義務違反者に対する措置3 1000万円超の管理費等の滞納を理由とする競売請求が認められた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、1000万円超の管理費等の滞納を理由とする競売請求が認められた事案(東京地判平成18年7月12日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、区分所有法上の区分所有建物であるマンションの区分所有者である被告が、管理費及び特別修繕積立費を支払わないため、マンション管理組合の集会において訴訟追行者として指定された原告が、被告に対し、法59条1項に基づき、被告の有する区分所有権及び敷地利用権の競売の申立てを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 区分所有者が支払う管理費等は、建物の共用部分及びその敷地の維持管理や修繕等の費用に充てられるものであるから、管理費等の支払義務は区分所有者にとって最も基本的な義務といわなければならない。
本件では、被告は、前記のとおり、本件物件の取得後、長年にわたって管理費等を滞納し、本件管理組合によりその支払を求められた訴訟において敗訴した後も、依然として滞納を続け、別件判決で支払を命じられた管理費等の額とそれ以降の分とを合計すると、現時点では1000万円を超える状況になっている。
そうすると、上記のような被告による管理費等の著しい滞納は、建物の共用部分等の管理等の面で、重大な支障を与えるものであることは明らかであるから、法6条1項にいう「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当し、それによる区分所有者の共同生活上の障害も、著しいものであると認めることができる。

2 被告による管理費等の著しい滞納及び本件管理組合における支障の程度等からすれば、本件については、法59条1項の競売の請求以外の方法によっては区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難である場合に該当するというべきである。
なお、本件管理組合としては、たしかに、被告滞納に係る管理費等の回収に当たり、別件判決を債務名義として、本件物件について強制執行の申立てをすることができ、また、法7条に基づき、共益費用として、本件物件の上に先取特権を有する(民法306条1号)から、これを実行することも可能ではあるが、本件物件には、整理回収機構が3000万円を極度額とする根抵当権を有していることが認められ、この事実に基づいて考えると、登記された前記根抵当権が他に優先して存在する以上、本件管理組合において、上記の各方法を採ったとしても、前記のような多額の滞納管理費等の回収を図ることは困難であると考えられ、これらの方法によるべきものであるとはいい難い。

管理費等の不払いも、その期間や金額によっては、共同利益背反行為になります。

もっとも、59条競売は共同利益背反行為であれば当然に認められるわけではなく、補充性の要件を満たす必要がありますので注意が必要です。

そして、この補充性の要件との関係で、本裁判例でも問題となっている7条先取特権との関係が問題となりますので、事前に不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。