騒音問題1 生活騒音(深夜の洗濯機使用)の差止請求が立証不十分を理由に棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、生活騒音(深夜の洗濯機使用)の差止請求が立証不十分を理由に棄却された事案(東京地判令和3年6月24日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告が、集合住宅の上の階に居住する被告に対し、被告が深夜に洗濯機を使用することにより原告の居室に受忍限度を超える騒音が到達し、原告の人格権を侵害していると主張して、不法行為に基づき、騒音の差止めを求めるとともに、原告に対する慰謝料+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 原告は、被告が午後10時から午前7時までの深夜帯に洗濯機及び乾燥機を稼働させることにより原告に受忍限度を超える騒音被害を与え、これが被告の原告に対する不法行為に当たる旨を主張し、近隣の者が被告による騒音を確認した書面であるとする騒音確認書を提出するとともに、原告居室の騒音を計測した計測器を撮影したとする写真写しを提出する。
しかし、騒音確認書の各記載は、「502号室を起因とする、騒音の確認をしました」という印字された文書に作成者が日付と署名、押印をしたものに過ぎず、被告が、いつ、どこで、どの程度の強度の騒音をどの程度の時間発したものかすら特定できていないものであり、同証拠によっても、被告が本件行為に及んだことについて客観的な裏付けがされたということはできない。
また、計測写真についても、音量測定器に45デシベル以上の表示がされた状態を撮影した写真であることは認められるものの、何の音を計測したものかは不明であり、同証拠によっても、被告が本件行為に及んだことについて客観的な裏付けがされたということはできない。
以上によれば、被告により原告に社会生活上受忍すべき限度を超える騒音が到達していたと認めることはできない。

生活騒音については、通常、慰謝料請求のほか、人格権ないし所有権に基づく妨害排除請求権としての生活騒音の差止め請求を行うことが多いですが、まずは騒音の「存在」及び「原因」の特定・立証が求められます。

本件では、立証不十分のため請求が認められませんでした。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。