Category Archives: 管理費・修繕積立金

管理費・修繕積立金33 水道料立替金を区分所有者が管理組合に支払う旨の本件水道規約の有効性(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、水道料立替金を区分所有者が管理組合に支払う旨の本件水道規約の有効性(浜松簡判令和3年6月30日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告管理組合が被告区分所有者に対して、管理規約に基づく管理費(水道料)の請求及び遅延損害金請求並びに弁護士費用請求をする事案である。

【裁判所の判断】

1 被告は、原告に対し、5万2395円+遅延損害金を支払え。

 被告は、原告に対し、金22万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 水道料金は、本来専有部分の個別に発生するものであり、専有部分と共有部分と一体となっている管理費と同じとみることはできない
このため立替水道料について、被告の主張するように区分所有法7条及び8条の適用のあるものとは、ただちには言えない
しかし、専有部分の水道料金を使用者が不明であっても、同専有部分の占有者又は所有者が支払うことは管理のしやすさなど一定の合理性がある。
原告が主張するように水道メーターが集中検針方式で、マンション内共用部分の設備として設置され、各専有部分にこれに対応した各戸メーターが設備されているところ、この設備を浜松市による各戸個別検針にするためのメーター更新設備が、平成27年6月23日の通常総会において、区分所有者からの合意が取れず、現在までも浜松市との個別の水道契約が行えていない現状から水道料金を管理組合による立替払い方式による徴収を行わざるを得ないという事情にある
このような状況の中で、水道料の徴収を効率的に行って、管理組合の運営を円滑に行うことは、区分所有者全体の利害に関わるものであり、その意味で利用している当時の所有者が管理費とともに支払うという本件規定の趣旨は、その限りにおいて、同法30条1項の規約事項であると肯定できる。
被告は、平成29年2月28日から平成31年2月28日までの滞納期間以降については、規約に基づいて支払を行っているところからも、その意義を認めていると窺われる。

本件では、本件管理規約が管理組合の管理の対象の範囲を超えているかが争点となりました。

「水道料金は、本来専有部分の個別に発生するものであり、専有部分と共有部分と一体となっている管理費と同じとみることはできない。」という点は、原則的な考え方として理解しておきましょう。

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管理費・修繕積立金32 被告管理組合からの消滅時効の援用が時機に後れた攻撃防御方法に当たるとされ却下された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、被告管理組合からの消滅時効の援用が時機に後れた攻撃防御方法に当たるとされ却下された事案(東京地判令和3年6月4日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンションの1室である602号室の区分所有者である原告が、本件マンション管理組合である被告に対し、原告が被告に支払うべき管理費及び修繕積立金を、被告が原告から過大に徴収したと主張して、不当利得返還請求権に基づき、原告が被告に過大に支払った額として434万6380円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

被告は、原告に対し、101万2588円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 被告は、本件訴訟の提起から10年より以前に発生した管理費等についての不当利得返還請求権につき、消滅時効を援用するのに対し、原告は、かかる消滅時効の援用は、時機に後れたものであり、これにより訴訟の完結が遅延しているから、却下されるべきであると主張する。
被告による消滅時効の援用の意思表示を記載した令和2年12月22日付けの第5準備書面は、争点整理手続が終了し、当事者双方の本人尋問による証拠調べ期日や、その後に行われた和解期日を経て、弁論終結を予定していた令和2年12月22日の本件口頭弁論期日に先立つ同月18日に、当裁判所に提出されるとともに、原告に到達し、令和3年2月5日の本件口頭弁論期日において陳述されたものである。
そして、被告による上記のとおりの消滅時効の援用がこのような時期に行われたことについて、何らかの合理的な理由があったとは認められないから、このような時効の援用は、明らかに時機に後れて提出されたものであり、かつ、そのことについて、被告において、少なくとも重大な過失があったといわざるを得ない。
さらに、原告は、かかる消滅時効の援用の主張について、信義則に反し許されない旨を主張しており、この点についての審理を行わなければ、被告による消滅時効の援用の当否を決することができないから、被告による消滅時効の援用は、これにより訴訟の完結を遅延させることとなるものと認められる。
よって、被告による消滅時効の援用の主張は、民事訴訟法157条1項所定の時機に後れた攻撃防御方法に当たると認められるから、これを却下することとする。

