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駐車場問題17 管理組合法人が、マンションの敷地に権限なくバイクを駐車していた区分所有建物の賃借人に対し、バイクの撤去等を求める訴訟を提起した際に本件訴えについての弁護士費用相当額の請求ができるか(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合法人が、マンションの敷地に権限なくバイクを駐車していた区分所有建物の賃借人に対し、バイクの撤去等を求める訴訟を提起した際に本件訴えについての弁護士費用相当額の請求ができるか(東京地判令和4年1月21日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告が、自身の所有地である本件土地につき、被告が本件バイクを駐車していた旨主張し、被告に対し、下記(3)、(4)の各請求をした事案である。
なお、原告は、本件訴え提起当初には下記(1)、(2)の請求もしていたが、これらの部分は取り下げられた。
(1)本件土地の所有権に基づく返還請求についての管理権の行使(区分所有者全員のため、区分所有法47条1項及び後記規約67条に基づき原告となる趣旨と解される。)として、本件バイクを撤去して本件土地を明け渡すことを求めた(ただし上記のとおり取下げ済み)。
(2)上記同様、妨害排除請求権についての管理権行使として、本件土地上に本件バイクを駐車させ、又は第三者をして駐車させないことを求めた(ただし上記のとおり取下げ済み)。
(3)不法行為に基づく損害賠償請求(上記同様、区分所有者全員のため原告となる趣旨と解される。)として、本件訴えについての弁護士費用相当額である33万円の支払いを求めた(ただし、規約67条4項との関係については後に説示する。)。
(4)本件バイクを駐車する態様による本件土地の不法占拠につき、不法行為に基づく損害賠償請求又は不当利得返還請求(上記(3)と同様である。)として、本件土地の使用料相当額である前記請求2記載の損害賠償金又は利得金の支払いを求めた。

【裁判所の判断】

被告は、原告に対し、18万8627円を支払え。

【判例のポイント】

1 争点(1)(被告に対する弁護士費用相当額の請求が認められるか否か)について
上記争点に関して区分所有法の規定を検討すると、同法46条2項は、「占有者は、建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき、区分所有者が規約又は集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う。」と定めており、その趣旨は以下のようなものと解される。
すなわち、規約及び集会の決議は区分所有者相互間の事項を定めるもので、区分所有者間の団体のルールであり、本来は区分所有者以外の者である賃借人等の占有者を直接拘束するものではないと解される。
しかし、占有者は、共同生活の面からみれば区分所有関係のいわば準構成員とも言うべき立場にあり、円満な区分所有関係を確保するためには、占有者も上記のようなルールを守るよう義務付ける必要がある。
そこで、建物や敷地等の使用方法に関する限り、占有者は、賃貸人である区分所有者のみならず、区分所有者全体に対しても上記のようなルールを守る義務を負うよう定められたものと解される。また、使用方法以外の事項、例えば管理費の支払いといった点については、仮に規約や集会の決議により定められた場合であっても、占有者に対しては効力を有しないと解される。

2 原告は、本件請求(3)を不法行為に基づく損害賠償請求としているが、その具体的主張内容に照らしても、本件管理規約67条4項が被告に対して効力を有することを前提とし、同条項に基づく請求・主張をする趣旨と解するほかない。
そして、同条項の内容は、本件マンションの建物又は敷地等の使用方法そのものを定めたものではなく、管理組合法人である原告につき生じた費用の一種である弁護士費用等について、その請求可能額を定めたものである。
そうすると、前記の区分所有法46条2項の規定に当てはまるものではなく、むしろ管理費の負担方法に関する性質のものと解さざるを得ない(関連して、上記の弁護士費用等に相当する収納金は、通常の管理に要する費用に充当する旨定められているところである(本件管理規約27条、67条5項)。)。
そうすると、本件管理規約67条4項は、区分所有法46条2項に照らし、被告に対しては効力を有しないと言うべきである。
よって、原告の上記主張は前提を欠くと言わざるを得ない(このように解することによって、占有者に対する訴え提起のための弁護士費用等の回収につき支障が生じ得るとしても、上記の区分所有法の規定に照らせば、基本的には規約に拘束される区分所有者との間で解決が図られるべきものと解される。)。

