おはようございます。
今日は、漏水事故における区分所有者と管理組合との過失割合(東京地判令和3年12月15日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、本件管理組合との間で火災保険を締結していた原告が、令和元年6月14日に本件マンションにおいて発生した漏水事故は、被告の過失によるものであり、原告はこの漏水事故について本件管理組合に保険金を支払ったことにより、本件管理組合が被告に対して有する不法行為に基づく損害賠償請求権を代位取得した旨主張し、被告に対し、損害賠償金74万8864円+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
被告は、原告に対し、59万7091円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 本件漏水事故の原因は、被告が本件洗濯機の給水ホースを水栓に接続する際に必要のない本件継ぎ手を取り付けた過失によるものであり、本件継ぎ手の使用の可否については、本件洗濯機の取扱説明書に記載されていたことなどからすれば、被告の過失の程度は大きい。
一方で、本件漏水事故が発生した際、本件管理組合から依頼を受けた業者により、本件居室内の水回りを中心に、実際に水を流すなどして点検が行われたが、本件洗濯機の水栓及びその接続状況等に関しては何ら点検がなされなかったこと、本件漏水事故の原因が不明であるのに、Bにおいて、被告に対し、本件洗濯機を含む水回りの使用を許容したこと、6月14日以降も本件駐車場の天井からの漏水を確認しながら、同月21日に再び本件居室内を調査するまで、本件駐車場の天井の漏水箇所をビニール等で養生する程度の対応にとどまり、原因究明のための調査や被告に水回りの使用を中止するよう求めるなど、漏水を止めるための積極的な措置をとらなかったことが認められ、これらについては、公平の観点から、本件管理組合側の過失として一定程度考慮すべきである。
そして、被告は6月14日以降も同月21日までの間に本件洗濯機を使用していたため、断続的に漏水が生じたものと認められ、その間に損害が拡大していった可能性も否定できないことも併せ考慮すれば、過失割合については、本件管理組合20%、被告80%と認めるのが相当である。
被告区分所有者の過失が大きいことはさておき、上記のような事情があるにもかかわらず管理組合の過失割合が20%にとどまっている点は、裁判所の過失割合に対する考え方の1つの表れのように思います。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。