おはようございます。
今日は、管理組合法人に対する駐車場契約者以外の者の立入禁止請求が棄却された事案(東京地判令和元年9月5日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
1 立入禁止請求
ア 被告は、本件マンションの管理組合法人として、本件駐車場の所在する別紙添付図面のオレンジ色で囲んだ部分に、本件駐車場の契約者以外の者をして立ち入らせてはならない義務を負う。
イ よって、原告は、被告に対し、本件駐車場にその契約者以外の者の立入りの禁止を求める。
2 義務確認請求
ア 前記1アと同じ。
イ 原告は、長年にわたり、被告に対し、本件駐車場への第三者の立入りを禁止するよう善処を求めてきた。
ウ 本件駐車場内において事故が発生した場合には、原告は施設占有者ないし所有者として民法717条によりその責任を負うことになりかねない。
エ よって、原告は、被告に対し、本件訴えを提起した平成29年10月13日から本判決確定の日までの間に、本件駐車場内においてその契約者以外の者が事故に遭遇した場合、被告の責任においてこれを解決する義務があることの確認を求める。
3 費用弁償金請求
ア 前記1アと同じ。
イ 被告が前記1アの義務に違反したために、平成21年3月1日から本判決確定の日までの間、第三者が本件駐車場へ立ち入っており、原告は、本件駐車場の維持管理について、年間379万1549円の費用を負担している。
ウ よって、原告は、被告に対し、前記イの義務違反に係る不法行為に基づき、又は民法212条の類推適用により、平成21年3月1日から本判決確定の日まで1箇月当たり5万円の割合による費用相当額の損害賠償金の支払を求める。
【裁判所の判断】
1 原告の義務確認の訴えを却下する。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
【判例のポイント】
1 原告は、被告の責任において本件駐車場内の事故を解決する義務がある旨を主張するが、「事故」や「解決」の意味が多義的であって、上記義務の内容は不明確といわざるを得ない。
そして、そもそも上記の確認の対象は、現在の法律関係ではなく、過去の一時点における法律関係であって、その確認を求める訴えにつき原則として確認の利益を認めることができないものであるところ、上記訴えにつき確認の利益を認めるべき特段の事情は見当たらない。
これらの点を措くとしても、本件駐車場内の事故が解決されることは、原告にとって事実上の利益にすぎず、上記事故が解決されなかったことによって、直ちに原告の法律上保護すべき権利利益が侵害されることにならないから、上記事故が解決しないことが被告の上記義務違反によるものであったとみる余地があると仮定しても、これが原告に対する不法行為に該当するものであるとして、被告が原告に対して損害賠償責任を負うことになるものではない。
そして、確認の利益は、確認判決を求める法律上の利益であるところ、被告の責任において本件駐車場内の事故を解決する義務があることを確認する判決の効力は、上記義務に関する法律上の紛争の解決に資するものとはいえないから、原告に上記判決を求める法律上の利益はないというべきである。
したがって、原告が被告に対して本件駐車場内においてその契約者以外の者が事故に遭遇する場合に被告の責任においてこれを解決する義務があることの確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法であるというべきである。
2 本件駐車場の契約者以外の者は、本件マンションの区分所有者又は占有者に限られない上、本件駐車場の契約者以外の者に対して本件駐車場への立入りを禁止する旨の規約が本件マンションの管理規約にあるとは認められないのであるから、被告は、本件マンションの管理組合法人であることによって、本件駐車場の所在する別紙添付図面のオレンジ色で囲んだ部分に立ち入った本件駐車場の契約者以外の者の行動を制御することができない。
そして、原告が長年にわたり被告に対して本件駐車場への第三者の立入りを禁止するよう善処を求めてきたことを前提にしても、被告が原告に対し本件駐車場への第三者の立入りを禁止することを約束した旨の主張も立証もなく、被告が原告に対して前記の義務を負う法的根拠は見当たらない。
したがって、その余の請求に係る原告の主張は、いずれも前提を欠き、採用することができない。
上記判例のポイント1のような確認請求では、確認の利益がないと判断され、訴えが却下されてしまいます。
確認を求める訴えを提起する場合は、確認の対象をどのように設定するかを慎重に考える必要があります。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。