3 なお、原告の請求・主張の趣旨は前記のとおりと解されるところであるが、念のため検討すると、管理組合法人と占有者との間で弁護士費用を含む損害賠償等について個別の合意が成立した場合や、具体的事実関係に応じて特に弁護士費用相当額の損害につき故意・過失等の不法行為の要件を満たす場合も、想定し得ないではないものと解される。
そして、本件においては、①被告と本件区分所有者との間の賃貸借契約において「本物件について定められた細則等がある場合、これを遵守」する旨が定められていること(7条)、②本件管理規約18条には、区分所有者が賃借人に規約等の定める事項を遵守させ、賃借人にはその旨の誓約書を原告に提出させなければならないとされていることといった点は認められる。
しかしながら、これらの規約及び契約の条項も、前記の区分所有法46条2項の規定を受けたものであって、基本的に建物等の使用方法についての規定と解される。加えて、本件記録を検討しても、被告が原告に対して上記誓約書を実際に提出した形跡は見当たらず、また被告が本件管理規約67条4項の定める弁護士費用等の負担について具体的に認識した上で承諾したような形跡も見当たらない。
そうすると、上記のような損害賠償等についての個別の合意や、特に不法行為の要件を満たしていると言うべき事実関係についても、本件では認められないと言うほかない。

非常に重要な裁判例です。

賃借人(占有者)に対する訴訟提起をする場合に、管理規約に基づき、弁護士費用相当額を請求することができるかについて、区分所有法の規定からの解釈を示しています。

勘違いしやすいところですのでしっかり理解しておきましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

駐車場問題16 駐車場の湿度を常時70%以下とする義務があるにもかかわらず、湿度90%の状態にすることにより車両に大量のカビを発生させたことを理由とする管理組合に対する損害賠償請求が棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、駐車場の湿度を常時70%以下とする義務があるにもかかわらず、湿度90%の状態にすることにより車両に大量のカビを発生させたことを理由とする管理組合に対する損害賠償請求が棄却された事案(東京地判令和4年2月16日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、①被告管理組合との間で本件車両について駐車場契約を締結した原告X1が、被告管理組合に対し、本件駐車場の相対湿度を常時70%以下とする義務があるにもかかわらず、湿度90%で、本件車両の仮置き場の鉄板の下に水が溜まっている状態にして駐車場の管理を怠ったため本件車両に大量のカビを発生させたと主張して、債務不履行に基づく損害賠償請求により、修理費用、車両保管費用、駐車場料金、弁護士費用の損害合計231万2392円+遅延損害金の支払を、
②本件車両の所有者である原告X2が、被告らに対し、上記義務を怠ったことが不法行為に当たると主張して、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)により、修理費用、車両保管費用、弁護士費用の損害合計225万4876円+遅延損害金の連帯支払を求めるとともに、
③原告らが被告らに対し、車両保管費用(日額3300円)を将来に渡り請求する必要があると主張して、前記②と同じ不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)により、本件提訴日の翌日である令和2年3月24日から本件車両の修理が終了してその保管が終了するまで日額3300円の割合による車両保管費用の連帯支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件駐車場契約の法的性質が民法上の賃貸借契約であることは当事者間に争いがないところ、賃貸人は、契約内容に従った使用収益に適した状態において目的物を賃借人に引き渡す義務だけでなく、引渡し後も、かかる使用収益をさせることに努めるべき義務をも負担するものと解される(民法601条参照)。
そうすると、本件駐車場内の駐車車両にカビが生えるような湿度の状態を継続しこれを放置することは、かかる賃貸人の義務に違反する余地があり、原告らの主張はかかる趣旨を含むものと善解し得る。

2 本件駐車場は地下2階に位置し、東京都における平均湿度(外気)は令和元年6月が81%、同年7月が89%で、令和2年8月の本件駐車場内の湿度が午後5時から6時の間で72%から85%であったことからすると、令和元年6月から同年7月頃の本件駐車場内の湿度は梅雨時のため元々高めであったものと推察される。
しかしながら、・・・本件車両と同一区画に停めていた原告X2所有の他の3台の車両やその他の契約者車両(本件駐車場全体で100台前後の車両があった)にカビが発生していないこと、本来、車両の維持管理は所有者が行うべきことであり、特に本件駐車場は地下2階に位置し、梅雨時は元々湿度が高くなるのであるから、まずは原告X2が定期的に車両を外気にさらすなどしてその維持管理に努めるべきことを併せ考慮すると、被告管理組合がカビの生えるような高湿度の状態を放置し、本件駐車場について使用収益に適した状態で原告らに使用収益させることに努めるべき義務を怠ったとまではいえない。

