おはようございます。
今日は、集会の招集通知において議題の記載に不適切(不十分)な点があるが、瑕疵が重大なものとはいえないとの理由から招集通知の効力が認められた事案(東京地判平成29年3月13日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、マンションの区分所有者である原告が、同マンションの管理組合である被告に対し、被告の理事に原告を選任することなどを会議の目的たる事項とする集会の招集請求をしたにもかかわらず、被告から招集通知が発せられなかったため自ら招集した集会において理事に選任され、理事会において理事長に選任されたとして、被告の理事長の地位にあることの確認を求める事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 集会の招集の通知に議題を示すこととされている(区分所有法35条1項本文)趣旨は、各区分所有者に集会の出席及び書面又は代理人による議決権行使(区分所有法39条2項)をするかどうかを検討するための資料を提供するところにあると解される。
そして、理事の解任の決議は特定の理事を解任するかどうかを決定することであるため、議題に解任の対象となる理事の氏名が記載されていなければ、各区分所有者に解任の対象となる理事が分からないため、集会の出席及び書面又は代理人による議決権行使を検討することができないから、集会の招集の通知には、解任の対象となる理事の氏名が記載される必要があるというべきである。
2 本件招集請求において、議案として、「役員の改選」との記載に加え、その内容の一つとして、Aの理事の解任が記載されているのに、被告招集通知にはその議題として「役員の改選」とのみ記載されていることが認められるに留まるので、被告招集通知において、解任の対象となる理事の氏名が記載されているとは認められない。
これに対し、被告は、まず、任期途中の役員の改選には理事の全員の解任の意味を含むため、Aの理事の解任は独立した議題とはならない旨主張するけれども、任期途中であっても、理事の一部を解任することを否定する理由はないので、任期途中の役員の改選は理事の全員の解任の意味を含むとの根拠は見いだせず、その前提を採用することができないので、被告のこの主張は採用することができない。
3 もっとも、被告招集通知において議題の記載に不適切な点があるとしても、上記のとおり被告招集通知と伴に送付された本件議案書には、表紙に被告臨時総会議案書との表題が記載されている上、本件議案書は4枚のものであり、その3ページ目には議題としてAの理事の解任が記載されている。
そのため、各区分所有者において解任の対象者の理事がAであることを容易に認識することができるから、集会の出席及び書面又は代理人による議決権行使をするかどうかを検討することができるといえる。
そうすると、被告の構成員である区分所有者において集会の出席及び書面又は代理人による議決権行使をするかどうかの検討をするのに実質的な支障がないといえるので、この瑕疵が重大なものとはいえない。
したがって、被告招集通知に記載された議題から、本件招集請求に基づく集会の招集の通知が発せられなかったとはいうことはできない。
招集通知において議題の記載に不適切(不十分)な点があると認定されましたが、瑕疵が重大なものとはいえないとの理由から救済されました。
招集通知の議題の記載には細心の注意を払いましょう。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。