おはようございます。
今日は、団地建物所有者等に対してその専有部分の電力供給契約の解約申入れを義務付ける旨の集会決議がされた場合において、団地建物所有者が上記解約申入れをしないことが他の団地建物所有者に対する不法行為を構成しないとされた事案(最判平成31年3月5日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、同一敷地上にあるA棟からE棟までの各区分建物からなる団地であるaマンションの区分所有者である被控訴人が、本件マンションの区分所有者である控訴人らに対し、本件マンションの全区分所有者で構成される団地管理組合法人における団地集会において、本件マンションの専有部分の受電方法を低圧受電から高圧受電に変更する旨の議案が特別決議により可決し。これを受けた規約の改定の議案も特別決議により可決したにもかかわらず、控訴人らがこれらの決議に従わず、北海道電力株式会社との間で電気供給契約を解除しなかったために、本件マンション全体が高圧受電に変更することができず、高圧受電が導入されれば支払う必要がなかった電気料金相当額の損害を被ったと主張して、不法行為に基づき、連帯して、損害賠償金9165円+遅延損害金の支払を求める事案である。
一審(札幌地判平成29年5月24日)、控訴審(札幌高判平成29年11月9日)ともに、被控訴人の請求を認容した。
【裁判所の判断】
原判決を破棄し、第1審判決を取り消す。
被上告人の請求をいずれも棄却する。
【判例のポイント】
1 本件高圧受電方式への変更をすることとした本件決議には、団地共用部分の変更又はその管理に関する事項を決する部分があるものの、本件決議のうち、団地建物所有者等に個別契約の解約申入れを義務付ける部分は、専有部分の使用に関する事項を決するものであって、団地共用部分の変更又はその管理に関する事項を決するものではない。
したがって、本件決議の上記部分は、法66条において準用する法17条1項又は18条1項の決議として効力を有するものとはいえない。このことは、本件高圧受電方式への変更をするために個別契約の解約が必要であるとしても異なるものではない。
2 そして、本件細則が、本件高圧受電方式への変更をするために団地建物所有者等に個別契約の解約申入れを義務付ける部分を含むとしても、その部分は、法66条において準用する法30条1項の「団地建物所有者相互間の事項」を定めたものではなく、同項の規約として効力を有するものとはいえない。
なぜなら、団地建物所有者等がその専有部分において使用する電力の供給契約を解約するか否かは、それのみでは直ちに他の団地建物所有者等による専有部分の使用又は団地共用部分等の管理に影響を及ぼすものではないし、また、本件高圧受電方式への変更は専有部分の電気料金を削減しようとするものにすぎず、この変更がされないことにより、専有部分の使用に支障が生じ、又は団地共用部分等の適正な管理が妨げられることとなる事情はうかがわれないからである。
また、その他上告人らにその専有部分についての個別契約の解約申入れをする義務が本件決議又は本件細則に基づき生ずるような事情はうかがわれない。
以上によれば、上告人らは、本件決議又は本件細則に基づき上記義務を負うものではなく、上告人らが上記解約申入れをしないことは、被上告人に対する不法行為を構成するものとはいえない。
控訴審の考え方はこうです。
「本件マンションにおいて電力は団地共用部分である電気設備を通じて専有部分に供給されており、本件決議は団地共用部分の変更又はその管理に関する事項を決するなどして本件高圧受電方式への変更をすることとしたものであって、その変更をするためには個別契約の解約が必要である。したがって、上記変更をするために団地建物所有者等に個別契約の解約申入れを義務付けるなどした本件決議は、法66条において準用する法17条1項又は18条1項の決議として効力を有するから、上告人らがその専有部分についての個別契約の解約申入れをしないことは、本件決議に基づく義務に反するものであり、被上告人に対する不法行為を構成する。」
一審及び控訴審の結論のほうが腑に落ちる気がしますがいかがでしょうか。
被控訴人側は、まさか最高裁でひっくり返されるとは思ってもいなかったでしょう。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。