3 本件駐車場内に停めていた車両のうちカビが発生したのは本件車両のみであったことに加えて、前記前提事実及び認定事実によれば、本件車両が平成9年登録の中古車両で、長期間の使用によりハンドル等の手が触れる部分に手垢や油脂等が付着していたとしても何ら不思議ではないこと、原告X2は、平成31年1月25日以降、車検切れのため本件車両を外に出して運転することができず、本件車両を外気にさらしていなかったことが認められる。
そして、原告X2が、令和元年8月2日、アルコールで一旦拭き取ったカビが同月14日に再度生えてきたことからすると、カビの胞子等がハンドルの奥まで入り込んでいたことがうかがわれ、更に、ハンドルの写真について、カビが見えないところから写真の状態になるまで半年以上を要する可能性が指摘されている。
これらの事情を総合すると、本件カビの発生は、本件駐車場内の湿度が本件工事の影響により一時上昇したことが一因となった可能性はあるものの、そもそも原告らによる本件車両の維持管理方法に問題があったというべきであり、本件工事が開始された令和元年6月10日よりも前から又はこれと同じ頃から本件工事とは無関係に本件カビの発生が始まっており、それが梅雨時で目に見える状態にまで増殖した可能性が高いというべきである。
そうすると、仮に被告管理組合に前記義務違反があったとしても、本件工事以前から又はこれと無関係に本件カビが発生していたことが否定できない以上、義務違反と本件カビの発生との間に相当因果関係があるとは認められない

管理組合の善管注意義務違反の有無という観点と相当因果関係の有無という観点の両方からアプローチしています。

特に相当因果関係に関する解釈の展開は、とても参考になるので確認しておきましょう。

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駐車場問題15 総会決議を経ずに駐車場に設置された防犯カメラの撤去が認められた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、総会決議を経ずに駐車場に設置された防犯カメラの撤去が認められた事案(東京地判平成28年12月13日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの区分所有者全員で組織される権利能力なき社団である原告が、区分所有者の一人である被告に対し、①本件駐車場の使用契約は終了した(主位的に管理規約及び駐車場使用細則違反による解除により、予備的に期間満了により、更に予備的に解約申入れにより)として、使用契約の終了に基づき、本件駐車場の明渡しを求め、また、②主位的に駐車場使用細則等に基づく原状回復請求として、予備的に区分所有法57条1項に基づく行為停止等請求として、防犯カメラ設備及び同防犯カメラの配線設備の撤去を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本件設備の設置は、本件駐車場等の共用部分である壁部分及び天井部分に、防犯カメラという他の区分所有者のプライバシーを侵害し得る装置を固定的に設置することであり、これは、有体物の設置という物理的な面でみても、防犯カメラという装置の機能的な面でみても、共用部分に対する「通常の用法」(管理規約13条)とはいえず、共用部分の変更又は管理というべきである。
そうすると、かかる行為は、「管理組合の業務に関する重要事項」に該当するので、総会決議が必要であると解される(管理規約48条16号、管理規約44条13号)。
このことは、「共用部分の変更」や「共用部分の管理に関する事項」は総会の決議で決する旨を定めた法(17条1項及び18条1項)の趣旨にも合致する。
これに対し、被告は、駐車場の運営、使用に関することであればあらゆる事項に総会決議が必要というのは不合理である旨主張するが、共用部分に対する通常の用法とは異なる用法について総会決議を求めても、「あらゆる事項」について総会決議を求めることにはならず、不合理とはいえない。
また、理事長や理事会の決議に一定の業務遂行権限があるとしても、それは、上記のような総会の決議事項について総会決議なしに遂行できることまでも意味するものではない。
なお、仮にC元理事長を含む理事がいずれも総会決議が必要とは認識していなかったとしても、かかることから被告に本件設備を設置、保持する権限が生じるわけではない

共用部分に防犯カメラを設置するは、共用部分の変更又は管理に該当するため、理事会ではなく総会決議が必要となります。

仮に理事のみなさんが総会決議が必要であると認識していなかったとしても、当然に防犯カメラの設置が許容されるものではないと判断されています。

実務上は基本的なことですので、手続きを間違えないように気を付けましょう。

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駐車場問題14 区分所有者である法人の代表者が駐車場を不法占有したことが共同利益背反行為にあたるとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有者である法人の代表者が駐車場を不法占有したことが共同利益背反行為にあたるとされた事案(東京地判平成29年10月19日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、いわゆる分譲マンション管理組合法人である原告が、区分所有者である被告会社及び区分所有法6条3項所定の占有者である被告Y1(被告会社の代表者)に対し、被告らが上記マンションの共用部分に設置された本件駐車場を不法に占有していることが「区分所有者の共同の利益に反する行為」(同条1項)に当たるなどと主張して、(1) 区分所有法57条に基づき本件駐車場の明渡しを求めるとともに、
(2) 不法行為に基づき、①平成28年5月1日から同年11月30日までの間の本件駐車場の使用料相当損害金合計17万5000円+遅延損害金並びに②同月1日から本件駐車場の明渡し済みまで1か月当たり2万5000円の割合による使用料相当損害金の連帯支払を求める(区分所有法47条6項後段及び8項参照)事案である。

