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ペット問題4 マンションの賃借人が、管理規約に違反して犬を飼育している上階の区分所有者を被告として、犬の飼育の差止めと損害賠償(慰謝料)を請求した事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、マンションの賃借人が、管理規約に違反して犬を飼育している上階の区分所有者を被告として、犬の飼育の差止めと損害賠償(慰謝料)を請求した事案(名古屋地判平成16年12月15日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの賃借人が、管理規約に違反して犬を飼育している上階の区分所有者を被告として、犬の飼育の差止めと損害賠償(慰謝料)を請求した事案である。

【裁判所の判断】

犬の飼育差止請求は棄却

慰謝料請求は一部認容

【判例のポイント】

原告Xは、賃借権に基づきY社(区分所有者)の所有権に基づく妨害排除及び予防請求権を代位行使して、原告Zは、占有権に基づき同上請求権を代位行使して、原告らは、被告らに対して犬の飼育中止を求めている。
しかしながら、被告らが本件建物2において犬を飼育し、犬が騒音を発することをもって、株式会社Yの所有権や原告Zの本件建物1の占有権が侵害されているとは言い難く、原告の上記主張は、主張自体失当で理由がない。

この裁判例は、損害賠償(慰謝料)については一部認容しましたが、犬の飼育の差止請求については棄却しました。

組合員個人がペットの飼育の差止め訴訟を提起する場合には、管理組合が原告となる場合とは異なる判断がされますので注意が必要です(前者のほうが後者よりも請求が認容されるハードルがはるかに高い。)。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

ペット問題3 区分所有者から賃借している者が管理規約に違反してペットを飼育している場合、区分所有者及び賃借人を被告としてペット飼育の差止め請求が認められた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有者から賃借している者が管理規約に違反してペットを飼育している場合、区分所有者及び賃借人を被告としてペット飼育の差止め請求が認められた事案(東京地判平成28年3月18日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本訴事件は、原告が、原告が管理するマンションの一室に居住する被告Y1及び同Y2が、本件建物の管理規約に違反し、上記居室内で犬を飼育しているとして、被告Y1及び被告Y2並びに上記居室の区分所有者である被告Y3に対し、管理規約に基づき、上記居室内でのペットの飼育禁止を求めるとともに、本訴被告らが犬の飼育を中止せず、原告らが本訴提起を強いられたことが不法行為に当たるとして、本訴被告らに対し、不法行為に基づき、弁護士費用82万6000円の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

本訴被告らは、本件建物内において犬を飼育してはならない

その余の請求は棄却

【判例のポイント】

1 ①本件居室の区分所有者であり賃貸人であるY2は、賃借人であるY1らが本件居室において本件ペットを飼育している事実を知っていたこと、②本件規約等によれば、本件建物の区分所有者は本件規則等の遵守義務を負い、また賃借人に対しても本件規則等を遵守させる義務を負うことについては当事者間に争いがない。そうすると、Y2は、賃借人であるY1らに対し、本件規則等を遵守し、本件ペットを飼育しないようにさせる義務を有していること、これをY2が履行できていないことは明らかであるから、被告Y2が、本件規則等につき債務不履行責任を負うことは明らかである。

2 原告は本件規約等の違反を理由としてペットの飼育禁止を求めていると解されるところ、このように債権的な請求を行う場合において、被告らの対応により原告が訴訟提起を強いられたとしても、これはあくまでも上記違反の是正を求める中での出来事であるから、この点のみを切り出して独立の不法行為と認めるのは相当とはいえない。
また、本訴の提起を強いられた事実が不法行為とは認められないことを前提として、我が国の民事訴訟において弁護士強制制度が採用されていないことを考慮すると、被告らの行為と原告による弁護士費用の支出との間に相当因果関係があると認めることもできない。したがって、原告による弁護士費用の請求には理由がない。

区分所有者から賃借している者が管理規約に違反してペットを飼育している場合には、区分所有者及び賃借人ともに被告としてペット飼育禁止請求訴訟を提起することが認められます。

なお、本裁判例においては、弁護士費用の請求は棄却されています。

区分所有に関する訴訟においては、どんな場合でも弁護士費用の請求が認められるわけではありませんので気を付けましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

