義務違反者に対する措置28 管理組合法人から民泊営業を妨害されたことを理由とする損害賠償請求が棄却された理由とは?(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合法人から民泊営業を妨害されたことを理由とする損害賠償請求が棄却された理由とは?(東京地判令和4年3月28日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は,原告らが、被告らから、①原告X1の営む本件マンションの一部である本件居室における住宅宿泊事業及び原告会社の営む住宅宿泊管理業を妨害されるとともに、②原告らの取引先及び本件居室の区分所有者に原告らを法令違反扱いかつ違法民泊運営者であるとする通知書を送付され、原告X1の名誉及び信用を毀損されたとして、不法行為に基づき、原告X1において損害賠償金219万3000円、原告会社において損害賠償金27万円の各支払を求めるとともに、営業権又は不法行為に基づき、被告による妨害行為の差止めを求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 原告X1は、本件届出をしているものの、本件居室において適法に住宅宿泊事業を実施することができないのであるから、被告が本件管理会社に対して、本件規約上、本件マンションにおいては住宅宿泊事業の実施が許容されていないという被告の見解を本件マンションの区分所有者らに説明するよう求めたことにより、本件管理会社が本件居室における原告X1の住宅宿泊事業の利用者に対する本件各業務の提供を拒否したからといって(さらに言えば、仮に、被告の指示により、本件居室における原告X1の住宅宿泊事業の利用者に対する本件各業務の提供を拒否したとしても)、原告らの営業権を侵害するものと認めることはできず、原告らに対する不法行為を構成するものと認めることもできない。

2 原告らは、被告が、本件各居室の区分所有者であるB及びシェア社に対して本件通知書を送付して、法の根拠なく原告らを法令違反扱いするとともに、違法民泊運営者呼ばわりし、原告X1の名誉及び信用を毀損した旨主張する。
しかし、原告らの主張によっても、本件通知書により、いかなる事実ないし意見論評が摘示されているというのか必ずしも明らかにされていないところ、本件通知書には、仮に原告会社が本件マンションの本件各居室において住宅宿泊事業を実施した場合、消防法上の適合通知書を取得していないことなどから違法民泊となる可能性がある旨記載されるにとどまり、原告X1を直接の対象としたものとはいえず、原告X1の名誉や信用に直接関わるものと認めることはできない。
この点を措くとしても、原告X1が消防法令適合通知書を取得しないまま本件マンションの本件各居室において住宅宿泊事業を実施することは消防法17条1項に違反するから、上記記載は真実である。
また、本件通知書の記載内容からすれば、被告は、原告会社が本件各居室において住宅宿泊事業を実施しようとしていることについて、本件各居室の区分所有者らに対し、注意を喚起する目的で、本件通知書を送付したものと認められるから、上記記載による事実の摘示は、公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図る目的で行われたものと認めることができる。
したがって、被告が本件各居室の区分所有者らに対して本件通知書を送付したことが、原告X1に対する不法行為を構成すると認めることはできず、原告らの上記主張は理由がない。

本件では、消防法により、スプリンクラー設備の設置が義務付けられているため、現状では新たに消防法令適合通知書が交付されることはないという事情がありました。

そのため、管理組合法人が民泊営業を禁止したとしても、営業権侵害とはならないと判断されました。

また、名誉毀損に関する判断(判例のポイント2)についても参考になりますのでしっかり押さえておきましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。