漏水事故6 漏水事故による原状回復工事完了までの転居費用の算定方法(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、漏水事故による原状回復工事完了までの転居費用の算定方法(東京地判令和3年4月21日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告が被告に対し、被告の所有するマンションの一室で発生した漏水事故により、原告が使用していた一室が居住不能となって、原状回復工事完了までの間、一時的に別の場所に転居せざるを得なかった上、原状回復工事の際に工事業者が原告所有の冷蔵庫を使用不能にしたとして、不法行為に基づき、一時的な転居により生じた損害126万円、冷蔵庫の購入価格23万8000円の損害賠償金合計149万8000円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

被告は、原告に対し、34万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 当該電気温水器からの漏水は、本件事故発生から20年以上前に設置された当該電気温水器のヒーター部分のパッキン劣化によるものであることからすれば、被告が相当期間にわたり、パッキンの交換や電気温水器の点検を怠っていたことが推認され、本件事故が生じたことにつき、被告に過失があったと認めるのが相当である。

2 原告は、本件事故により、一時的に本件イベントスペースに転居したため、本件イベントスペースを顧客に貸すことができなかったところ、本件イベントスペースを貸し出すことで1日あたりに得られるレンタル料は3万円を下らないとし、一時的な転居による損害が126万円(3万円×42日間)であると主張する。
しかしながら、原告が、本件イベントスペースに転居しなければならない合理的な理由はなく、本件物件の面積が22.05m2であることや、一般に一時的に数日間転居する場合にかかる費用等にかんがみれば、原告が、本件物件から一時的に転居したために生じた損害のうち、本件事故と相当因果関係のある損害は、34万円(1万円×34日間)と認めるのが相当である。

3 原告は、本件工事中に本件工事業者が原告所有の冷蔵庫をへこませて使用不能にしたと主張するが、これを認めるに足りない。

漏水事故に限らず、不法行為事案における損害額の算定は解釈が多分に含まれるため、一定程度の専門性が要求されます。

素人の方がなんとなく交渉すると損をしてしまうので気を付けましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。