管理会社等との紛争6 管理組合が弁護士に対して訴訟追行等に関する弁護士費用の返還請求をしたが棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合が弁護士に対して訴訟追行等に関する弁護士費用の返還請求をしたが棄却された事案(東京地判令和2年2月19日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告が、弁護士である被告との間で複数の訴訟等の追行に関する委任契約を締結し、着手金等を支払ったが、それらの委任契約は無効であるから、被告はそれらの委任契約に基づき受領した金員を法律上の原因なく利得し、そのために原告は損失を受けたと主張して、被告に対し、不当利得返還請求権に基づき、416万8800円及びこれに対する遅延損害金の支払を認める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 原告は、本件各委任契約が無効である理由について、被告には本件委任契約締結当初からそれらに基づく債務を履行しようとする意思はなく、被告が着手金等を詐取しようとしていたことは明白であるとしか主張していないところ、そのような事実があったとしても本件各委任契約が当然に無効となるものではないから、原告の主張は、主張自体失当である。

2 第1事件については、平成30年4月18日に判決が言い渡されて委任事務が終了し、第4事件については、被告又は所属弁護士が口頭弁論が終結されるまで訴訟を追行し、第5事件については、被告又は所属弁護士が解任されるまで7回の口頭弁論期日に出廷し、訴状及び準備書面1ないし3並びに甲第1号証ないし第30号証を提出し、第6事件については、強制執行停止決定を受けて委任事務が終了し、第7事件については、紛議調停が不成立で終了するまで手続を行って委任事務が終了したことがそれぞれ認められるところ、それにもかかわらず、被告に本件各委任契約締結当初からそれらに基づく債務を履行しようとする意思がなかったとか、被告が着手金等を詐取しようとしていたと認めることができるだけの証拠はない。したがって、本件各委任契約が無効であると認めることはできない。

3 したがって、原告が被告に対し本件各金員について不当利得返還請求権を有すると認めることはできないから、原告の請求は理由がない(なお、仮に被告が本件各委任契約について債務の本旨に従った履行をしなかったとすれば、原告が被告に対し債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができる場合があるが、本件の請求はそのような請求ではない。)。

本件は、管理組合が原告となり、委任契約を締結していた弁護士に対して弁護士費用について不当利得返還請求をした事案ですが、原告側には代理人がついておらず、適切な法律構成がなされておらず、結果として請求棄却となっています。

上記判例のポイント3のとおり、法律構成如何によっては請求が一部認められた可能性は0ではなかったと思います(もっとも、上記判例のポイント2を読む限り、可能性はそれほど高くないように思いますが)。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。