料請求は認容されたが差止請求は棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、上階の居住者によるフローリング騒音につき、慰謝料請求は認容されたが差止請求は棄却された事案(東京地八王子支判平成8年7月30日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告らは本件マンションの専有部分の所有者であるが、原告ら建物の階上である被告建物の所有者である被告は平成5年11月上旬ころ、何の合理的理由・特別の事情もなく、かつ、原告らの承認を得ること及び本件マンションの管理組合理事会への届け出なく、即ち、同管理組合規約・使用細則に違反して、被告建物の絨毯張りの床につき、「トップ・イレブン」なる非防音タイプの一階用床材を使用してフローリング(板張り)への張り替えを敷設したところ、本件フローリング敷設により、被告建物に発生する歩く音・椅子を引く音等の生活音全てが断続的に、階下の原告ら建物内に響き聞こえてくるようになり、現在(平成8年6月)に至るまで継続して、被告建物の階下の原告ら建物に居住して本件マンションにおける静謐な環境・生活を享受していた原告らに対し、受忍限度を超える日常生活上の騒音被害・生活妨害等をもたらし、原告らに著しい肉体的・精神的苦痛を与えるに至ったから、前記管理組合規約・使用細則並びに区分所有法6条1項・57条ないし人格権侵害に基づく差止め(妨害除去・妨害予防)請求としての原状回復である復旧工事の施工及び不法行為に基づく慰謝料各300万円の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

被告は原告らに対し、各金75万円+遅延損害金を支払え。

原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 本件マンションのような集合住宅における騒音被害・生活妨害については、加害行為の有用性、妨害予防の簡便性、被害の程度及びその存続期間、その他の双方の主観的及び客観的な諸般の事情に鑑み、平均人の通常の感覚ないし感受性を基準として判断して、一定の限度までの騒音被害・生活妨害は、このような集合住宅における社会生活上止むを得ないものとして受忍すべきである一方、右の受忍限度を超える騒音被害・生活妨害は、不法行為を構成するものと解せられる。
・・・本件フローリング敷設による右騒音被害・生活妨害は社会生活上の受忍限度を超え、違法なものとして不法行為を構成すると言うことができる。

2 騒音被害・生活妨害による人格権または人格的利益の侵害ないし侵害の恐れに基づく妨害排除・予防請求としての差止め請求が認められるか否かは、侵害行為を差止める(妨害排除・予防する)ことによって生ずる加害者側の不利益と差止めを認めないことによって生ずる被害者側の不利益とを、被侵害利益の性質・程度と侵害行為の態様・性質・程度との相関関係から比較衡量して判断されるが、前述したように、被告における本件フローリングによる前記騒音被害・生活妨害は受忍限度を超えたものであり、したがって、右侵害行為(被告における本件フローリングによる前記騒音被害・生活妨害行為)の差止めを認めないことによって生ずる被害者側たる原告らの不利益は決して小さくないと言うべきであるが、本件フローリングの有用性は前記認定のとおりであり、本件フローリングに対する差止めないし差止めによる原状回復については、被告に対し相応の費用と損害をもたらすことは明らかであり、しかも、若干の問題はあるものの原告ら及び被告に対し本件勧告が有効になされ、原告らもこれを一旦は受け入れた経緯に鑑みると、なおのこと、被告における本件フローリングによる前記騒音被害・生活妨害行為は直ちに、右差止め請求を是認する程の違法性があると言うことは困難と言わざるを得ない

本件は、騒音の発生が不法行為に該当するとし、合計150万円の慰謝料請求が認められた一方で、差止請求については、上記判例のポイント2のとおり、棄却されました。

比較衡量による判断ですので事案によって結論は異なりますが、損害賠償請求及び差止請求についての考え方を理解しておきましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

日照権・眺望権4 建築前のマンション売買交渉において、売主が居室からの眺望についてした説明が建築完成後の状況と異なるときは、買主は契約を解除して損害賠償を請求することができるとした事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、建築前のマンション売買交渉において、売主が居室からの眺望についてした説明が建築完成後の状況と異なるときは、買主は契約を解除して損害賠償を請求することができるとした事案(大阪高判平成11年9月17日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、被告販売業者が販売する分譲マンションにつき、被告販売代理人から説明を受けて同マンション完成前にその一居室を購入した原告が、パンフレットでは高い静粛性を売りにしているのに隣接ビルの騒音は極めて大きく、騒音について告知もしなかったとして、被告販売業者に対し、マンション売買契約を解除し、手付金の返還を求めるとともに、被告販売代理人に対し、交渉当初から眺望を重視する旨伝えたにもかかわらず、隣接ビルにより眺望を遮られることなどの説明をしなかったとして、契約解除によって生じた損害の賠償を求めた事案

