おはようございます。
今日は、町会から脱退した後も徴収された月額300円の町会活動費について管理組合に対する不当利得返還請求が棄却された事案(東京地判令和元年12月20日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、aマンションの区分所有者である控訴人が、aマンションの区分所有者で構成される被控訴人管理組合は、区分所有者から被控訴人町会の町会費を徴収し、その町会活動費を支出しているところ、被控訴人管理組合は、控訴人が被控訴人町会を脱退したにもかかわらず、控訴人から平成31年1月分ないし令和元年11月分の管理費等の徴収において少なくとも1661円(月額151円)の町会費を徴収したから、被控訴人らは控訴人から法律上の原因なく少なくとも1661円を利得したと主張して、被控訴人らに対し、不当利得返還請求権に基づき、1661円の連帯支払を求める事案である。
控訴人は、原審において、徴収された町会費が月額300円であると主張し、被控訴人らに対し、平成31年1月分ないし同年3月分の町会費相当額900円(月額300円)の支払を求めたところ、原審が、控訴人の請求をいずれも棄却したことから、これを不服として本件控訴をした上、当審において、上記のとおりに請求を拡張した。
【裁判所の判断】
原判決中控訴人の被控訴人Y2町会に対する請求に関する部分を取り消す。
控訴人の被控訴人Y2町会に対する訴え(当審における拡張請求に係る部分を含む。)を却下する。
控訴人の被控訴人Y1管理組合に対する控訴を棄却する。
控訴人の当審における被控訴人Y1管理組合に対する拡張請求を棄却する。
【判例のポイント】
1 管理組合は、区分所有法に基づき区分所有者全員で構成される建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体であり(同法3条)、他方、町会は、一定の地域に住所を有する者の自治組織として形成された任意の団体であるから、管理組合と町会とは、本来、その法的性質を異にする別個の団体である。しかるに、被控訴人管理組合と被控訴人町会とは、いずれもaマンションの区分所有者をもって構成員とするものである上、被控訴人町会においては、独自の規約が存在せず、意思決定を行うための独自の集会も開催しておらず、被控訴人管理組合の理事長が兼務する町会長以外に役員もおらず、その代わりに、本件規約において、被控訴人管理組合が町会業務を行い(31条)、被控訴人管理組合の理事会が町会業務に関する事項を決議し(52条)、被控訴人管理組合の理事長が町会長としてその職務を行う(36条8項)こととされており、実際、被控訴人管理組合が、自ら町会業務を行い、区分所有者から徴収した管理費等の収入の中から町会活動費を直接支出していることが認められ、以上の事実によれば、被控訴人管理組合と被控訴人町会とは完全に一体化しており、被控訴人管理組合は、その活動の一部として被控訴人町会の活動を行い、その活動に要する費用(町会活動費)を区分所有者から徴収した管理費等の収入の中から直接支出していることが認められる。
したがって、被控訴人管理組合は、被控訴人町会に代わって区分所有者から何らかの金員を徴収しているわけではないし、被控訴人町会に代わって町会活動費を支出しているわけでもない。
2 また、①被控訴人管理組合は、区分所有者から、管理費、特別修繕費及び組合費(管理費等)の名目で金員を徴収しており、町会費又は町会活動費の名目で金員を徴収しているわけではないこと、②被控訴人管理組合は、区分所有者から毎月一定額の管理費等を徴収する一方で、理事会の決議により町会業務に関する事項を決めているため、その支出する町会活動費の額は、年度によって、また、同一の年度内でも月によって異なっていることが認められる上、被控訴人管理組合において管理費等の名目で実質的に毎月一定額の町会費又は町会活動費を徴収していることをうかがわせる証拠もないから、被控訴人管理組合の管理費等の徴収と町会活動費の支出との間には、形式的にも、実質的にも、直接の対応関係は認められない。
そうすると、被控訴人管理組合は区分所有者から徴収した管理費等の収入の中から自らの活動に要する費用として町会活動費を支出しているという以上の事実を認めることはできず、被控訴人管理組合が区分所有者から町会費又は町会活動費を徴収していると認めることはできないから、被控訴人管理組合が控訴人から法律上の原因なく町会費相当額又は町会活動費相当額を利得したと認めることはできない。
もちろん、区分所有建物の管理組合である被控訴人管理組合が自ら町会の活動を行い、区分所有者から徴収した管理費等の収入の中から町会活動費を支出することが適法か否かの問題はあるが、そのような問題があるからといって、本件において被控訴人管理組合が控訴人から町会費又は町会活動費を徴収したとか、被控訴人管理組合が控訴人から法律上の原因なく町会費相当額又は町会活動費相当額を利得したと認めることができるわけではない。
よって、控訴人の被控訴人管理組合に対する請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。
3 また、被控訴人町会は、前記のとおり、被控訴人管理組合と完全に一体化しており、被控訴人管理組合から独立した存在であるとは認められないから、民事訴訟における当事者となることはできない。
したがって、控訴人の被控訴人町会に対する訴えは不適法である。
わずか月額300円の支出であっても、控訴審まで行くこともあります。
本件では、管理費と町会活動費の関係が問題となりましたが、解釈上、別個のものではないという判断により上記結論に至っています。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。