管理費・修繕積立金19 管理組合に対する訴訟無能力者確認等請求が二重起訴にあたるとされ不適法却下された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合に対する訴訟無能力者確認等請求が二重起訴にあたるとされ不適法却下された事案(東京地判令和元年11月21日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、東京都江東区所在のマンションの区分所有者である原告が、同マンション管理組合である被告に対し、被告が原告に対して管理費等の支払を求める別件訴訟を提起したことに関連して、①権利能力なき社団である被告には、資産や財産がないこと等から、原告に対する金銭請求権はないことの確認を求めるとともに、②前記別件訴訟は、被告が区分所有者全員から委任を受けずに提起するなどした違法なものであるとして、不法行為に基づく損害賠償として、原告の応訴の負担に係る慰謝料10万円の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

訴え却下

【判例のポイント】

1 原告は、平成31年2月27日、別件訴訟において、被告が資産ないし財産を有しないにもかかわらず別件訴訟を提起したことは原告に対する不法行為であるとして、その応訴の負担にかかる10万円の損害賠償を求める反訴を提起しており、同反訴にかかる反訴状は同年3月26日に被告に送達され、現在も東京簡易裁判所に係属中であることが認められる。
原告は、本件訴訟において、被告が区分所有者全員から委任を受けていないなどの状況で別件訴訟を提起したことが不法行為であるとして、その応訴の負担にかかる慰謝料10万円の損害賠償を求めているところ、同請求は、前記認定の別件訴訟における反訴請求と同じく、被告が別件訴訟を提起したことを不法行為として、その応訴の負担に係る損害を10万円として同金員の支払を請求するものであるから、両請求は、当事者及び訴訟物を同一にするものであると認められる。
そして、本件訴訟は、前記反訴状が被告に送達された後に提起されたものであるから、二重起訴の禁止規定(民訴法142条)に抵触する不適法な訴えであるというべきである。

2 これに対し、原告は、本件訴訟と別件訴訟における反訴請求とでは、請求原因等が異なるから二重起訴ではない旨主張するが、別件訴訟における反訴請求と本件訴訟とは、原告自身が設定した違法事由が異なるに過ぎず、これをもって訴訟物が異なると解することはできないから、前記主張には理由がない。

あえて本件訴訟を提起する必要はなく、既に係属している別訴の中で判断してもらえばいいですね。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。