おはようございます。
今日は、防犯カメラの設置に係る配線の所有権の帰属主体(東京地判平成31年2月22日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、マンション管理組合との間で賃貸借契約を締結して防犯カメラ等を設置した原告が、マンション管理組合に対し、無断で防犯カメラ等が撤去された旨主張し、賃貸借契約の約定に基づき、解除に伴う違約金の支払を求めるともに、同管理組合、マンションの管理受託会社及び新たに防犯カメラ等を設置した会社に対し、防犯カメラの設置に係る配線等について、所有権に基づく引渡しを求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 ①本件賃貸借契約の契約書には、本件賃貸借契約の目的物として本件配線等が掲げられていないこと、②原告は、本件防犯機器の設置に際し、被告管理組合に対し、本件防犯機器の設置費と共に配線工事費を請求し、被告管理組合はこれを支払っていること、③本件配線等の財産的価値は、配線工事費に比して僅少であること、④本件配線等は、本件マンションの構造を踏まえ、防犯機器の設置箇所に適合するよう設置されたものであること、⑤本件配線等を撤去した場合、本件マンションにビスの痕や塗装の剥離等の物理的な損傷が生じること、以上の事実が認められる。
かかる事実に照らせば、本件配線等は本件賃貸借契約の目的物に含まれているとは認められず、被告管理組合は、本件配線等の設置費用のほか、本件配線等そのものの代金をも負担することにより、その所有権を取得したと認めるのが相当である。
仮に、被告管理組合が本件配線等の代金を負担していると認められないとしても、上記認定事実⑤に照らせば、本件配線等は本件マンションに付合しているというべきであるから、いずれにせよ、被告管理組合が本件配線等の所有権を取得したと認められる。
したがって、原告は本件配線等を所有していない。
形式的に見れば、①の理由だけでも勝負ありかと思いますが。
弁護士費用との関係でみれば、訴訟にまで発展するのは誰得な状況です。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。