なぜ消滅時効の主張を早い段階で予備的にでもしていなかったのかわかりませんが、結審間際で新たな主張をするとこうなりますので注意しましょう。

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管理費・修繕積立金31 弁護士費用を滞納者に請求できるとする規約が訴訟提起後に新設された場合の規約の効力は?(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、弁護士費用を滞納者に請求できるとする規約が訴訟提起後に新設された場合の規約の効力は?(東京地判平成24年5月29日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの管理組合法人である原告が、同マンションの301号室を共有する被告らに対し、マンションの管理規約及び使用細則に基づき、各自(不可分債務)、①平成24年3月13日現在の未払管理費(136万9600円)、同日現在の未払修繕積立金(129万0240円)及びこれらに対する平成24年3月13日までの確定遅延損害金68万4724円の合計334万4564円+遅延損害金の支払を求めるとともに、
②平成24年3月13日現在の未払電気水道料金(38万6732円)及び弁護士費用(85万2809円)の合計123万9541円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

被告らは、原告に対し、各自(不可分債務)、458万4105円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 原告は、平成23年5月28日開催の定期総会において管理規約を改正し、管理費等を滞納した場合には、その組合員(区分所有者)に対し、違約金として弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して請求できるとの規定(管理規約57条2項)を設け、同規定は同年6月1日から効力を生じている。
ところで、原告が管理規約57条2項に基づいて弁護士費用の支払を請求しているのに対し、被告らは、管理規約57条2項は、本件訴訟提起後に新設されたものであるから、本件訴訟において、原告が被告らに弁護士費用等を請求する根拠とすることはできないと主張しているが、民事訴訟においては口頭弁論終結時における権利ないし法律関係の存否を判断するものであるから請求根拠は口頭弁論終結時に存在すれば足りると解するのが相当であり、被告らの主張は採用できない。

2 ①原告は、本件訴訟の遂行を原告代理人らに委任し、原告代理人らに対し、以前の日本弁護士連合会弁護士報酬基準と同じ報酬基準に基づいて報酬を支払うことを約束したこと、②同報酬基準によれば、着手金は請求金額の5%と9万円であり、成功報酬は請求金額の10%と18万円であることが認められる。
そして、原告は、報酬金額算定の基礎となる請求金額は、訴状に代わる準備書面の請求金額である361万4678円(未払管理費115万7460円、未払修繕積立金107万5200円、未払電気水道料金38万6732円、確定遅延損害金99万5286円)とするのが相当であるから、同金額を採用すると、①着手金は請求金額の5%と9万円であるから27万0733円であり、これに消費税5%を加算した28万4269円となり、②成功報酬は請求金額の10%と18万円であるから54万1467円であり、これに消費税5%を加算した56万8540円となる(合計85万2809円)。

現在では、多くの規約に弁護士費用の請求に関する規定が設けられていますので、あまり問題にはありませんが、仮に昔からの規約を変更せずに使っている場合には、是非参考にしてください。

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管理費・修繕積立金30 未払管理費等の一部が認容された場合における弁護士費用(成功報酬)の算定(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、未払管理費等の一部が認容された場合における弁護士費用(成功報酬)の算定(東京地判令和3年8月25日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンション管理組合である原告が、本件マンションの307号室の区分所有者である被告に対し、管理費及び給湯費等の未払があるとして、その未払分及びこれに対する本件マンションの管理規約所定の年18%の割合による遅延損害金の支払を求めるほか、本件管理規約に基づき、本件に関して要した弁護士費用等37万7589円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 被告は、原告に対し、120万6094円+遅延損害金を支払え。
 被告は、原告に対し、37万7272円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 原告は、内容証明郵便等による催告手続の弁護士手数料として4万4000円、本件訴訟を提起する際の着手金として11万円、本件訴訟の出廷費用として少なくとも1万1000円、及び本件訴訟の報酬を支払うべきことになったと認められる。
ところで、原告は、本件訴訟の報酬について、(滞納分に係る請求の)認容額が120万7894円であった場合を前提として、それに16%を乗じ、消費税(10%)相当額を加算した21万2589円としているが、本件における(滞納分に係る請求の)認容額は、120万6094円(計算式:92万4160円(管理費・修繕積立金関係)+7万2000円(本件駐輪契約に係る使用料関係)+20万9934円(給湯費等関係))であるので、本件訴訟の報酬額は、21万2272円(計算式:120万6094円×0.16×1.1)と認めるのが相当である。
以上によれば、原告が被告に請求できる弁護士費用等の請求額は、合計37万7272円となる。