【裁判所の判断】

1 被告らは、原告に対し、別紙物件目録記載の駐車場を明け渡せ。

 被告らは、原告に対し、連帯して17万5000円+遅延損害金を支払え。

 被告らは、原告に対し、連帯して平成28年12月1日から1項の駐車場の明渡し済みまで1か月当たり2万5000円の割合による金員を支払え。

【判例のポイント】

1 本件規約15条4項、6項及び7項の定めの文言及び構造に加えて、法人がマンションの区分所有者となり得ることは一般常識の範疇に属することであって、本件規約の定めにおいて法人が本件マンションの区分所有者となることが想定されていないなどとは解し難いというべきこと(このことは、本件規約を受けて定められた本件使用細則に法人が区分所有者である場合の駐車場の使用関係に関する定めが置かれていること〔本件規約18条、本件使用細則1条1項からも明らかというべきである。)に照らすと、本件規約15条4項、6項及び7条は、駐車場を使用する区分所有者が、その所有する専有部分を他の区分所有者又は第三者に譲渡又は貸与した場合について、その区分所有者の駐車場使用契約は原則として効力を失うものとする一方、専有部分の譲渡又は貸与の相手方が本件マンションに居住している親族であり、かつ、駐車場使用料に未納金がないときを唯一の例外として、従前の駐車場使用契約の承継を認める趣旨の定めであると解するのが相当である。これと異なる被告らの主張は、本件規約の解釈を超えたいわば制度論を述べるものというほかないものであって、採用することができない。
そうすると、本件において、被告らが原告とb社との間における本件駐車場の駐車場使用契約を承継したものということはできない。

2 区分所有者又は占有者による行為が区分所有法6条1項にいう「区分所有者の共同の利益に反する行為」に当たるか否かは、当該行為の必要性の程度、これによって他の区分所有者が被る不利益の態様、程度等の諸般の事情を比較考量して決すべきものと解されるところ、本件マンションの区分所有者である被告会社及び占有者である被告Y1が本件駐車場を含む対象物件(本件規約4条参照)の使用方法につき本件規約及び本件使用細則を遵守すべき義務を負っていること(区分所有法46条、本件規約3条及び5条2項)に照らせば、上記の比較考量に当たり、本件規約及び本件使用細則に違反する行為である本件駐車場の占有によって被告らが得る利益は、被告らに本件規約及び本件使用細則を遵守させることによる他の区分所有者らの利益に劣後することが明らかというべきであって、被告らによる本件駐車場の占有は、他の区分所有者らに被告らによる本件規約及び本件使用細則違反を受忍させることを正当化するに足りる特段の事情のない限り、「区分所有者の共同の利益に反する行為」(区分所有法6条1項)に当たるものというべきである。

本件使用細則1条1項は、駐車場の使用者は、本件マンションに居住する区分所有者及び本件マンションに居住するその親族に限るものとするが、区分所有者が法人の場合の駐車場の使用者は、本件マンションに居住する法人の役職員又はその同居親族とする旨を定めています。

裁判所は、この規定をそのまま適用しています。

区分所有建物においては、規約や使用細則の規定内容が重視・尊重され、安易な拡大解釈はされません。

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駐車場問題13 駐車場の専用使用料支払請求権は管理組合と各区分所有者のどちらに帰属するか(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、駐車場の専用使用料支払請求権は管理組合と各区分所有者のどちらに帰属するか(東京地判令和3年10月7日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの区分所有者である原告が、他の区分所有者である被告Mの同マンションの駐車場の専用使用料支払義務について、平成30年3月末日までに発生した専用使用料は請求しない旨決議した被告管理組合の定期総会決議はマンションの全区分所有者の同意を得ていないから無効である旨主張して、①被告管理組合に対し、原告と被告管理組合との間において、本件決議が無効であることの確認を求める(以下「第1請求」という。)とともに、
②被告らに対し、被告Mが被告管理組合に対して上記駐車場の専用使用料合計1億9153万1537円の支払義務を負っていることの確認を求め(以下「第2請求」という。)、また、上記専用使用料支払請求権は原告にもマンションの共有持分割合に応じて分割して帰属している旨主張して、
③被告Mに対し、上記専用使用料のうち原告の共有持分割合に応じた額である71万4412円+遅延損害金の支払を求める(以下「第3請求」という。)事案である。

