おはようございます。
今日は、区分所有者全員の承諾なく行われた書面決議が無効とされた事案(東京地判令和4年2月28日)を見てみましょう。
【事案の概要】
本件は、本件マンションの一部である本件居室の共有持分権者である原告が、本件マンションの管理組合である被告において令和3年5月28日にされた別紙「通常総会議案書」記載第1号ないし第8号の各議案を承認する旨の書面による各決議について、区分所有者全員の承諾がないのに書面による決議がされたものであり、区分所有法45条1項に違反するとして、その無効確認又は取消しを求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求認容
【判例のポイント】
1 被告は、令和3年5月頃、組合員である本件マンションの区分所有者に対し、前年と同様、通常総会の開催が非常に困難であるため今回は文書総会になる旨通知しており(この通知が区分所有者全員に到着したかどうかについては証拠上明らかでないが、この点を措くとしても)、被告は、本件マンションの区分所有者に対し、書面による決議を実施することについての承諾を求めたのではなく、すでに決定されたこととして、書面による決議を実施することを通知したものということができる。
また、議決権行使書を提出したのは本件マンションの区分所有者37名中32名にすぎず、書面による決議の実施につき事後的に区分所有者全員の承諾が得られたということもできない。
これは、被告において、令和2年も書面による決議が実施され、それから令和3年5月まで、区分所有者から同決議に異議が出されたことがうかがわれないことを考慮しても同様である。
そうすると、令和3年の通常総会を開催せずに書面による決議を実施することについて、少なくとも区分所有者全員の承諾があるということはできず、本件各決議には、書面による決議の実施につき区分所有者全員の承諾があることが必要であるのに、その承諾がないまま行われたという手続的瑕疵がある。
2 本件各決議に係る上記瑕疵は、区分所有法45条1項に違反するものであり、同条項の趣旨に鑑みれば、区分所有者の討議の機会を奪うという重大なものである。
本件マンションの区分所有者37名中32名から議決権行使書が提出されているが、これは、被告が同区分所有者に対して書面による決議の実施につき承諾を求めることなく、すでに決まったこととして、書面による決議を実施する旨通知した後に送付した議決権行使書に、区分所有者が記入して返送したものであるから、これをもって、上記瑕疵が治癒されたり軽微なものとなったりするということはできない。
したがって、本件各決議に係る上記瑕疵は無効事由に当たるというべきである。
区分所有法45条1項の内容は以下のとおりです。
「この法律又は規約により集会において決議をすべき場合において、区分所有者全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。ただし、電磁的方法による決議に係る区分所有者の承諾については、法務省令で定めるところによらなければならない。」
実務的に極めて基本的かつ重要な内容ですので、しっかりと押さえておきましょう。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。