成功報酬については、経済的利益をベースとして計算されるため、上記判例のポイント2のような判断になってしまいます。

そのため、着手金のウェイトを上げるという方法を採用する弁護士もいますので参考にしてください。

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管理費・修繕積立金29 未払管理費等請求訴訟の提起の適法性が争点となった事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、未払管理費等請求訴訟の提起の適法性が争点となった事案(東京地判令和3年8月3日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンション管理組合である原告が、本件マンションの区分所有者である被告に対し、①平成26年10月分から令和2年2月分までの管理費及び修繕積立金合計59万5940円並びにこれらに対する各支払期日(前月28日)の翌日から支払済みまで原告の管理規約所定の年15%の割合による遅延損害金、②令和2年2月から被告が本件マンションの区分所有権を喪失するに至るまで毎月28日限り1か月9500円の割合による管理費等及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで管理規約所定の年15%の割合による遅延損害金、③管理規約に定めのある違約金としての弁護士費用22万7630円(計算式は,82万7750円〔令和2年1月28日時点での管理費等の滞納金及び遅延損害金の合計額〕×25%×1.10〔消費税加算〕)並びに督促及び徴収の諸費用1592円の合計22万9222円及びこれに対する令和2年3月3日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ)所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求め(本訴請求)、
他方、(2)被告が原告に対し、不法行為に基づく損害賠償金300万円及びこれに対する令和2年3月28日(不法行為の後の日である反訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年10%の割合による金員(被告の主張は判然としないが遅延損害金の趣旨と解される。)の支払を求める(反訴請求)事案である。

【裁判所の判断】

1 被告は、原告に対し、76万1653円+年15%の遅延損害金を支払え。
 被告は、原告に対し、21万1046円+年5%の遅延損害金を支払え。
 被告は、原告に対し、令和2年2月以降被告が別紙物件目録記載の建物の区分所有権を喪失するまでの間、毎月28日限り月額9500円+年15%の遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 令和元年5月30日開催の原告第34期定期総会において、本訴の提起について原告の総会決議がされ、同日開催の原告理事会においても本訴提起についての理事会決議がされたことが認められる。したがって、本件訴提は適法である。
これに対し、被告は、①原告第34期定期総会議事録に決議当日に署名した者が誰もいないから同議事録は偽造されたものであって、原告第34期定期総会の決議は存在しない、②原告の理事長とされるAが本件マンションの所有者ではないなどとして、本訴提起が不適法であると主張する。
しかし、総会議事録への署名の日時が総会当日でないことから直ちに同議事録が偽造であるなどということはできず、他に原告の第34期定期総会の決議の存在に疑念を抱かせる事情ないし証拠は見当たらない
また、Aは、本訴の提起時点において、本件マンションの区分所有者である会社の代表者であったと認められる。
したがって、被告の上記主張はいずれも本訴提起の適法性を左右するものとはいえない