【裁判所の判断】

1 原告の被告Mが被告管理組合に対して金銭支払義務を負っていることの確認請求に係る訴えを却下する。

 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 区分所有建物において共用部分を第三者又は特定の区分所有者に賃貸する場合、「共用部分の管理に関する事項」として集会の決議又は規約の定めを得た上(法18条1項、2項)、当該集会の決議又は規約の定めに基づき、管理組合等の区分所有者の団体が当該第三者又は特定の区分所有者との間で共用部分の賃貸借契約を締結する。
本件においても、共用部分である本件駐車場を被告Mに賃貸するに際し、本件規約によって賃料の額や支払期限等が定められた上、被告管理組合と被告Mとの間で賃貸借契約(自動車駐車契約)が締結されている(本件規約15条1項3号、4号、削除前の23条5項、同25条1項ないし4項)。
そして、同契約に基づいて収受した専用使用料については、本件規約により、共用部分の補修・修繕費に充てるために被告管理組合が積み立てるものとされている(本件規約15条1項柱書)。
以上のとおり、本件においては本件規約の定めに従って被告管理組合が被告Mとの間で賃貸借契約(自動車駐車契約)を締結しており、それによって得た専用使用料については本件規約によって共用部分の補修・修繕費に充てるために被告管理組合が積み立てるものとされていたのであり、このような事情に照らすと、本件専用使用料支払請求権は本件規約に従って被告管理組合がその管理を行うべき債権であるというべきであり、その帰属については、その管理を被告管理組合が行うべきものである以上、本件マンションの各区分所有者に分割して帰属するものではなく、区分所有者全員に総有的に帰属するものと解するのが相当である。

2 
これに対し、原告は、平成27年判決を援用し、本件専用使用料支払請求権は原告を含む本件マンションの各区分所有者に分割して帰属する旨主張する。
しかし、平成27年判決は、「一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た賃料のうち各区分所有者の持分割合に相当する部分につき生ずる不当利得返還請求権は各区分所有者に帰属する」旨判示したものであり、管理組合が第三者又は特定の区分所有者に対して共用部分を賃貸して得た賃料の帰属について判断を示したものではなく、本件とは事案を異にする(なお、平成27年判決の判例解説においても、「共用部分等を第三者に賃貸する場合、本来であれば、共用部分等の管理に関する事項として集会で決議するか規約で定めるかしなければならず、この集会の決議又は規約の定めに基づき、区分所有者の団体が…、第三者との間で共用部分等の賃貸借契約を締結し…、これによって生ずる賃料債権は、区分所有者全員に団体的に(合有的又は総有的に)帰属する」ものとされている(最高裁判所判例解説平成27年度民事篇(下)425頁注14参照)。)。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。

基本的なことですのでしっかり押さえておきましょう。

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駐車場問題12 バイクの放置につき弁護士費用と土地の使用料相当損害金の請求が認められた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、バイクの放置につき弁護士費用と土地の使用料相当損害金の請求が認められた事案(東京地判令和3年11月24日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

マンション管理組合法人であり、マンションの共有部分として土地を所有する原告が、同土地上に無断で自動二輪車を長期間置き続け、撤去の求めにも応じなかった被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、明渡しを求めるための被告との交渉及び本訴訟の提起・追行を弁護士に依頼することを余儀なくされたことによる弁護士費用相当額33万円+遅延損害金の支払を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償請求又は不当利得返還請求として、同土地明渡日である同年3月27日までの同土地の使用料相当損害金1か月当たり8600円(確定金額は14か月分の12万0400円)の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 被告は、原告に対し、33万円+遅延損害金を支払え。

 被告は、原告に対し、12万0400円を支払え。

【判例のポイント】

1 本件訴訟委任契約に基づく弁護士費用33万円については、本件管理規約67条4項の「違約金としてのすべての弁護士費用」に当たり、請求の相手方である被告に請求することができるものと解すべきである(同67条1項、3項1号、2号)。
この点、被告は、被告の応訴態度や本件事案の性質から、上記金額が高額にすぎるなどと主張するが、本件訴訟委任契約にあるとおり、33万円の内訳は着手金20万円、報酬金10万円に消費税を加算した金額であり、いずれも不合理に高額であるとはいえないから、理由がない。

2 本件土地の近隣のバイク駐車場の標準的な使用料が1台当たり月額8600円であると認められ、その他これを覆すに足りる証拠はないから、同金額をもって本件バイクの不法駐輪に係る1月当たりの使用料相当損害金であると認める。
この点、被告は、原告が本件土地の使用収益を認めていないのに、使用料相当損害金が発生するのは背理であるなどと述べるが、独自の見解であり、採用できない。
また、原告が以前は駐輪位置を指定するなどしていたから、不法駐輪が美観を損ねるという理由は当てはまらないなどとも指摘するが、理由がない。

判例のポイント1は、裁判例によってはもう少し高額でも認められる場合があります。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

