駐車場問題15 総会決議を経ずに駐車場に設置された防犯カメラの撤去が認められた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、総会決議を経ずに駐車場に設置された防犯カメラの撤去が認められた事案(東京地判平成28年12月13日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの区分所有者全員で組織される権利能力なき社団である原告が、区分所有者の一人である被告に対し、①本件駐車場の使用契約は終了した(主位的に管理規約及び駐車場使用細則違反による解除により、予備的に期間満了により、更に予備的に解約申入れにより)として、使用契約の終了に基づき、本件駐車場の明渡しを求め、また、②主位的に駐車場使用細則等に基づく原状回復請求として、予備的に区分所有法57条1項に基づく行為停止等請求として、防犯カメラ設備及び同防犯カメラの配線設備の撤去を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本件設備の設置は、本件駐車場等の共用部分である壁部分及び天井部分に、防犯カメラという他の区分所有者のプライバシーを侵害し得る装置を固定的に設置することであり、これは、有体物の設置という物理的な面でみても、防犯カメラという装置の機能的な面でみても、共用部分に対する「通常の用法」(管理規約13条)とはいえず、共用部分の変更又は管理というべきである。
そうすると、かかる行為は、「管理組合の業務に関する重要事項」に該当するので、総会決議が必要であると解される(管理規約48条16号、管理規約44条13号)。
このことは、「共用部分の変更」や「共用部分の管理に関する事項」は総会の決議で決する旨を定めた法(17条1項及び18条1項)の趣旨にも合致する。
これに対し、被告は、駐車場の運営、使用に関することであればあらゆる事項に総会決議が必要というのは不合理である旨主張するが、共用部分に対する通常の用法とは異なる用法について総会決議を求めても、「あらゆる事項」について総会決議を求めることにはならず、不合理とはいえない。
また、理事長や理事会の決議に一定の業務遂行権限があるとしても、それは、上記のような総会の決議事項について総会決議なしに遂行できることまでも意味するものではない。
なお、仮にC元理事長を含む理事がいずれも総会決議が必要とは認識していなかったとしても、かかることから被告に本件設備を設置、保持する権限が生じるわけではない

共用部分に防犯カメラを設置するは、共用部分の変更又は管理に該当するため、理事会ではなく総会決議が必要となります。

仮に理事のみなさんが総会決議が必要であると認識していなかったとしても、当然に防犯カメラの設置が許容されるものではないと判断されています。

実務上は基本的なことですので、手続きを間違えないように気を付けましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。