名誉毀損21 虚偽内容の電子メール送信や文書配布により名誉や信用を毀損されたことを理由とする損害賠償請求が棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、虚偽内容の電子メール送信や文書配布により名誉や信用を毀損されたことを理由とする損害賠償請求が棄却された事案(東京地判令和3年11月19日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件本訴は、原告が、被告に対し、被告による虚偽内容の電子メール送信や文書配布により、名誉ないし信用を毀損されたなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。

本件反訴は、被告が、原告に対し、原告による虚偽内容の発言等及びメール送信により、名誉を毀損され、又は名誉感情を侵害されたなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。

なお、被告文書は以下のとおりである。

①被告は、令和元年10月3日、原告を含めた本件管理組合の理事会役員16名に対し、「X理事長は責任をA所長に転嫁しています。極めて卑劣な理事長です。私がB前理事長を突き飛ばしたとX理事長が断言した証拠も説明ないで無視しています。これでも当マンションの理事長と言えますか。」「理事会の会話録音を独断で文書化したり、エレベーター前の会話を独断で文書化したり、私が理事会に提出した要望書を理事会で審議しないで受理を拒絶しようとしたり、本件の通知書を独断で作成して通知する等、おおよそ理事長に相応しくない対応をしています。それでも皆さんはX理事長を擁護しますか。責任が重大になります。この独裁的な理事長を許さないでください。」と記載された電子メール(被告文書等1)を送信した。
②被告は、令和元年12月8日、原告を含む本件管理組合の理事会役員16名に対し、「組合員がいつでも閲覧できる議事録に虚偽の記載をしたことは名誉毀損の犯罪行為です。」「X理事長は区分所有法25条2項に規定している『管理者の職務に適しない理事長』です。」などと記載された文書(被告文書等2)を配布した。
③被告は、令和元年12月12日、原告を含む本件管理組合の理事会役員16名に対し、「X理事長は、不正が行われたことを全て葬ろうとしています。」などと記載された文書(被告文書等3)を配布した。
④被告は、令和元年12月30日、本件マンションの全戸に対し、「私個人を名指しでアンケートを取ったことは犯罪行為だと思います。」「今期(第13期)のX理事長と理事会の役員らも、不正の実態を承知しているにもかかわらず闇に葬ろうとしています。」「議事録に記載した説明は虚偽であることが分かりました」などと記載された文書(被告文書等4)を配布した。
⑤被告は、令和2年1月11日、本件マンションの全戸に対し、「X理事長は、私が投函した文書に反論する文書を配布しました。」と題する文書(被告文書等5)を配布した。

【裁判所の判断】

本訴・反訴ともに棄却

【判例のポイント】

1 被告文書等1の記載内容のうち、原告ないしその行為に関して記載された内容はいずれも抽象的なものであり、全体として原告の理事長としての行為ないし振る舞いについての被告の意見ないし論評を述べるものというべきである。
そして、被告文書等1には「極めて卑劣」など、原告に対する否定的な内容もみられるものの、被告の個人的な意見等を述べるものであることに照らせば、原告の社会的評価を低下させるとまでは認められない。
また、被告文書等1の内容及び表現振り等が意見ないし論評として著しく不適切とまではいえず、意見等の表明としての域を逸脱するとまではいえない

2 被告文書等2の記載内容のうち、「組合員がいつでも閲覧できる議事録に虚偽の記載をしたことは名誉毀損の犯罪行為です。」との記載は、「D巡査部長が本件の問題を認めなければ、議事録に掲載したことは虚偽記載になります。」との記載に続くものであり、これらを全体としてみれば、議事録の記載の真偽及びこれが真実でない場合に関する被告の意見ないし評価を述べたものというべきである。また、「X理事長は区分所有法25条2項に規定している『管理者の職務に適しない理事長』です。」などの記載についても、その内容に照らし、被告の意見ないし評価を述べたものというべきである。
そして、被告文書等2には、原告の理事長としての適性等に対する否定的な内容が含まれているが、被告の個人的な意見等を述べるものであることに照らせば、原告の社会的評価を低下させるとまでは認められない。
また、被告文書等2の内容及び表現振り等が意見ないし論評として著しく不適切とまではいえず,意見等の表明としての域を逸脱するとまではいえない

いずれも上記のとおり、意見ないし論評として著しく不適切とまではいえず、意見等の表明としての域を逸脱するとまではいえないという理由で名誉毀損には該当しないとされました。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。