駐車場問題11 駐車場における転倒事故につき管理組合の安全配慮義務違反が認められた上で原告の過失割合が75%とされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、駐車場における転倒事故につき管理組合の安全配慮義務違反が認められた上で原告の過失割合が75%とされた事案(仙台地判令和4年1月25日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、被告管理組合の設置・管理に係る駐車場において生じた原告の転倒事故につき、原告が、被告管理組合に対し、債務不履行又は不法行為若しくは民法717条1項(工作物責任)による損害賠償請求権に基づき、治療費等19万1376円、休業損害15万円、慰謝料200万円、弁護士費用23万4000円の小計257万5376円の支払を求めるとともに、被告保険会社に対し、直接請求を認める保険約款又は被告管理組合の被告保険会社に対する被告管理組合・被告保険会社間の保険契約による保険金請求権の代位行使に基づき、被告管理組合に対する判決が確定したときに、被告管理組合と同じ支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

被告管理組合は、原告に対し、52万8646円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 被告管理組合が負っていた安全配慮義務の具体的内容は、駐車場使用者に対し、通常の靴に装着可能な滑り止めや融雪剤等を定期的に周知した上で提供する、抽象的に注意を周知するのではなく転倒事故が起こりやすい時間帯・気温、ゴム長靴等滑りにくい靴の着用・滑り止めの装着、転倒の危険を減らす歩き方を知らせた上で注意を周知するといったものであったというべきである。
しかしながら、被告管理組合は、これらを行っていなかった。
なお、被告管理組合は、融雪剤等を購入し、原告が購入した本件マンションのb5棟以外に備え置いており、平成25年2月ころ、降雪時の雪かき・融雪剤の散布などへの協力を求める告知文書を全戸に配布してはいるが、本件マンションのb5棟において、本件転倒事故前に定期的に融雪剤の所在を示した上でその使用を促す周知はされていなかったと認められ、融雪剤の周知・提供についても、被告管理組合の義務違反が認められる。
したがって、被告管理組合に滑り止め等の提供又は注意喚起の安全配慮義務があり、その義務違反があったといえる。そして、被告管理組合がこれらを尽くしていれば、原告がこれに沿う対応をして本件転倒事故が発生しなかった蓋然性が認められるから、被告管理組合の安全配慮義務違反と原告の傷害の発生との相当因果関係は肯定される。

2 本件転倒事故前(平成30年1月22日ころから)の本件駐車場の状況、本件転倒事故時の目視で明らかな本件駐車場の積雪状況に加えて、原告が、本件転倒事故の前日も雪かきをしており、その際、本件転倒事故の場所付近において氷が凸凹していて歩きにくかったことを体験していたこと、本件転倒事故直前にも駐車場の入り口付近で除雪作業を行おうとしたが除雪器具が氷に引っかかってしまうなどして氷床を確認していたこと、本件転倒事故の際、除雪作業の動作をしていたわけではなく、除雪器具を両手に持って自車の駐車場所に向かって歩いていたにすぎないこと、本件転倒事故の際、ゴム長靴等滑りにくい靴を着用したり、靴に滑り止めを装着したりしておらず、歩幅を狭くし、足の裏をつけた「すり足」でゆっくり慎重に歩くなど積雪・凍結状況に対応した歩き方をしていなかったことが認められることを合わせ考慮すると、原告の過失は重大といわざるを得ず、75%の過失相殺をするのが相当と思料する。

裁判所としては過失割合でバランスをとったのでしょうが、判例のポイント1の安全配慮義務の具体的内容を見る限り、過保護な印象を受けますがいかがでしょう・・・。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

駐車場問題10 駐車場不正使用料として日額5000円の支払を義務付けた使用細則の規定が公序良俗に反するとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、駐車場不正使用料として日額5000円の支払を義務付けた使用細則の規定が公序良俗に反するとされた事案(東京地判平成30年3月13日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンションの区分所有者全員で構成される管理組合法人が原告となって、本件マンションの区分所有者である被告に対し、被告が代表者となっているb社が所有する普通乗用自動車について、被告が自動車検査証の有効期間切れとなった本件自動車を本件マンションの共用部分である屋外駐車場に放置したとして、車検切れ車両を放置した場合に駐車場不正使用料として1日5000円の支払を義務付けているX管理組合法人施設等使用細則2条2項3文に基づいて、254日分の違約金127万円+遅延損害金の各支払を求めた事案である。
なお、原告は、当初、上記請求に加え、被告及びb社に対し、本件自動車の本件駐車場からの撤去及び本件駐車場に本件自動車を駐車することの差止めをそれぞれ請求していたが、被告が本件自動車を本件駐車場から撤去し、本件自動車を廃車処分にしたことに伴い、前記各請求に係る訴え部分を取り下げた。