本件同様、訴訟提起の適法性が争点となることは珍しくありません。

訴訟提起をする前の手続きを適正に行うことは、実務においては基本的な事項ですのでしっかり押さえておきましょう。

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管理費・修繕積立金28 管理会社が管理費等滞納者に対して支払いを求める訴えを提起しなかったことによる責任(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理会社が管理費等滞納者に対して支払いを求める訴えを提起しなかったことによる責任(東京地判令和3年11月19日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンション管理組合である原告が、本件マンションの分譲時から同マンションの管理業務を受託していた被告に対し、被告が管理会社としての善管注意義務を怠り、同マンションの区分所有者のうち管理費等を滞納している者らに対してその支払を求める訴えを提起しなかった結果、これらの管理費等の支払請求権が時効消滅し、原告が損害を被ったと主張して、管理委託契約の債務不履行に基づき、原告が被った損害金の一部として2000万円の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 管理会社である被告が、本件規約30条に基づき、本件マンションの区分所有者全員又はその団体に帰属する未払管理費請求権を訴訟物とする訴訟活動を行うことが、任意的訴訟担当の一場合として許される余地があるとしても、かかる請求権をどのような態様で行使するかは、当該請求権の主体である区分所有者全員又はその団体がまずもって決定すべき筋合いのものというべきである。
しかるところ、被告は、平成22年以降、本件マンションの区分所有者宛てに、管理費等の滞納状況について、どの区分所有建物についていくらの滞納が生じているのかを、毎年の管理業務の報告書に記載して報告していたと認められること、被告は、区分所有者に対して、会計報告を行う義務を課せられており(本件管理委託契約書5条2項、本件規約26条)、それ以前の時期において、区分所有者に対して報告書を配布しないなど、毎年の会計についての区分所有者に対する報告を怠っていたと認めるに足りる証拠はないことに照らすと、被告は、平成21年以前においても、区分所有者に対し、管理費等の滞納状況を含む会計についての報告を行っていたと認めるのが相当である。
しかるに、本件マンションの区分所有者において、滞納されている管理費等について、訴訟の提起を含む何らかの措置を講じることを決定したり、被告に対し、これを促すなどした形跡はない
むしろ、平成22年、平成25年、平成28年の各7月頃、被告から本件マンションの区分所有者に対して、本件管理委託契約書とは異なる内容の管理委託契約書が、区分所有者と被告との間の新たな管理委託契約の内容を示すものとして提示されており、この契約書には、管理費等滞納者に対する督促に関して、①被告は管理費等の滞納状況を区分所有者に報告する旨、②管理費等の滞納があった場合には、最初の支払期限から起算して6か月の間、電話若しくは自宅訪問又は督促状の方法によりその支払の督促を行う旨、③上記方法により督促しても、なお滞納管理費等の支払が行われないときは、被告はその業務を終了する旨が定められていたことが認められる。
これらの契約書は、本件マンションにおいては実際には組織されていない管理組合を契約当事者とするものであることや、区分所有者の代表者として署名押印を行っている者の代表権の有無が定かではないことに照らすと、本件マンションの区分所有者と被告との間で、その内容に沿う契約が成立したといえるかについては疑義があるといわざるを得ないものの、少なくとも、上記のような定めが置かれていることについて、区分所有者から何らかの異議が出された形跡はない。

管理組合から管理会社に対し、滞納管理費等について訴訟提起等を依頼・促す等の事情があれば結論は変わったかと思いますが、そのような事情がない本件では、管理会社の責任は否定されています。

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管理費・修繕積立金27 未払管理費等請求における弁護士費用全額の請求が認容された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、未払管理費等請求における弁護士費用全額の請求が認容された事案(東京地判平成30年4月17日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンション管理組合である原告が、マンションの区分所有者の共同相続人である被告らに対し、管理規約に基づき、被相続人の死亡後に発生した平成24年2月分から平成29年5月分までの管理費、修繕維持積立金及びコミュニティ費用、平成24年2月分から平成26年10月分までの駐輪場使用料、弁護士費用等並びにそれらの遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

全部認容

【判例のポイント】

1 原告は、理事長において、原告を代表して、未納管理費等に関する訴訟を追行することができると認められる。
しかし、原告では、管理規約において、原告は、本件管理費等を支払わない区分所有者に対し本件弁護士費用を請求することができる旨定めているから、原告は、理事長において訴訟を提起するのでなく、弁護士に委任して本件管理費等を支払わない区分所有者に対する訴訟を提起させ、追行させることも許容しているということができる。
そして、原告は、弁護士に委任して被告らに対する本件管理費等に係る本件訴訟を提起していることが認められるので、原告は、本件訴訟に係る本件弁護士費用を請求することができるというべきである。
また、原告が請求している本件弁護士費用は、原告が負担し、又は負担することとなる弁護士の着手金8万1000円及び報酬金22万9210円並びに本件訴訟に係る訴状貼用印紙代として1万6000円であり、その着手金及び報酬金の額は、日本弁護士連合会がかつて定めていた報酬等基準の範囲内にとどまるものであり、被告Y2が主張するような相当性に疑義があるものとはいえない。

請求可能な弁護士費用の金額については、旧日弁連基準の範囲内が一定の基準となっています。

着手金のみならず報酬金についての請求も認めてくれています。

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管理費・修繕積立金26 未払管理費等請求における弁護士費用全額の請求が認容された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、未払管理費等請求における弁護士費用全額の請求が認容された事案(東京地判平成30年4月17日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンション管理組合及び住宅部会が、マンションの区分所有者であり、もしくは区分所有者であった被告らに対し、①全体管理費及び全体修繕積立金、②住宅管理費、インターネット接続料及び住宅修繕積立金、③管理費等に対する各支払期限の日の翌日から支払済みまで規約所定の年14.6%の割合による遅延損害金、④管理規約に定めのある違約金としての弁護士費用、⑤本件弁護士費用+遅延損害金の支払を求めている事案である。