なお、原審は、原告の請求を棄却した。

【裁判所の判断】

原判決を次のとおり変更する。
→被控訴人Z社は、控訴人に対し、558万4503円+遅延損害金を支払え。
→被控訴人Y社は、控訴人に対し、558万4503円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 未だ完成前のマンションの販売においては、購入希望者は現物を見ることができないから、売主は購入希望者に対し、その売買予定物の状況について、その実物を見聞できたのと同程度にまで説明する義務があるというべきである。
 そして、売主が説明したところが、その後に完成したマンションの状況と一致せず、かつそのような状況があったとすれば、買主において契約を締結しなかったと認められる場合には、買主はマンションの売買契約を解除することもでき、この場合には売主において、買主が契約が有効であると信頼したことによる損害の賠償をすべき義務があると解すべきである。

2 これを本件についてみるに、被控訴人ら作成のパンフレット等では、本件マンションの本件居室からは二条城の眺望・景観が広がると説明し、本件居室の西側には窓があるとされており、二条城は、本件マンションの西側に存するのであるから、西側窓からも二条城の景観が広がると説明したことになる。また、販売代理人である被控訴人Y社の社員Aは、控訴人の質問に対し、隣接ビルは五階建であって六階にある本件居室の西側窓からは視界が通っていると発言しているのである。
ところが、現実に建築された結果では、本件居室の南側バルコニーからはやや斜めに二条城を望むことができるが、西側窓の正面に隣接ビルのクーリングタワーがあるため、窓に接近しないと二条城の緑がほとんど見えない状態であったのである。この状態は、説明の「二条城の眺望・景観が広がる」状態とは明らかに異なるものである。

3 控訴人は本件居室を購入するに当たり、被控訴人Y社の担当者に対して、視界を遮るものがないかどうかについて、何度も質問しており、被控訴人Y社においても、控訴人が二条城への眺望を重視し、本件居室を購入する動機としていることを認識し得たのであるから、被控訴人Y社は、未完成建物を販売する者として、本件居室のバルコニー、窓等からの視界についてその視界を遮るものがあるか、ないかについて調査、確認して正確な情報を提供すべき義務があったといわざるを得ない。
控訴人としては、当初から隣接ビルの屋上にクーリングタワーが存在し、それが本件居室の洋室4.6畳の西側窓のほぼ正面の位置に見えるとの説明を受けるか、少なくともその可能性について告知説明があれば、その購入をしなかったものと認められる。
もっとも、本件居室は、控訴人の解除後に、同一価格で購入した者があり、そのときには本件マンションは既に完成していたからその購入者は西側窓からの眺望が充分とはいえないことを知って契約したものと推認される。
しかし、マンションの居室の売買においては、眺望は重視される一つの要素であり、それであるからこそ被控訴人らも、パンフレットでそのことを強調したものである。
そのうえ、自ら使用する物の売買契約においては、購入者にとって目的物が購入者の主観的な好み、必要などに応じているかが極めて重要な点である(このことは、衣類売買における衣類の色を考えれば、明らかである。)。本件において、控訴人は、被控訴人らのパンフレット等にも記載されていた二条城の景観を特に好み、重視し、被控訴人Y社の担当者Aに対して、その点の質問をしていたのである。
そうすると、控訴人は本件売買契約を解除でき、被控訴人Z社は既に受領した手付金の返還に応じる義務がある。

原審は、同種裁判例でよく目にする「市街地における住居の眺望は、その性質上、長期的・独占的に享受しうるものとはいい難く、隣接建物により眺望が阻害されることは、特段の事情がない限り受忍せざるを得ない」という理由により請求を棄却しました。

これに対して、控訴審では、上記判例のポイント1のように判断し、真逆の結論となりました。

なお、本件は、上告受理申立てがされましたが、最高裁は、不受理の決定をしました(最判平成12年9月26日)。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。