【裁判所の判断】

被告は、原告に対し、63万5000円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 本件改訂は、本件管理規約及び本件使用細則違反状態の是正及び抑止等の趣旨から行われるものであるから、違約金の金額については、同趣旨実現の観点から実効性があり、かつ、被告に過度の負担を強いないという意味で相当性のある金額が定められるべきであり、その金額の当否の判断においては、区分所有者による自治が尊重されるべきである。
そして、以上のような考え方に立つと、本件自動車が占有している本件駐車場部分の本来の使用料や本件自動車が放置されていることによって生ずる実際の損害額は、あくまでも前記の判断の際に考慮すべき一事情にとどまるというべきである。
本件改訂の趣旨は前記説示のとおりであり、その趣旨は本件自動車による本件駐車場の不法占有による損害の回復に尽きるものではない。また、被告は本件改訂までの間に複数回にわたり本件自動車の撤去要請を受けながら、これに応じていないのであり、この点の被告の対応は不相当であるというべきである。
さらに、原告において本件自動車の撤去を行う場合には相応の費用がかかるのに対し、被告は、本件自動車を早めに撤去することで、違約金の発生を回避することができたものである。
以上の各事情からすると、本件駐車場を不法に占有することにより生ずる損害額に比べて相当高額な違約金額の設定も許容されると解される。
一方、本件自動車が本件駐車場に放置されたことにより重大な具体的損害が生じたことを認めるに足りる証拠はなく、また、本件マンションの屋内駐車場の最も高額な使用料が月額7500円であることが認められ、これらの各事情を斟酌すると、区分所有者による自治の尊重という観点を踏まえても、日額5000円(月額約15万円)という違約金額は高額に過ぎ、相当性を欠くといわざるを得ず、本件条項の違約金額のうち日額2500円を超える部分は、民法90条に反して無効であると判断するのが相当である。

区分所有者による自治は尊重されるとしても、あまりにも相当性を欠く規定内容の場合には、公序良俗違反等を理由に制限されますので注意が必要です。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

駐車場問題9 地下駐車場のシャッターの故障を理由とする損害賠償請求における警備費用として認められる範囲(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、地下駐車場のシャッターの故障を理由とする損害賠償請求における警備費用として認められる範囲(東京地判平成31年1月25日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

 本件は、
(1) マンション管理組合である原告が、被告の従業員は、トラックを運転して、同マンションの地下駐車場の出庫口を通過しようとした際、同出庫口に設置されたシャッターが完全に上がり切らずに停止していたのを看過し、同トラックの上部を同シャッターに衝突させ、これを破損させたと主張して、被告に対し、民法715条1項に基づく損害賠償として、939万7080円(①シャッター修理費用507万6000円、②警備費用346万6800円、③弁護士費用85万4280円)+遅延損害金の支払を求めた(本訴事件)のに対し、

(2)
 被告が、原告が管理していた同シャッターには、同トラックの通過中に落下し、あるいは本来の位置まで上がり切らなかったという瑕疵があり、これにより同トラックを破損させたと主張して、原告に対し、同法717条1項本文に基づく損害賠償として、10万3974円(①トラック修理費用9万4522円、②弁護士費用9452円)+遅延損害金の支払を求めた(反訴事件)
事案である。

【裁判所の判断】

1 被告は、原告に対し、46万1538円+遅延損害金を支払え。

2 原告は、被告に対し、7万2781円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 原告は、本件事故により、本件シャッターを閉鎖できなくなり、平成28年11月29日から平成29年3月15日までの間、毎日午後11時から午前8時までの時間帯に、警備員1名を本件シャッター下付近での立哨警備に、警備員1名を本件出庫ゲート付近の管理室内での警備に、それぞれ従事させ、その費用として346万6800円(1万5000円×2名×107日×1.08)を支出したことが認められる。
しかし、本件マンションが所在する地域の犯罪発生率は低く、本件マンションの管理事務所には24時間体制で警備員2名が勤務しているのであるから、本件出庫口から不審者が侵入する危険性が高いとはいえない。
また、原告が配置した警備員は、基本的に、午後11時から午前8時までの時間帯に、本件出庫口から不審者が侵入しないかを監視するのが主たる業務であり、通常の交通関係の監視等に従事する警備員等と比較しても精神的緊張は少なく、「断続的労働に従事する者」(労働基準法41条3号)に当たるともいえ、原告が、「行政官庁の許可」を受けていれば、同法34条1項により警備員に休憩を与える必要がなかった可能性は否定できない。また、警備員に休憩時間が必要であるとしても、原告としては、交代制で警備員を配置するなどして、休憩が必要となる6時間を超えないように勤務時間を設定することもできなかったとはいえない
そして、原告が配置した警備員が、不審者を発見するなどの不測の事態に遭遇した場合には、直ちに本件マンションの管理事務所や警察に連絡し、常駐の警備員2名や警察官と協同して事態に対処することもできたといえる。それゆえ、原告が、本件出庫口からの不審者の侵入に備えるために、警備員2名を配置する必要があったとまではいえない。
したがって、本件事故と相当因果関係のある警備費用は、被告が主張するとおり、警備員1名分の費用にとどまると認めるのが相当である。