【裁判所の判断】

全部認容

【判例のポイント】

1 被告らは、不法行為に基づく損害賠償請求の場合との比較から、このような管理規約の不合理性を主張するが、被告らの挙げた例は、弁護士費用のうち不法行為と相当因果関係を有する損害と評価することのできる範囲に関するものであって、あくまで不法行為に基づく損害賠償請求に関する損害額の算定に関する問題であり、マンションの区分所有に関する管理規約に定められた違約金条項の内容の合理性とは次元を異にする問題である。
一方、実質論を主張するにとどまる原告の立論も首肯し難い(当事者数が多いとは言っても、特段、計算に難儀するほどの人数ではないし、訴訟係属期間が長期化したとは言っても、送達までに要した期間や和解調整に要した期間が長かっただけであり、実質的な争点整理事項は本判決掲記のとおりである。)。
もっとも、一般に、管理費を滞納した区分所有者に対して、未払管理費を請求する際に違約金としての弁護士費用を負担させるか否かという事項は、「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理」「に関する区分所有者相互間の事項」(区分所有法30条1項)に該当する事項であるところ、管理規約は、区分所有者間の利害の衡平(同条3項)の要請の下、特別多数決議(同法31条1項)によって定められるものであること、規約に定める要件に該当する場合には、全ての区分所有者が同様の義務を負うことになるものであること、実質的にみても、未払管理費の請求にかかる弁護士費用が極端に高額なものとなることは通常想定し難いことからすると、管理規約によって、未払管理費の請求に要した弁護士費用全額相当額の違約金支払義務を定めたからといって、それが不合理であるということはできない(なお、現に、マンション標準管理規約60条2項にも同様の規定が置かれているところである。)。
よって、このような管理規約の不合理性を前提として、一定額以上の違約金支払義務がないとする被告らの主張は、採用することができない。

2 被告Y1は、本件建物の共有持分比率が低い旨や、実際に本件建物に居住しておらず利用してもいない旨を主張する。
しかし、全体管理費、全体修繕積立金、住宅管理費、住宅修繕積立金が部屋の広さないし規格ごとに異なっている点からも明らかなように、一般に、管理費等は、利用利益の享受に対する対価という側面のみならず、建物全体の快適性や安全性、美観等の維持による資産価値ないし交換価値の維持という側面も有しているということができるのであって、建物の持分割合の高低や実際の居住ないし利用の有無にかかわらず、区分所有権を有する者であるがゆえに負担すべき性質のものであるというべきであるから、そもそも権利濫用の評価根拠事実として採用するに値しない。

本件訴訟は、原告が2名、被告が4名と、当事者が多数存在しますが、弁護士費用として32万4000円(税込)の請求全額が認容されています。

他の裁判例を確認する限り、もう少し高額であっても、裁判所は全額認容する傾向にあります。

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管理費・修繕積立金25 管理費等の滞納がないにもかかわらず、その支払を求められたことによる慰謝料請求が棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理費等の滞納がないにもかかわらず、その支払を求められたことによる慰謝料請求が棄却された事案(東京地判平成30年12月25日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンションの2室の区分所有権を担保不動産競売により取得した原告が、本件マンション管理組合である被告に対し、管理費、修繕積立金及び地代の滞納がないにもかかわらず、その支払を求められたことにより、肉体的及び精神的な苦痛を被ったことを理由に、民法709条の不法行為に基づく損害賠償の請求として、120万円+遅延損害金の支払を求める事件(本訴)と、被告が、原告に対し、原告が滞納する管理費等(176万6424円)及び平成28年6月30日までの確定遅延損害金(270万7223円)の合計447万3647円並びに原告が滞納する管理費等(176万6424円)に対する遅延損害金の支払を求める事件(反訴)の事案である。

