管理組合運営13 管理組合法人の理事として登記されているが、被告が原告を代表すべき理事の地位にないことを争っていない場合における訴えの利益の有無(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合法人の理事として登記されているが、被告が原告を代表すべき理事の地位にないことを争っていない場合における訴えの利益の有無(東京地判令和2年9月29日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンション管理組合法人である原告を代表すべき理事が同マンションの区分所有者であるAであることを前提として、原告が、原告の理事として登記されている被告に対し、被告が原告を代表すべき理事の地位にないことの確認を求めるとともに、Aが原告を代表すべき理事の地位にあることの確認を求める事案である。

これに対し、被告は、①Aは原告の理事ではないから、本件訴えは原告の代表権を有する者により提起されておらず、また、②被告が原告の理事でないことは当事者間に争いがなく、本件訴えには確認の利益がない、と主張して、本件訴えの却下を求める。

【裁判所の判断】

訴え却下

【判例のポイント】

1 被告は、本件訴訟において一貫して、現在自らが原告の理事でないことを認めている。
このように、被告自身が「被告が原告を代表すべき理事の地位にないこと」を争っておらず、そのことにつき当事者間で争いがない以上、被告が未だ原告の理事として登記されていることを考慮しても、「被告が原告を代表すべき理事の地位にないこと」を判決により確認する必要があるとはいえないから、本件請求に係る訴えには訴えの利益(確認の利益)が認められず、同訴えは不適法である。

2 原告は、原告と被告との間で原告の理事長がAであるか否かを確認することは原告の理事長の地位に関する紛争解決のために最も適切かつ有効な方法である旨主張する。
しかしながら、被告は本件訴訟において一貫して自らが原告の理事ないし理事長の地位にないことを認めているから、被告を相手取ってAの地位確認を請求しても、真に利害関係が対立する当事者間で訴訟が係属することにならず(本件は、原告の理事長が被告とAのいずれであるかが争われているような事案ではない。)、充実した訴訟追行を期待することはできないし、紛争の抜本的解決に資するものとはいえない。
したがって、本件請求に係る訴えは、確認の利益を欠くもの(あるいは、被告に当事者適格が認められないもの)として、不適法である。

当事者間に特に争いのない内容のため、確認の利益を欠くとされた珍しい裁判例です。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。