おはようございます。
今日は、管理組合法人と理事長の利益相反が否定され、監事が管理組合を代表して行った訴訟提起が認められなかった事案(東京地判令和3年7月30日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、管理組合法人と理事長の利益相反の有無、及び、監事が管理組合を代表して行った訴訟提起の有効性が争いとなった事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 原告は監事として、臨時総会を招集しようとしたが、本件管理会社が監事である原告の指示に従わなかったとして、同総会の運営について補助することを求め、本件管理組合を代表して別件訴訟を提起したことが認められる。
本件管理組合においては、理事長が代表権を有しており、本件管理組合と理事長との利益が相反する事項に限って、監事が代表権を有することとされている(区分所有法51条)。
そして、管理組合法人と理事長(代表権を有する理事)の利益が相反する事項であるか否かは、当該行為の外形から判断すべきであり、理事長個人と管理組合法人との間で法律行為をする場合(自己契約)や、理事長が代表し、又は代理する第三者と管理組合法人との間で法律行為をする場合(双方代表又は双方代理)などが想定される。
しかし、別件訴訟は、本件管理組合の理事長であった被告を相手方とするものではなく、本件管理会社を相手方とするものであるから、外形的に見て、本件管理組合と被告との利益が相反する事項に該当するとは認められない。
そうすると、原告は、別件訴訟について本件管理組合を代表することはできず、そもそも、本件管理組合を代表して別件訴訟を提起することができなかったと言わざるを得ない。
2 以上によれば、監事である原告が本件管理組合を代表することができる場合に該当しないにもかかわらず、原告が本件管理組合を代表して提起した別件訴訟について、原告がその費用を本件管理組合に対して請求することができる根拠は明らかでない。
したがって、本件管理組合が原告に対して前記費用を支払うべき義務があるとは認められないから、前記支払義務があることを前提とする原告の主張は前提を欠くといわざるを得ない。
本裁判例を通じて、管理組合と理事との利益相反について裁判所の考え方を押さえておきましょう。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。