おはようございます。
今日は、臨時総会の招集手続に重大な瑕疵があるとして決議不存在または決議無効の確認を求める訴えが却下された事案(東京地裁令和3年10月22日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、原告が、令和2年4月25日に開催された被告の臨時集会(総会)の招集手続には重大な違法ないし瑕疵があり、法律上不存在であると評価されるべきであり、また、本件総会でされた決算承認決議の対象である決算の内容が違法であり、承認決議自体が無効であると主張して、主位的には本件総会でされた全ての決議の不存在、予備的には上記決算承認決議の無効確認を求める事案である。
被告は、本件訴訟の提訴後、本件総会でされた決議の全てにつき、改めて臨時集会又は総会で決議を行ったから、本件訴訟には訴えの利益がなくなったとして訴えの却下を求めるほか、本件総会の決議について不存在及び無効と評価されるべき事由はないと主張して争っている。
【裁判所の判断】
訴え却下
【判例のポイント】
1 確認の訴えにおけるいわゆる確認の利益は、判決をもって法律関係の存否を確定することが、その法律関係に関する法律上の紛争を解決し、当事者の法律上の地位の不安、危険を除去するために必要かつ適切である場合に認められる。
このような法律関係の存否の確定は、上記目的のために最も直接的かつ効果的になされることを要し、通常は、紛争の直接の対象である現在の法律関係について個別にその確認を求めるのが適当であるとともに、それをもって足り、その前提となる法律関係、とくに過去の法律関係に遡ってその存否の確認を求めることは、その利益を欠くものと解される。
しかし、ある基本的な法律関係から生じた法律効果につき現在法律上の紛争が存在し、現在の権利または法律関係の個別的な確定が必ずしも紛争の抜本的解決をもたらさず、かえって、これらの権利または法律関係の基本となる法律関係を確定することが、紛争の直接かつ抜本的な解決のため最も適切かつ必要と認められる場合においては、上記の基本的な法律関係の存否の確認を求める訴えも、それが現在の法律関係であるか過去のそれであるかを問わず、確認の利益があるものと認めて、これを許容すべきものと解するのが相当である。(以上、最高裁昭和47年11月9日第一小法廷判決・民集26巻9号1513頁)。
2 本件第1号決議及び本件第3号決議については、その後に本件臨時総会第1号決議で同一内容の決議がされ、また、本件第5号決議、同第6号決議及び同第7号決議は、その後の39期総会第1号決議、同第4号決議及び同第12号決議においてこれを追認する決議が有効に成立している。そうすると、本件第1号決議、同第3号決議、同第5号決議、同第6号決議及び同第7号決議の不存在又は無効を確認することが、これに起因する法律上の紛争を解決し、当事者の法律上の地位の不安、危険を除去するために必要かつ適切とは認め難い。
よって、主位的請求のうち、本件第1号決議、同第3号決議、同第5号決議、同第6号決議及び同第7号決議の不存在を確認する訴え及び原告の予備的請求に係る訴えは、いずれも訴えの利益を欠くというべきである。
上記判例のポイント2のような事後的な事情がある場合には、確認の利益が失われますので訴えは却下されます。
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