おはようございます。
今日は、監事の携帯電話番号を認識していたにもかかわらず、総会招集通知に「監事の連絡先が不明」と記載したことが信用毀損にはあたらないとされた事案(東京地判平成29年9月26日)を見てみましょう。
【事案の概要】
本件は、本件マンションの区分所有者であり、同マンションの管理組合の監事であった控訴人が、本件管理組合の当時の理事長であった被控訴人Y1及び本件管理組合から管理業務を受託していた被控訴人会社に対し、被控訴人らが、本件管理組合の平成27年度定期総会招集通知に「監事の連絡先が不明で本人確認ができない」旨の虚偽の事実を記載したことにより控訴人の信用を毀損し、また、本件管理組合の当時の副理事長であったHに平成27年度監査報告書の監事欄に記名・押印をさせたことにより控訴人の監査業務を妨害したなどとして、不法行為に基づき、損害賠償として、連帯して580万円+遅延損害金の支払を請求した事案である。
原審は、本件招集通知の上記記載は虚偽の事実を記載したものと評価することはできず、また、被控訴人らが控訴人の監査業務を妨害したとも認めることはできないとして、控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴した。
【裁判所の判断】
控訴棄却
【判例のポイント】
1 控訴人は、Dが、被控訴人Y1及びFに対し、携帯電話番号を手書きした名刺を渡しており、被控訴人らは控訴人の連絡先を知っていたから、本件招集通知における「控訴人の連絡先が不明で本人確認ができない」との記載は虚偽である旨重ねて主張し、当審において、DがFに連絡先を伝えた旨の記載がある証拠を提出する。
しかしながら、本件マンションの管理規約は、理事会の招集は「管理組合に対し、組合員が届出をした宛先に発するものとする」(48条3項、39条)旨定めており、Dが伝えたという携帯電話番号は、控訴人が本件管理組合に届け出ていた電話番号とは違っており、また、控訴人の代表者も平成27年7月にEから現在の代表者に交代しているのであるから、本来、控訴人の方から、本件管理組合に届出事項の変更届を提出すべきであった。
しかるに、控訴人は、被控訴人会社から同変更届を提出するよう求められたにもかかわらずこれを提出せず、直接被控訴人らに連絡することもせず、被控訴人らは控訴人の代表者が交代したことを知らなかった。
そして、控訴人が本件管理組合に届け出ていた電話番号は不通となっており、控訴人は理事会も欠席していたこと、控訴人が監事としての職務を第三者に委任することができるかどうかはともかく、控訴人が被控訴人らや本件管理組合に監事としての職務を弁護士に委任した旨を伝えたことを認めるに足りる証拠はないことなどからすると、控訴人代理人弁護士と被控訴人会社との間で内容証明郵便でやり取りがされていたことを考慮しても、本件招集通知における「控訴人の連絡先が不明で本人確認ができない」との記載が虚偽の事実を記載したものであるとはいえないことは上記引用に係る原判決が説示するとおりである。
裁判所が、管理規約所定の手続を踏んだか否かを重視していることがよくわかります。
本件に限らず、裁判所は管理規約や使用細則の内容をとても重視する傾向にあります。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。