義務違反者に対する措置9 共同利益背反行為を行っていた区分所有者が死亡し、競売による買受人に対する行為差止め請求が認められなかった事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、共同利益背反行為を行っていた区分所有者が死亡し、競売による買受人に対する行為差止め請求が認められなかった事案(東京地判平成24年2月29日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、共同利益背反行為を行っていた区分所有者が死亡し、競売による買受人に対する行為差止め請求(構築物の撤去等の請求)の可否が争点となった事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 原告が主張する請求原因は、本件建物の区分所有者である亡Cが改造工事を行ったことが法6条1項の共同の利益に反する行為に該当し、同人が法57条1項に基づきその行為の結果を除去すべき義務を負い、被告が本件建物の区分所有権を承継取得したことにより同義務を承継する、又は、被告が上記改造工事の行われた本件建物を所有することが法6条1項の共同の利益に反する行為に該当し、被告が法57条1項に基づきその行為の結果を除去すべき義務を負うというものである。

2 しかし、このうち前者については、以下に述べるとおり理由がない。すなわち、法6条1項は、区分所有権に内在する制約として共同の利益に反する行為をしてはならない義務を伴わせるものであり、法57条1項は、特定の区分所有者が法6条1項の共同の利益に反する行為をし、又はその行為をするおそれがあるという現在の状態を理由として、他の区分所有者の全員又は管理組合法人が同行為の停止等を請求する特別の団体的権利を有することを認めるものであるから、同請求権に対応する当該区分所有者の義務は、所定の要件を満たす現在(口頭弁論終結時)の区分所有者であることに基づくものであって、区分所有権の移転に伴って承継されることはないというべきである。

3 後者についても、実質的には本件建物をかつて所有していた亡Cの行為を問題とするものであって、現所有者である被告の行為を独自に問題とするものではない上、証拠上、本件建物の増改築部分の存在が本件マンションの基本構造を弱めている事実や他の区分所有者による共用部分の使用を妨げている事実は、認めるに足りないから、被告が上記増改築部分を含む本件建物を所有することが法6条1項の共同の利益に反する行為に該当するとは認められず、原告の主張は理由がない。

59条競売に関する最高裁判決と同様の判断ですね。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。