ペット問題2 ペット飼育を禁止する管理規約に違反することを理由に飼育の差止めを認めた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、ペット飼育を禁止する管理規約に違反することを理由に飼育の差止めを認めた事案(東京地判平成19年10月4日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、管理組合である原告が、マンションの区分所有者かつ原告の組合員である被告らに対し、管理規約に違反して、犬を飼育しているとして、管理規約の規定及び区分所有法57条に基づき、その差止を求めるとともに、管理規約に違反する被告らの行為により訴訟提起せざるを得なかったとして、弁護士費用について、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 それぞれ考え方も事情も異なる多数の人々が一棟の建物を区分所有している場合において、区分所有の性質上、区分所有者は、自己の生活に関して内在的な制約を受けざるを得ないものである。区分所有法6条1項は、この内在的制約の存在を明らかにしており、その一棟の建物を良好な状態に維持するにつき区分所有者全員の有する共同の利益に反する行為を禁止しているところである。

2 この共同の利益に反する行為については、区分所有者は管理規約においてこれを定めることができるものとされ(同法30条1項)、マンションにおけるペット飼育の可否も、マンションの管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項として、当該マンションの団体自治に委ねられる事項である。
しかるに、本件マンションにおいては、管理規約によってペット飼育禁止を定め、これまで原告の総会においても、ペット飼育を可能とする提案について審議されたものの、これが否決されるなど、団体自治のルールの中で、区分所有者の多数の意思により、ペット飼育禁止が確認されてきているところである。
そうすると、管理規約に反してペットを飼育すること自体、具体的な被害の発生等がなくとも共同の利益に反する行為に当たるというべきである。

この裁判例でも、具体的な実害が生じていなかったとしても、管理規約に反してペットを飼育すること自体をもって共同利益背反行為であると認定しています。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

ペット問題1 動物の飼育を禁止する管理規約に違反することを理由に飼育の差止めを認めた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、動物の飼育を禁止する管理規約に違反することを理由に飼育の差止めを認めた事案(東京地判平成8年7月5日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの管理組合である原告が、その構成員であり、専有部分で犬を飼育している被告に対し、管理組合規約の規定に基づき、マンション内での犬の飼育の中止を求めるとともに、被告が原告の飼育中止の要請を拒否して犬の飼育を継続し、原告をして弁護士を依頼して本件訴訟を提起せざるを得なくさせたことが原告に対する不法行為に該当するとして損害賠償を請求した事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 マンションは入居者が同一の建物内で共用部分を共同して利用し、専有部分も上下左右又は斜め上若しくは下の隣接する他の専有部分と相互に壁や床等で隔てられているにすぎず、必ずしも防音、防水面で万全の措置が取られているわけではないし、ベランダ、窓、換気口を通じて臭気が侵入しやすい場合も少なくないのであるから、各人の生活形態が相互に重大な影響を及ぼす可能性を否定することはできない。したがって、区分所有者は、右のような区分所有の性質上、自己の生活に関して内在的な制約を受けざるを得ないものと考えられる。

2 具体的な実害が発生した場合に限って規制することとしたのでは、右のような不快感等の無形の影響の問題に十分対処することはできないし、実害が発生した場合にはそれが繰り返されることを防止することも容易でないことが考えられる。
したがって、規約の適用に明確さ、公平さを期すことに鑑みれば、右禁止の方法として、具体的な実害の発生を待たず、類型的に前記のような有形、無形の影響を及ぼす危険、おそれの少ない小動物以外の動物の飼育を一律に禁ずることにも合理性が認められるから、このような動物の飼育について、前記共同の利益に反する行為として、これを禁止することは区分所有法の許容するところであると解するのが相当である。
したがって、本件規定について被告の主張するような限定解釈を加える必要はなく、本件マンションにおいて犬を飼育することは、共同生活上の利益に対する具体的被害やその蓋然性の有無にかかわらず、それ自体で本件規定に違反する行為というべきである。

共同生活上の利益に対する具体的被害やその蓋然性の有無にかかわらず、動物を飼育すること自体で当該管理規約に違反すると判断されています。

被告としては、当該規定については限定解釈をすべきであると主張しましたが、裁判所は上記のとおり採用しませんでした。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。