【裁判所の判断】

1 原告(反訴被告)の請求を棄却する。

 被告(反訴原告)の請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 被告が平成17年9月29日に開催した第22回Y管理組合定期総会において配布されたaマンション未収入金一覧表と題する書面には、本件各室についての遅延損害金として合計52万4187円が計上されているが、その滞納期間として、平成14年6月分ないし平成15年6月分、平成16年1月及び2月分不足、同年3月ないし12月分及び平成17年1月ないし7月分である旨が記載されており、法定充当の方法によるのではなく、その一部について指定充当をされたものとうかがわれることに加え、本件和解において定められた期限の利益を喪失した後であるにもかかわらず、第22回貸借対照表や第23回中間貸借対照表には、未収金及び地代未収金と異なり、遅延損害金が計上されていないが、被告において財産の状況を監査し、その結果を総会に報告する監事が置かれ(管理規約・45条1項及び建物の区分所有に関する法律50条1項及び3項参照)、収支決算及び事業報告が総会の決議を経なければならないとされていること(管理規約・52条1号)に照らすと、当時、被告として、そもそも遅延損害金についての存在の認識が希薄であったと考えられる。
そして、原告が平成17年12月21日に本件各室を取得した後は、原告において被告から請求された本件管理費等の金額を支払ってきたところ、被告が原告に対して延滞する管理費等があるとして、その支払を求めるまでに10年以上が経過したことも併せ考慮すると、原告が被告に対して支払った上記の各金員については、原告と被告との間で、管理費等に係る請求書に記載の期間について支払うものとしての黙示の合意があったと認められる。
したがって、被告の原告に対するb社による管理費等についての滞納やこれについての遅延損害金の滞納に係る債権が存在したとしても、消滅時効を理由に消滅したと認められる。

2 被告の原告に対する管理費等の請求は、結果として、理由がないものであるが、その論拠は、消滅時効を援用したことによるものである。そして、原告と被告の間で充当関係についての見解に相違があったことも併せ考慮すると、本件の訴えに先立ち、被告が原告に対して管理費等の滞納についての請求をしたこと自体は、相応の根拠に基づくものであって、不合理なものとはいえない。以上に加え、地代の支払については、本件の審理において原告側から書証として提出されるまで、被告において把握しておらず、そのことが被告の原告に対する請求の一因になった可能性があるとの事情も踏まえると、被告が原告に対して管理費等の請求をしたこと自体については、何ら違法なものとはいえない。
したがって、被告が原告に対して未払の管理費等についての請求をしたことについて、不法行為は成立しない。

区分所有建物における管理費等の回収の場面では、充当関係が問題となることがあります。

充当の順番をしっかり理解しておかないと、滞納金額の正確な把握ができないため、注意しましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

管理費・修繕積立金24 規約に弁護士費用の算定方法について規定がない場合における弁護士費用の認定方法(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、規約に弁護士費用の算定方法について規定がない場合における弁護士費用の認定方法(東京地判平成31年2月27日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンション管理組合である原告が、同マンションの区分所有者である被告に対し、同マンションの管理規約に基づき、未払管理費、修繕積立金及び専用使用料+遅延損害金、弁護士費用90万7870円+平成30年4月から毎月27日限り月額46万7840円の割合による将来の管理費、修繕積立金及び専用使用料の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 被告は、原告に対し、998万6570円+遅延損害金を支払え。

 被告は、原告に対し、平成30年4月から被告が原告を脱退するまでの間、毎月27日限り月額46万7840円の割合による金員を支払え。

【判例のポイント】

1 原告が区分所有者から徴収する管理費等は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるものであり(本件規約23条1項)、専用使用料は管理費に充当されるものであり(本件規約27条1項)、いずれも本件マンションの敷地及び共用部分等の管理という不可分的な利益の対価であるものと認められる。
また、本件規約62条4項に基づき被告が支払義務を負う弁護士費用は、上記のような不可分的な利益の対価の支払債務の不履行によって生じる違約金であるものと認められる。
以上に照らせば、本件請求債権に係る支払債務は、いずれも性質上の不可分債務に当たるものと認められる。
したがって、店舗①及び店舗②について持分を有する被告は、本件請求債権の全部について支払義務を負うものというべきである。

2 被告は、本件規約62条4項に基づき、本件訴訟に係る原告の弁護士費用を負担すべき義務を負うものというべきである。
本件規約には、負担すべき弁護士費用の算定方法について定めがないから、同項は相当額の弁護士費用の請求を認めているものと解するのが相当である。
そして、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟において、損害額の1割程度の額の弁護士費用が不法行為と相当因果関係を有する損害と認められるのが一般的であることに照らせば、本件訴訟についての相当額の弁護士費用は、本件未払管理費等及び専用使用料合計907万8700円の1割である90万7870円を下らないものと認めるのが相当である。

上記判例のポイント2は、あくまで一例にすぎません。

違約金としての弁護士費用の請求は、委任契約において弁護士費用についてどのように合意するかが非常に重要です。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。