管理費・修繕積立金4 管理規約に弁護士費用を負担させる旨の規定が存在しない場合に、弁護士費用を負担させる旨を定めた総会決議が無効とされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

管理規約に弁護士費用を負担させる旨の規定が存在しない場合に、弁護士費用を負担させる旨を定めた総会決議が無効とされた事案(東京高判平成7年6月14日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、管理規約に弁護士費用を負担させる旨の規定が存在しない場合に、弁護士費用を負担させる旨を定めた総会決議の効力が争われた事案である。

【裁判所の判断】

総会決議は無効

【判例のポイント】

1 区分所有法18条1項本文は、共用部分の管理に関する事項は、同法17条の場合を除いて、集会の決議で決するものと規定しているところ、管理費等の支払に関する事項が共用部分の管理に関する事項に当たることは明らかであるから、管理費等の取立訴訟を提起するために必要な弁護士費用の負担に関する事項もまた、共用部分の管理に関する事項に当たるものということができる。ところで、共用部分の管理に関する事項に当たる場合にも、集会で決議することのできる内容には自ずから一定の制限があると解される。すなわち、例えば、特定の組合員に対して、その意に反して一方的に義務なき負担を課し、あるいは、他の組合員に比して不公正な負担を課するような決議は、集会が決議できる範囲を超えたものとして無効というべきである。

2 これを本件についてみると、控訴人は、被控訴人に対し、債務不履行に基づき弁護士費用相当額の損害賠償の支払義務を負うものでないことは前記のとおりであるし、また、現行法のもとでは、控訴人は訴訟の相手方の負担した弁護士費用そのものの支払義務を負うものではないので、本件決議は、右に説示したところによれば、控訴人に対し、その意に反して一方的に義務なき負担を課し、あるいは、他の組合員に比して不公正な負担を課するものであり、無効というべきである

つまりは、管理規約に違約金としての弁護士費用等を請求することができる旨を規定していない限り、当然には請求できないということです。

多くの管理規約において、標準管理規約に倣い、弁護士費用を負担させる旨の規定が存在しますので、あまり問題になることはありませんが、念のため押さえておきましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。