管理会社等との紛争17 各居住者に対するアンケートについての管理会社の妨害行為が不法行為に当たらないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、各居住者に対するアンケートについての管理会社の妨害行為が不法行為に当たらないとされた事案(東京地判令和元年10月3日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告らが当時居住していた集合住宅を一棟買いするために各居住者に対してアンケートを配布した際、被告が文書を掲示して同アンケートを妨害したことが、原告らに対する不法行為に当たるとして、原告らが被告に対し、不法行為に基づき、アンケートに対する妨害の禁止並びに損害賠償金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件アンケートの内容からすれば、本件アンケートは、一般人の通常の注意と読み方を基準にした場合、国土交通省が居住者の同意を条件に原告X1による本件建物の購入に同意した旨が記載されていると認められる。しかしながら、本件建物の区分所有者であった公団は売却可能な賃貸住宅は居住者の同意を得て棟単位で売却に努めるとの方針が示されていたことや、原告X1は国土交通省の担当者に対し、本件建物1棟の価格を尋ね、居住者の同意を得て一棟買いの交渉に入る旨を述べ、さらには担当者との面会を求めたことが認められる一方で、そもそも国は本件建物の所有者ではないことも認められる。
そして、本件において国土交通省側が原告X1の上記申入れ等に対して何らかの返答をした事実を認めるに足りる証拠はない。
これらからすれば、国土交通省が居住者の同意を条件に原告X1による本件建物の購入に同意したという事実は存在しないものと認めざるを得ない。
そして、被告は機構から本件建物の管理業務を受託していることが認められる上、一般に賃借人にとって賃貸人たる所有者が変更になるか否かは重要な関心事項であるから、被告が本件文書の掲示によって本件アンケートに記載された事実は存在しない旨を各賃借人に周知した行為は、賃借人に誤解を与えないための管理者として正当な行為であると認められる。
そうすると、たとえ被告の本件文書の掲示により、原告が204戸中わずか9戸の住人からしか本件アンケートの回収ができなくなる等の不利益を被ったとしても、被告が本件文書を掲示した行為は、原告らに対する不法行為を構成しないものというべきである。

事案が少しわかりにくいと思いますが、事実と相違する内容のアンケート配布に対して管理会社が各居住者に対して周知活動を行ったという事案です。

裁判所は、管理会社の行為を正当な行為と認定し、原告の請求を棄却しました。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。