名誉毀損7 管理費等の長期滞納者の氏名や部屋番号を広報誌に掲載したことが名誉毀損に該当しないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理費等の長期滞納者の氏名や部屋番号を広報誌に掲載したことが名誉毀損に該当しないとされた事案(東京地判平成31年3月5日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本訴事件は、マンションの区分所有者である原告が、当該マンション管理組合である被告に対し、被告が原告を管理費等の長期滞納者として広報誌に掲載したこと等が原告に対する不法行為に該当するとして、不法行為に基づく損害賠償として慰謝料100万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

反訴事件は、被告が、原告による本訴提起は不当訴訟に当たるとし、原告に対し、不法行為に基づく損害賠償として弁護士費用相当額20万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

本訴請求棄却

反訴請求棄却

【判例のポイント】

1 原告が被告に対し、原告の滞納管理費等についての解決案を提案した際、被告が応じなかったこと、被告が長期滞納者対策特別委員会を設置して原告に対する対策を協議するなどし、定期総会において、区分所有法59条に基づき本件居室の競売請求をする旨を議題としたこと、被告が、広報誌(平成20年8月号)に原告の室番号及び名前を記載して長期滞納者訴訟を提起する旨記載し、同じく広報誌(平成23年1月号)に原告に対する判決内容を記載したことが認められる。

2 被告によるこれらの対応が原告に対する名誉棄損や村八分として不法行為を構成するか検討すると、原告は、平成12年12月以降、長年にわたって管理費等を支払わなくなり、そのため、被告は、平成16年頃にこれらの支払を求める訴訟を提起し、平成17年頃には原告に対して支払を命じる旨の判決が確定したが、依然として原告は管理費等を支払わなかったこと、平成20年8月28日には原告以外の本件居室の区分所有者が本件居室に係る管理費等の一部を供託し、平成22年5月28日までの間に、原告を含めた本件居室の区分所有者が、同日までの管理費等の元金に相当する額の供託するに至ったものの、なお、既発生の遅延損害金が支払われておらず、被告として訴訟提起に至ったこと等の事実が認められ、これらの状況に照らすと、被告において、原告が不払を続けていた管理費等の回収を目標として各種対策を講じる必要があったことは明らかであり、前記の被告によって講じられた各種対策は、いずれも合理的事情に基づくものと評価することができるから、原告に対する関係で名誉棄損ないし村八分として不法行為を構成するとは認められず、他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。

2 本訴は、原告が被告から名誉棄損や村八分に当たる行為を受けたなどとして、被告に対して不法行為に基づく損害賠償請求をする事案であり、被告の行為が原告に対する不法行為を構成するとは認められないものの、被告としても、原告の氏名や室番号を長期滞納者として広報誌に掲載するなどの対応をしていたのであり、これが不法行為に該当するか否かは、少なくとも原告による管理費等の滞納の事情を踏まえるなどして検討する事柄であるといえ、そうすると、原告の主張する内容がおよそ事実的、法律的根拠を欠くものであるとまで断定することはできない。
そうすると、原告による本訴提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認めることはできず、これが被告に対する不法行為を構成するとは認められない。

広報誌掲載にあたり合理的事情が存在するという理由から、名誉毀損にはあたらないとされました。

もっとも、訴訟に発展していることから、一定の経済的負担が発生してしまいます。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。