おはようございます。
今日は、民法235条1項(目隠し設置義務)に基づく窓の仕様変更請求が棄却された事案(東京地判令和3年3月18日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、原告が、原告が居住するマンション敷地の隣地である本件土地上に本件建物の建設を計画している被告に対し、民法235条1項(目隠し設置義務)に基づき、本件建物の上記マンションに面した窓の仕様の変更を求める事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 民法235条1項は、相隣者間の不動産相互の利用関係を調整することを目的に、絶えず相隣者から私生活を眺められているような気持ちを抱かざるを得ないような状況において、当該相隣者に対して一定の配慮を求めるための義務を課したものというべきであるから、同項の「他人の宅地を見通すことのできる窓」とは、一般人が目隠し設置義務の対象となり得る建物等で日常生活を営むに際して、特別の作業等を要することなく、日常的な行動をしているだけでも容易に相隣者の宅地を見通すことができるような窓のことをいうと解するのが相当である。
2 この点、本件仕様を前提にすると、窓が閉められている場合や鍵付きストッパーにより開放幅が制限されている場合には、目隠し設置義務に関して被告において何らかの措置を講ずる必要がないことは当事者間に争いがない。
また、被告は、本件建物の竣工後は、本件仕様に係る鍵付きストッパーの鍵を入居者には交付せず、建物管理会社において保管させることとしており、当該ストッパーが解除されるのは、賃借人が入れ替わる機会に窓ガラスの外側の清掃作業を行う場合のみであると主張しており、賃貸物件の管理方法としてその内容に特段不合理な点は見当たらない。
3 以上によれば、本件南側窓が「他人の宅地を見通すことのできる窓」といえるか否かは、被告の主張する管理方法を前提として判断すべきであり、これによれば、本件建物に居住することが予定される者においては、容易に本件仕様に係る鍵付きストッパーを取り外すことはできず、その場合には、本件南側窓を開放した隙間からは原告マンションの壁が見えるのみなのであるから、本件南側窓は、日常的な行動をしているだけでも容易に相隣者の宅地を見通すことができるような窓とはいえない。
そうすると、本件南側窓は「他人の宅地を見通すことのできる窓」には該当しないから、原告の請求には理由がない。
民法235条1項には「境界線から一メートル未満の距離において他人の宅地を見渡すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。」と規定されています。
実務においては、上記判例のポイント1のあてはめが問題となります。
是非、裁判所の考え方を押さえておきましょう。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。