名誉毀損19 原告らが怪文書投函事件の実行者である旨を指摘する行為は、原告らの社会的評価を低下させる行為といえるが、真実性・公共性・公益性が認められるため違法性が阻却されるとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、原告らが怪文書投函事件の実行者である旨を指摘する行為は、原告らの社会的評価を低下させる行為といえるが、真実性・公共性・公益性が認められるため違法性が阻却されるとされた事案(東京地判令和4年2月9日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンション管理組合の理事又は理事であった原告らが、理事である被告Y1、被告Y2及び被告Y3、本件マンションの管理会社の担当社員である被告Y5並びに本件マンションの区分所有者の妻である被告Y4に対し、被告Y1らが、本件マンション内で起きた怪文書投函事件の犯人が原告らであると印象付けるような発言をしたり、被告Y5がそのような記載のある文書を配布したりするなどして原告らの名誉を棄損したことや、被告Y4が本件マンションの規約に反する犬を飼育し、原告X1に恐怖感を与えたことなど、別紙2の番号欄1ないし11記載の各請求対象行為欄及び具体的内容欄記載の不法行為を行ったとして、損害の賠償+遅延損害金の支払及び名誉回復措置として本件マンションの全区分所有者に対する謝罪文の配布と主要な日刊新聞に対する別紙1記載の謝罪広告の掲載を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件怪文書の内容は、本件管理組合の理事の活動に対して、私物化であるとして強い口調で非難し、議案の否決を扇動するものであって、作成名義人は「aマンション正常化推進委員会」と記載されているものの、匿名の書面である。
このような内容の書面を、本来部外者が立ち入りできない場所に立ち入って投函する行為は、本件マンション内の平穏を乱す行為であって、本件マンションの住民の中には、投函者に対し非難の目を向ける者も相応にいるのではないかと考えられ、その意味で、原告らが怪文書投函事件の実行者である旨を指摘する行為は、原告らの社会的評価を低下させる行為であるといえる。

2 ・・・以上の認定によれば、被告Y1及び被告Y5において、怪文書投函事件の実行者が原告らである旨の理事会での発言や、これを理由の一つとする原告X2の理事の解任議案が記載された本件招集通知の発送、被告Y1による原告X2の解任決議案の上程、説明及び進行において原告らが怪文書投函事件の実行者である旨の説明は、いずれも真実であると認めることができる
そして、本件怪文書の投函行為が、前述のとおり、本件マンション内の平穏を乱す行為であることからすると、被告Y1及び被告Y5の行為は、いずれも公共の利害にかかわる事実の公表であって,もっぱら公益を目的とする行為であると認められる。

3 本件要望書の内容は、原告X2が不必要に威圧的な行為を行う者であるとの印象を与える者であることを示すものといえ、原告X2の社会的評価を低下させるものといえる。
一方、本件要望書中には、原告X1についての言及もあるものの、原告X1が被告Y4とその愛犬をジロジロと見ているといったことや、原告X1と原告X2が知り合いであることを示している程度であって、原告X1の社会的評価を低下させる記載であるということはできない。
そして、本件要望書は、原告X2が本件管理組合の理事であることから、本件管理組合の理事としてふさわしくないとの要望を伝える趣旨のものであって、本件マンションの居住者から、本件管理組合に対する要望行為として相当な行為であるというべきであって、これに伴い理事の社会的評価にかかわる事項が記載されることもやむを得ないものといえ、原告X2の受忍限度を超える表現であるということはできないから、違法性を有しないというべきである。

このような事案においては、まずは名誉毀損の要件事実をしっかり押さえておくことがとても重要です。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。