おはようございます。
今日は、駐車場専用使用権の使用料を近隣相場まで5年間かけて段階的に増額する総会決議を有効とした事案(東京地判平成17年11月4日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、マンションの管理組合である原告が、マンションの建物内及び敷地内の駐車場及び倉庫について専用使用権を有する被告らに対し、組合の総会決議においてした値上げ決議の有効性の確認を求めると共に、値上げが実施された平成16年9月分の未払の値上げ分の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
被告Y2及び被告Y3は原告に対し、各自2000円を支払え。
被告Y4は原告に対し、1630円を支払え。
被告Y5は原告に対し、1630円を支払え。
被告らと原告との間で、平成16年7月25日開催の原告の通常総会第5号議案の、駐車場・倉庫専用使用料値上げを内容とする次の決議が有効であることを確認する。
(1) 同日現在4000円の屋内駐車場使用料は平成16年9月分から6000円、平成17年7月分から1万円、平成18年7月分から1万6000円、平成19年7月分から2万6000円、平成20年7月分から4万円とする。
(2) 同日現在2870円の屋外駐車場使用料は平成16年9月分から4500円、平成17年7月分から8000円、平成18年7月分から1万3000円、平成19年7月分から2万1000円、平成20年7月分から3万6000円とする。
(3) 同日現在400円の倉庫使用料は平成16年9月から500円、平成17年7月分から700円、平成18年7月分から900円、平成19年7月分から1万1000円、平成20年7月分から1500円とする。
【判例のポイント】
1 本件決議の内容である専用使用権の値上げについては、区分所有者全員の共有に属する本件マンションの建物部分及び敷地の使用及び管理に属する事柄であるから、団体的規制に服すべきものであり、総会の決議をもって決定できるものと解される。
2 被告らは、本件専用使用権の対価を払ってこれを取得しているのであるから、被告らに近隣相場と同額の使用料を負担させることは、被告らの正当な権利を奪うことになる旨主張している。
しかし、本件専用使用権は、昭和46年に駐車場については、35万円ないし50万円でAとの契約により定められたものである。当時としてはマンション本体価格の1割程度に相当する高額な権利金であったと認められるが、本件決議がなされるまでに30年以上を経過しており、この間、専用使用権者は、近隣相場より相当低額に据え置かれた専用使用料を支払って駐車場等の使用を継続してきたのであるから、権利金を支払ったことによる効用は既に十分に還元されているとみるべきである。
そして、権利金を支払った故に近隣の駐車場使用料金より低額の使用料設定を今後も継続していくことは、他の区分所有者との間で不公平を増大させることとなると解される。
3 そうすると、本件通常総会において、近隣相場に準ずる金額まで段階的に使用料を値上げする決議をしたことは社会通念上相当なものとして許されるというべきである。
裁判所は、上記判例のポイント2記載のとおり、30年以上にわたり近隣相場より相当低額に据え置かれた専用使用料を支払って駐車場等の使用を継続してきたという事情を考慮し、使用料の段階的増額を認めました。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。