おはようございます。
今日は、専有部分のインターホン設置工事が未完成にもかかわらず、民法536条2項に基づき請負代金請求が認容された事案(東京地判令和元年9月24日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、本件マンションの管理組合からインターホン設置工事を請け負った原告が、注文者である被告に対し、請負契約に基づき、代金403万9200円(消費税込)+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
請求認容
【判例のポイント】
1 本件インターホンシステムの住居インターホンの設置のためには、住居内に立ち入らなければならず、注文者側の協力が必要であるところ、原告は、201号室の工事予定日を事前に告知した上で、工事予定日である平成30年2月19日に同室を訪問したが、不在であったこと、そのため、原告は、201号室に不在連絡書を投函したが、同室の居住者から連絡はなかったこと、原告は、同年3月19日、C副理事長から連絡を受けたが、ロビーインターホンの画像が粗いことなどの話に留まり、201号室の住居インターホンの設置工事の許可を得ることはできなかったこと、原告は、同年4月19日の被告理事会において、C副理事長に対し、201号室の設置工事の許可を求めたのに対し、同人は「いたしかねます」などと述べて許可しなかったこと、さらに、原告は、同月25日、C副理事長に対し、書面でも、住居インターホン設置工事の許可及び立会可能な日程の回答を求めたが、同人は原告に連絡をしなかったことが認められる。
以上によれば、原告が201号室の住居インターホンの設置工事を行うことができず、本件請負工事を完成させることができなかったのは、同室の居住者であるC副理事長が設置工事を許可しなかったからであり、注文者である被告側に帰責性があるというべきである。
したがって、原告は、被告に対し、民法536条2項により、本件請負契約に基づき、その代金の支払を求めることができる。
旧民法ですが、危険負担に関連した事案です。
危険負担は、双務契約における一方の債務が履行不能に陥った場合に、もう一方の債務について、これを履行する必要があるか否か、という問題についての定めです。
旧民法536条では、同条1項で「双務契約において、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。」、同条2項「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。」と規定していました。
なお、民法改正により、規定内容が変更されているのでご注意ください。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。