おはようございます。
今日は、12年前の定期総会における特別決議の瑕疵(頭数要件の欠缺)を主張することは権利濫用にあたるとされた事案(東京地判令和2年9月10日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、本件マンションの区分所有権を有する原告らが、本件マンションの管理組合である被告に対し、平成19年1月28日に開催された被告の第18期定期総会においてされた本件特別決議が無効であることの確認又はこれと選択的に本件特別決議が不存在であることの確認をそれぞれ求める事案である。
なお、被告は、原告X1社は、本件特別決議において賛成しており、平成31年になって本件特別決議に疑義を呈するまで一度も異議を述べたことはなかったのであり、原告X1社の本訴請求は、禁反言、信義則違反又は権利濫用に当たる旨主張する。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 原告X1社は、本件特別決議当時、総議決件数10万のうち当時4万1664個もの議決権を有しており、自ら同決議に賛成していたこと、本件特別決議の後に議事録の配布を受けて頭数要件を欠いていたことを認識し得たこと、本件特別決議がされた翌年の本件19期定期総会の議案説明書において4名の理事を推薦する旨及び役員の資格が現に居住する組合員となっているとの記載があったところ、同総会の議案について議決権行使を一任する委任状を提出していること、その後の定期総会議事録には3名を超える理事の選任が記載されていること、にもかかわらず平成31年に至るまで何らの異議も唱えず、むしろ本件管理規約第31条の改訂の議案を含む本件24期定期総会の議案についても議長に一任する委任状を提出していたことが認められる。
そうすると、仮に平成31年になって初めて本件特別決議の有効性について具体的疑問が生じたとしても、議事録の配布によって決議の手続的瑕疵について知り得たのに、本訴提起まで12年間にわたり何らの手続とることもなかったこと、他方で、築後31年を経過する本件マンションにおいては、13年ぶりの大規模修繕工事を予定しており、そのための契約締結時期を本件訴訟の動向を踏まえて検討することとしていることが認められ、本件特別決議が無効とされることにより本件マンションの管理・運営に及ぼす影響は小さくないことも併せ考慮すれば、本件特別決議による本件管理規約の改正は、理事の資格について法人を除外する結果になるものであり、重要なものであったものの、自ら賛成し長年にわたって何らの異議も唱えていなかった原告X1社が、12年も後になって、3名の区分所有者の不足という不備を捉えて本件特別決議の瑕疵を主張するのは、権利濫用であるといわざるを得ない。
2 原告X2社は、本件特別決議当時区分所有者ではなかったものの、平成23年4月15日に原告X1社から本件マンションの専有部分を譲り受けた後、本件24期定期総会には議長に議決権行使を委任する委任状を提出しており、議案に反対していなかったことが認められる。
そして、原告X2社は、本件特別決議に賛成した原告X1社から専有部分を譲り受けたことにより区分所有者になったところ、原告X1社と取締役2名が同一であり、同社の取締役が原告X2社の監査役を務めているなどの関係性、他方で、本件マンションにおいては、13年ぶりの大規模修繕工事を予定しており、そのための契約締結時期を本件訴訟の動向を踏まえて検討することとしていることが認められ、本件特別決議が無効とされることにより本件マンションの管理・運営に及ぼす影響は小さくないことを併せ考慮すると、原告X2社が本件特別決議の瑕疵を主張するのは、やはり権利濫用であるというべきである。
仮に総会の運営上、手続的瑕疵が存在する場合でも、本件のような事情があれば権利濫用となり総会決議無効確認請求は認められません。
裁判所がどのような事情をピックアップして権利濫用と認定しているのか、是非参考にしてください。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。