2 原告は、本件事故前である平成28年10月19日に、LIXILから本件シャッターの交換工事に係る見積書を受領しており、板金製作物や購入部品等の拾い出しも完了し、LIXILに発注書を提出すれば、直ちに工事に着手することが可能な状況にあったといえる。
しかし、原告は、本件事故が発生した同年11月26日の後も、被告側保険会社と交渉をしていたこと等を理由に、平成29年1月29日になって初めて、理事会の承認を得て、本件シャッターの修理を正式に発注し、工事の完了が同年3月15日になっているところ、遅くとも平成28年12月14日には、同保険会社からの回答により任意賠償の可能性が低いことを認識し得たはずであり、損害拡大防止義務に照らしても、同年11月29日から平成29年3月15日までの全期間の費用を請求することはできないというべきである。
他方で、LIXILの報告書によれば、本件シャッターの修理期間は、長くとも①設計作図期間8日間、②工場手配納期3日間、③工場資材調達期間10日間、④板金加工・組み立て製作期間30日間、⑤出荷配車準備期間4日間、⑥施工者手配・現場調整期間7日間、⑦工事施工期間4日間の合計66日間(発注書受領後の工程は③以降の合計55日間)であり、実際にはLIXILが発注書を受領した同年1月29日から同年3月15日までの46日間で工事は完了している。
以上の事情を総合考慮すると、本件事故と相当因果関係のある警備費用は、被告が主張するとおり、せいぜい原告が警備員を配置した平成28年11月29日から55日間分の費用にとどまるというべきである。

損害賠償請求訴訟における損害の評価、相当因果関係の考え方というのは、非常に独特な感じがするかもしません。

仮に原告が実際に警備費用を支払っているとすれば、大赤字になってしまいます。

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駐車場問題8 駐車場の管理費を定めた総会決議が原告の権利に特別な影響を及ぼすものとはいえないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、駐車場の管理費を定めた総会決議が原告の権利に特別な影響を及ぼすものとはいえないとされた事案(東京地判令和2年3月19日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本訴原告が本訴被告に対し、マンション内で専用使用している駐車場の管理費を定めた臨時総会決議について原告の権利に特別な影響を及ぼすものであるにもかかわらず、原告の承諾なくして決議したものであり区分所有法31条1項後段に反するとして臨時総会決議の無効確認を求める本訴事案と、反訴被告が反訴原告に対し、未払となっている管理費(平成26年5月分~平成31年4月分 合計678万円)と各支払期日の翌日から約定利率年14%の遅延損害金の支払を求める反訴事案である。

【裁判所の判断】

本訴原告の請求棄却

反訴被告の請求認容

【判例のポイント】

1 本件決議では、本件各室の管理費額について、住戸と駐車場の違いを考慮していない
しかし、住戸と駐車場の違いをどの程度考慮するかは、一義的に決められるものではなく、被告において裁量的に決めることができる性質のものであり、本件決議のように専有面積や共有持分に応じて定めることも一つの方法として許されるものと考えられる。
また、本件各室は雨ざらしの駐車場ではなく、本件マンション内の半地下にあり、構造上部屋に変更することもでき、貸駐車場として収益物件として使用されていること、管理人による清掃も行われているところであり、本件各室の管理費は、住戸部分と同一に扱われるべき要素も認められる。また、本件各室の管理費は、旧各管理会社とDがなれ合ったり、本件マンションの最大の区分所有者であるDが被告において強硬策に出られないことをよいことに被告からの請求を無視し、本件マンション建築以降40年間払われてこなかったものであり、かかる不平等が長きにわたって続いてきたことを無視することもできない
本件決議は、かかる管理費の不平等を是正し、管理費の徴収を確実にするため行ったものであり、原告に特別の影響をもたらすものとまでは認め難い

本件は、上記のとおり、住戸と駐車場の違いを考慮せずに駐車場の管理費を住戸部分と同一に取り扱っていますが、裁判所は、駐車場の特徴や原告のこれまでの対応等を考慮して、総会決議を有効と判断しました。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。