おはようございます。
今日は、監事が作成・配布した臨時総会招集通知による理事長である原告に対する名誉毀損が否定された事案(東京地判令和3年12月9日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、マンションの区分所有者から構成される管理組合の区分所有者である法人の代表者である原告が、同じく上記マンションの区分所有者であり、上記管理組合の監事として臨時総会を招集した被告に対し、被告が作成し、区分所有者らに配布した招集通知により原告の名誉が毀損され、これにより精神的苦痛を被ったなどと主張して、不法行為に基づき、慰謝料等として160万円の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 本件開催通知における本件各摘示は、第39期総会において検討課題とされたAの未納管理費等の問題等に関するものであって、本件管理組合の業務の執行及び財産の状況に関する情報の提供に係るものであるから、被告の監事としての地位の有無にかかわらず、本件マンションの区分所有者全体の利害に関する事実であって、その目的が専ら公益を図ることになることが認められる。
2 その上で、本件各摘示に係る事実が真実であるか、又は被告において当該事実を真実と信ずることについて相当の理由があるか否かを検討するに、次の各事情を指摘することができる。
・・・そうすると、遅くとも令和元年7月の第39期総会までには本件相殺処理がされ、Aの未納管理費等がおおむね消滅し、又は本件各通知に記載されているような100万円を超える高額の残債務が残っていたものとはおよそ認め難く、結局のところ、原告が本件相殺処理の事実を踏まえることなく、あるいはこれらの処理を適切に会計帳簿等に記載することなく本件各通知を発するなどしたという、本件管理組合を代表して業務を統括し、誠実義務を負うべき理事長としての会計処理等には問題があったものと認められる。
以上によれば、本件各摘示に係る事実の重要な部分については真実であるか、被告が入手し得た本件管理組合の会計資料の内容等及びその分析経過等に照らして、少なくとも被告においてこれを真実と信ずるにつき相当な理由があったものと認めるのが相当である。
管理組合運営において、特に全区分所有者に対する通知による特定の区分所有者の名誉毀損が問題とされることが少なくありません。
名誉毀損の要件や違法性阻却事由をしっかりと押さえておきましょう。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。