ペット問題5 区分所有者である被告が、複数の猫に継続的に餌やりを行ったため、糞尿等による被害を被ったとして、本件建物の原告管理組合及び同建物の区分所有者である個人原告らが、本件建物の敷地等での猫への餌やりの差止めを求めるとともに、個人原告らが損害賠償を求めた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有者である被告が、複数の猫に継続的に餌やりを行ったため、糞尿等による被害を被ったとして、本件建物の原告管理組合及び同建物の区分所有者である個人原告らが、本件建物の敷地等での猫への餌やりの差止めを求めるとともに、個人原告らが損害賠償を求めた事案(東京地立川支判平成22年5月13日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告管理組合を除く原告ら及び被告は、区分所有法の適用のある本件タウンハウスに居住している。本件は、本件タウンハウスの一部の区分所有者である被告が複数の猫に継続的に餌やりを行い、糞尿等による被害を生じさせたことは、区分所有者の共同の利益に反し(同法61条1項)、本件タウンハウスの規約(原告管理組合規約)にも違反すると主張して、原告管理組合は同法57条1項又は原告管理組合規約に基づき、個人原告らは人格権に基づき、本件タウンハウスの敷地及び被告区分建物内での猫への餌やりの差止めを求めるとともに、原告らが不法行為に基づく慰謝料(原告管理組合を除く。)及び弁護士費用の損害金並びに遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

原告管理組合の差止請求認容

個人原告らの差止請求認容

被告は、次の各原告に対し次に記載の各金員+遅延損害金を支払え。
(1) 原告管理組合 30万円
(2) 原告X2 12万円
(3) 原告X3 9万円
(4) 原告X4 9万円
(5) 原告X5 9万円
(6) 原告X6 9万円
(7) 原告X7 9万円
(8) 原告X8 9万円
(9) 原告X9 3万6000円
(10) 原告X10 3万6000円
(11) 原告X11 12万6000円
(12) 原告X12 12万6000円
(13) 原告X13 15万6000円
(14) 原告X14 9万6000円
(15) 原告X15 15万6000円
(16) 原告X16 9万6000円
(17) 原告X17 12万6000円
(18) 原告X18 12万6000円

【判例のポイント】

1 原告管理組合の動物飼育禁止条項は、一律に動物の飼育を禁止しているものではなく、「他の居住者に迷惑を及ぼすおそれのある」動物を飼育しないことと定めているものではあるが、このような限定は、小鳥や金魚の飼育を許す趣旨は含んでいるとしても、小型犬や猫の飼育を許す趣旨も含むものとは認められない

2 野良猫に餌やりを行えばそれらの猫はその場所に居着いてしまうことを知っていたのに、被告は、平成14年11月ころ、原告X12から糞の被害等の申告を受け改善を求められた以降、Aの主導により猫の不妊去勢手術の費用を負担し、餌の選択、猫除けの装置の配布、里親探しを行ったとはいえ、各戸が壁を共有して接しており、一戸建て住宅が並んでいる住宅地における場合以上に話し合いが求められる本件タウンハウスにおいて(この点は、不法行為の成否の判断においても、地域性として考慮すべきである。)、最も合意の形成に努めるべき個人原告らとの話し合いの最大の機会である原告管理組合の総会のほとんどを欠席し(被告の仕事の関係で日曜日の総会に出席できないのであれば、他の曜日に話し合いの機会を持つことを提案すべきであった。)、平成19年11月に、地域猫活動で重要といわれている糞のパトロール及び猫用のトイレの設置を開始したものの、被告が行っている4匹の猫への餌やりは、住みかまで提供する飼育の域に達しているのに、被告北側玄関に現れることの多い猫2匹についてのトイレの配慮が十分でなく、糞のパトロールの回数も不十分であることに加え、餌やりの点でも、風で飛んでしまう可能性のある新聞紙等を使用する方法や餌やり終了後の始末が遅い点で更に改善を要する点があるなど、猫への餌やりによる個人原告らに対する被害は依然として続いているものであり、現時点での活動であっても、受忍限度を超え、個人原告らの人格権を侵害するものと認められる。

3 原告管理組合の差止請求については、原告管理組合規約違反に基づき、本件土地及び被告専有部分内において、猫に餌を与えてはならないことを認容すべきである。個人原告らの差止請求は、人格権侵害に基づき、本件土地において、猫に餌を与えてはならないことを求める限度で認容すべきである。

管理組合のみならず、組合員個人による差止め請求についても認容されています。

また、組合員個人(17名)につき、1人当たり3万円~13万円の慰謝料が認容され、合計金額ではかなりの金額になっています。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。